集団感染の長崎停泊クルーズ船 「交代の乗下船は必要」日本支社幹部が経緯説明

ベランダに出るクルーズ船コスタ・アトランチカの乗組員=23日午後1時46分、長崎市香焼町の三菱重工業長崎造船所香焼工場

 三菱重工業長崎造船所香焼工場停泊中に新型コロナウイルスの船内集団感染を起こしたクルーズ船コスタ・アトランチカを運行するコスタクルーズ(イタリア)の日本支社幹部は23日、長崎新聞の電話取材に応じ、船内の状況や運用、これまでの経緯を説明した。

 アトランチカは2000年建造。最大で乗客2680人を収容し、乗組員897人で運航する。客室数は1057。主に上海など中国4都市を発着点にアジアを巡っていた。現在は乗組員数を623人に絞っているが、職種はフロントや調理、給仕、荷役、エンターテイナーなど多様。国籍もフィリピンなど30カ国以上に及ぶ。船長や船医はイタリア人が担っている。
 乗組員の多くは船底に居住しているが、感染拡大防止のため客室に移った。1人1室、そのほとんどがバルコニー付き。このうち感染者はウイルスが外部に漏れない「陰圧」管理されたエリアに隔離した。1人が重症で病院に搬送されたほかは軽症だが、日本支社は人数を把握できていない。多くの情報は、船を運用する中国オフィスに照会している。
 乗組員はパスポートとIDカードを所持。コスタ社は乗下船時に必ずIDを提示させ管理している。「日本も感染リスクがある」として、外出は通院や仕入れなど必要最小限にするよう求めている。県が3月13日に乗下船の自粛を要請したが、個々の乗組員で勤務契約期間が異なり、交代に伴う乗下船と出入国は常に必要という。
 三菱重工はコスタ社から「3月14日以降の乗下船はない」と回答を得たと説明している。これについて幹部は「発表前の英語と日本語のコミュニケーションにずれがあったのかもしれない」と推測した。
 香焼工場には同社所有のコスタ・セレーナ(乗組員669人)とコスタ・ネオロマンチカ(同393人)もとどまる。3隻とも4月末まで係留する契約だが、延長するかは三菱重工との協議になる。乗組員を帰国させる場合、入国審査も必要となるため国と調整中。幹部は「巨大な船を動かすには人、物、資金、時間を要する。何より乗組員の安全確保が最優先課題」と強調した。
 その上で「船を受け入れていただいた三菱や県、市に感謝している。情報は判明次第開示していきたい」と述べた。


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