地域づくりへ学生店長奮闘 大学休学し店頭に

「でんぱを地域の憩いの場にしたい」と意気込んでいる森さん=長崎市

 長崎市住吉町の商店街に今月、空き店舗を活用した情報発信拠点「住吉まちづくり実行委員会直営店でんぱ」がオープンした。学生店長として奮闘しているのは長崎大教育学部の森勇吉さん(21)。今春、大学を1年間休学し、「スタートラインに立てた。地域の声を聞き、地道に取り組んでいきたい」と意気込む。小さな店舗には、将来、地域づくりに携わる仕事に就くのが夢という森さんの熱い思いが詰まっている。

 今月中旬の午後。ふらりと「でんぱ」に立ち寄った高齢女性が森さんに近づいてきた。近くにいた人たちも交えて会話が弾む。森さんが理想とする「でんぱ」の姿ができつつある。
 空き店舗だった場所を、まちの情報発信拠点や地域の人の憩いの場に変え、再スタートした「でんぱ」。日替わりで地元の店の物販ブースを出し、店頭には森さんが商店街を回って集める各店のお得情報を掲示している。「でんぱ」には、ここから情報や人々の交流が広がっていってほしいとの思いから、「伝播」「電波」の意味を込めた。
 大学を休学して地域づくりに携わる-。決断の背景にあるのは、育った地域環境への感謝と恩返しだ。
 市内の本原地区育ち。幼少期からずっと、道で会えば近所の人たちが話し掛けてくれる距離感が居心地よかった。地域に守られているという安心感もあった。「心地いいと思える地域を増やしたい」。地域づくりへの関心が高まり、次第に将来ライフワークにしたいとの気持ちが膨らんだ。力を試してみたいと休学を決意。住吉の商店街でまちづくりに携わっている峯幸里さん(48)と出会ったことがきっかけで、「でんぱ」を立ち上げた。
 地域づくりで心掛けていることがある。地域の人たちが感じている住みやすさを守ることだ。「地域の“色”を崩すと住みにくく感じる人がきっといる」。新しさや斬新さばかりを追い求めない。朝夕の2回、各店を回って会話し、地域の人が何を求め、何に困っているのか自分の耳で聞くようにしている。
 店の運営費は、物販の委託料や自治会からの援助で賄っている。学生店長として店頭に立ち、半月。いろいろなアイデアが頭にある。子連れで買い物する人の多さを実感すれば、買い物中に子どもを預かり宿題を見るサービスができないかと検討する。新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいていると聞けば、商店街の商品をインターネットで販売できないかと考えを巡らせる。全ては地域を盛り上げるため。「でんぱを中心に活性化していきたい。用事がなくても、地域の人がでんぱに足を運ぶような憩いの場にしたい」。学生店長の挑戦は始まったばかりだ。

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