与えられた使命を達成するためのクルマ、便利な機能は最小限に
歴代ジムニーすべての世代に求められてきた性能は、通常の乗用車では到底走行することが困難な悪路でも走れること。つまり「軽自動車なのに荷物がたくさん積めて車内は広々♪」「安全で乗り心地が良く快適!」といった、近年の軽自動車全般に見られる特徴は、ジムニーにとって二の次三の次なのです(現行型JB64が快適で安全なことは置いておきましょう!)。
JA11型ジムニーの操作系はいたってシンプルで、アイドリングストップも自動ブレーキもありません。もっと言えば、パワーウインドウやオートロック、ABSもありません。
なぜなら、ジムニーに与えられた最大の使命は、どんなに山奥にいても、ドライバーを帰還させることだからです。
JA11が完成形の理由は?
筆者が所有するJA11型は、ビックマイナーチェンジのJA12やJA22を含めると、生産期間は17年とかなり長いあいだ基本設計を変えることなく販売されていたモデル。
さらに、次に発売されたJB23型に至っては約20年ものあいだフルモデルチェンジされることはありませんでした。
法改正がなかったら、ずっとJA11のままだったかも!?
期間で言えばJB23の方が長いわけですが、なぜJA11型が完成形と言えるのか。それはJB23にフルモデルチェンジした理由が、軽自動車の規格が改正され大型化されたから。そして、現行型のJB64の登場も、法律上、横滑り防止装置の装着が義務付けられたからです。
つまり、JA11以降のフルモデルチェンジは、すべて法改正に対応するために行われたと言っても過言ではありません。もちろん、時代のニーズに合わせることも必要ですが、大幅な法改正や規格の改正がなければ、フルモデルチェンジする必要がなかったとも言えます。
一部のジムニー好きやスズキ関係者の中には、「法改正がなければ今でもJA11は十分新車として売れる!」と口にする人がいるほどです。
自分で操作するからこそ得られる安心感
しつこいようですが、大事なことなので繰り返し言います。ジムニーに求められる最大の性能は、高い走破性です。(笑)
後に販売されたJB23は機械式のレバーではなく、車内で電気スイッチで2WDと4WDの切り替えができ、現行型のJB64は機械式のレバー操作に戻ったものの、車外に出る必要はありません。
一方、JA11に搭載されるトランスファー(動力を前後それぞれに分配する装置)は機械式。切り替え方法は、停止状態でシフトレバーの隣にあるセレクトレバーを「ガチャン」と操作します。ところが2WDから4WDへの切り替えは、それだけで完了していません。車外に出て、フロントホイールにある「フリーホイールハブ」の切り替えダイヤルを左右とも回す必要があるのです。
JA11は、わざわざ面倒くさい操作を必要とするのと引き換えに、走破性を大幅に向上させる4WDに関わるトランスファーとフロントホイールハブを、ドライバー自らが人力で操作します。その人力操作こそ、遭難せずに帰れる安心感に直結する行為なのです。
現代のクルマでは味わえない「自分で操っているという楽しさ」
誤解の無いように言っておきますが、JB23やJB64もジムニーらしい高い走破性を備え、どこへでも走っていける楽しさも持っています。ですが、JA11型(JA22型含む)が大きく違うのは、運転する楽しさです。
ここまでお話ししたように、ハイテク化されていくJB23以降に比べ、圧倒的に電子デバイスが少なく、走行に関わるほとんどの操作がドライバーの手足に託されています。
いかにも自分でクルマを操っているという感覚、例えるなら初めて遊園地のゴーカートに乗った感覚。その感覚は、電子デバイスで補完された現代のクルマでは味わえない感覚なのです。
ジムニーに与えられた使命と楽しさを味わうならJA11がベスト
正直に言えば、自分がJA11型のオーナーであるため、やや贔屓目になっていることは否定しません(笑)
JAB23や最新型のJB64は、ジムニーらしさに加えて快適性も大幅に向上し、実際に乗るととても良いクルマです。四角くレトロなスタイリングを求めるだけなら、間違いなく最新型のJB64がオススメ。また、購入費用を抑えてジムニーに乗りたいという方はJB23も良いでしょう。
ですが、シンプルにクルマを知り、楽しむという点で言えば、JA11型ジムニーは完成形と言っても良いのではないでしょうか。
JA11カタログデータ 出典 JIMNY HISTORY:https://www.suzuki.co.jp/car/jimny/special/history/ja11.html
[筆者:増田 真吾]
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