ヤクルトは青木、山田哲の1、2番を推す セイバー指標から12球団の打順を考察

ヤクルトの青木宣親(左)と山田哲人【写真:荒川祐史】

球界最高の打者の1人である山田哲人は2番に相応しい存在

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕が延期となっている日本のプロ野球。交流戦は中止が決まり、当初は143試合だった試合数も最大で125試合に減少することが決まった。最短でも6月にズレ込むことになったことでプロ野球ファンにとってはもどかしい時間が続くことになる。

ファンが開幕を迎えるにあたって、やはり楽しみの1つになるのは、贔屓のチームが一体どんな打線になるか、ということ。今でも日本のプロ野球ではやはり3番から5番までのクリーンアップが重視される。だが、MLBでは“最強の打者”は2番に入るのがトレンドだ。これはMLBで広く浸透しているセイバーメトリクスの影響が大きい。

セイバーメトリクスではどれだけ多くの得点を奪うかを考える。より多く得点を取るためには、より多くの出塁が必要だ。打順は1つ繰り下がるごとに年間15打席ほど減少し、1番と4番では年間で45打席、1番と9番では120打席もの差が出る。そのため、1番や2番により良い打者を置くほうが結果的にシーズンを通じて得点の機会を増やすことに繋がるとされている。

1番は走者がいない状況で打席に立つことが多いことから、MLBでは、より多くの得点創出のチャンスになる2番に最強の打者を置く。1番、2番、4番が最重要視され、続いて3番と5番が重視される。これまで2番にはバントなどの“繋ぎ”が求められてきたが、セイバーメトリクスの分析では、バントは得点期待値を下げるとして基本的には戦術として推奨されていない。

では、この視点から12球団を見ると、一体どんな打線になるのか。第4回はセ・リーグのヤクルトを見ていく。

なお、今回は怪我人等は考慮せずにベストメンバーでの打線を探る。セイバーメトリクスで打者を評価する指標のOPS(出塁率+長打率)を中心に打線を考察した。なお、セイバーメトリクスでの指標は絶対の要素ではなく、これが“正解”と言いたいわけではない。この点を理解していただき、あくまでも1つの参考として、ファンの方々が様々な意見を言い合って楽しんでくれる材料になれば幸いだ。

山田哲人に次ぐOPSを残すのがベテランの青木宣親

ヤクルトにおける“最強の打者”といえば、もちろん山田哲人である。プロ野球史上唯一、3度のトリプルスリーを達成した打ってよし、走ってよしの強打者である。出塁率は4割を超え、OPSもチームトップの.961をマークしている。2番ないし最も多く打席の回る1番に置くべき選手となる。

バレンティンがソフトバンクに移籍したことで、山田哲に次ぐ打者となるのはベテランの青木宣親だ。昨季は打率.297だったが、出塁率は.385をマーク。OPSは.826を残している。そして山田哲、青木に次ぐのが若き主砲の村上宗隆。OPSは.814を記録し、昨季の経験を生かす今季は更なる向上も期待できる。山田哲、青木、村上で1、2、4番を固めるのが理想ではないか。

この3人に続く打撃指標を残すのが、意外にも、捕手の中村悠平だ。後ろを投手が打つことが多かったのもあるだろうが、打率.269に対して出塁率は村上、バレンティンを上回る.373と高い。OPSも.757と山田哲、青木、村上に次いでいる。打撃指標上で言えば、ヤクルト打線の中で中核を打ってもいい。

そしてもう1人がベテランの雄平。昨季のOPSは.723だったが、2018年には.805を残している。チームの中で出塁率、長打率ともに上位に位置している。山田哲、青木、村上を中心に、中村と雄平の2人が脇を固めてみるのはどうだろうか。

ヤクルトの今季のオーダーで言えば、未知数なのが塩見泰隆と新助っ人のエスコバーの存在。塩見はオープン戦好調でOPS.992を残した。さすがにこの成績通りとはいかないだろうが、活躍次第では中軸を打たせられる。エスコバーはメジャー時代もOPSは.600前後。日本に来てどうなるかはまだ分からないが、指標から見ると下位に置くことになる。

今季のヤクルトはオープン戦から2番・山田哲をテストしており、これはセイバーメトリクスから見ても理に叶ったものになる。予想オーダーも決して悪い並びではないが、山田の前を打つ1番には、より出塁率に優れた青木を置きたい。この並び、果たしてファンの皆さんはどう見るだろうか。(Full-Count編集部)

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