民間が同性カップル証明を発行、企業が利用へ みずほFGなど約20社、福利厚生で

「東京レインボープライド2019」でプラカードを掲げる参加者

 多様な家族形態が認められる社会の実現を目指して設立された一般社団法人「Famiee(ファミー)」が、7月から同性カップル向けの「パートナーシップ証明」発行を始める。同様の証明は一部の地方自治体で既に発行されているが、居住自治体に関係なく、同性カップルが第三者から「家族」の認定を得られることになる。自治体による証明と同様、法的効力はないものの、すでにみずほフィナンシャルグループ(FG)など大手を含む20社近くの企業が、社内の福利厚生での利用を表明している。内山幸樹代表理事は「同性カップルが居住自治体に関係なく、より多くの場面で、家族として当たり前に認められるよう、民間で変えられるところから変えていきたい」とし、他の企業にも受け入れを呼び掛けている。(共同通信=角南知子)

 ▽居住地自治体に関係なく適用

 地方自治体が同性カップルを法的な結婚に相当する関係と認めるパートナーシップ証明は、当事者団体による4月1日時点の集計で全国47自治体が発行している。カバーする人口は国内全体の約4分の1だ。最近では、公営住宅への入居といった行政サービスだけでなく、民間企業の福利厚生などで証明書類として使われるケースも増えている。しかし、発行対象は各自治体の居住者に限られ、転居すれば無効。発行基準や効力も自治体によってまちまちで、発行自治体によって制度の適用が左右されることもあるという。

 ファミーのアドバイザーも務めるゲイの当事者で外資系金融機関勤務の柳沢正和さん(42)は「同性カップルへの理解を後押しする上で、自治体が証明を発行する意義は大きいが、民間企業が利用する際には自治体による仕様の違いが課題になる」と指摘。企業での利用を前提に、居住地に関係なく適用されるファミーのプロジェクトに期待を寄せる。

 みずほFGは2016年から従業員の結婚祝い金や介護休業などで同性パートナーを配偶者と同等に扱っており、対象者が自治体の証明を持っている場合はその提出を求めてきた。7月からは、ファミーの証明も利用する方針で、担当者は「自治体の証明がない場合は住民票の提出で代用してきたが、住所が同じだけでは十分な証明にはならない。より確かな担保となるファミーの証明を、多様な人材が働きやすい環境整備につなげたい」と話している。

 ▽申請、発行はオンライン

パートナー証明のサンプル

 ファミーのパートナー証明は、スマートフォンの専用アプリから申請を受け付け、認定や発行もオンラインで行う計画だ。データは、改ざん不可能なデジタル技術「ブロックチェーン」と高度な暗号化技術を組み合わせ、個人情報保護を可能にした「オンライン台帳」に記録。本人確認はオンラインでの銀行口座開設の仕組みと同様にする。証明は2~3日で発行され、受領した民間企業などがオンラインでデータを照会することも可能だ。 自治体での証明申請は、役所に2人そろって出向く必要があり、小さなコミュニティーでは関係性がオープンになることを恐れて取得をためらう当事者も多い。柳沢さんは「オンラインで申請できるファミーなら利用しやすくなる」と指摘する。

 ▽受け入れ拡大に期待

 同性パートナーの存在を公表している女子サッカーの下山田志帆選手(26)も、ファミーのプロジェクトに期待を寄せる一人だ。現在居住する自治体も同性パートナーシップ証明を発行しているが、これまで、取得は考えたことがないという。「サッカー選手として所属するチームが変われば転居することになり、現住所がある自治体が認めたというだけでは、選択肢にならない」と話す。日常生活では、同性カップルであることを理由に賃貸住宅への入居を断られるなど、家族と認められないことによる不利益を感じる場面は多い。「例えばパートナーが入院した際、家族としての面会ができないなど、将来への不安はつきない。今後、パートナーシップ証明が広く認知され、受け入れる事業者が増えることを願っている」と話している。

© 一般社団法人共同通信社