IDC、世界のIT支出は減少に向かうがITベンダーの商機も一部にあると予測

IDC Japan株式会社は、世界のIT支出に関する指標に基づく見通しを発表した。IT支出に関する指標であるIDC COVID-19 Tech Indexは、2020年の全体的なテクノロジー支出が減少へ向かうとの最新予測を裏付けている。ただし、企業がCOVID-19危機への対応策の一環として、短期の投資を増やす可能性についても指摘している。世界規模の調査に参加した企業回答者は、PC、モバイルデバイス、サーバー/ストレージインフラ、ITサービスなど従来型テクノロジーへの投資が削減されるだろうとの見通しを示した。ただし、クラウドならびにAI、IoTなどの新しいテクノロジーへの投資が継続される可能性については、より楽観的な予測を示している。米国IDC Customer Insights & Analysisグループ バイスプレジデントのステファン・ミントン氏は「個々の事例では、企業が社員の在宅勤務を支援するためラップトップなどのテクノロジー支出を増やしているケースもあります。しかし調査結果を全体として見ると、多くの企業が緊急時対応策に立ち帰って設備投資を減らすにつれ、そうした製品への支出総額は減少していくだろうとのIDCの見解が裏付けられる形になっています」と述べている。また「クラウドは根強い支持を得ているようです。短期的にコスト削減に努めている企業が多い中で、引き続きクラウドへの支出を増やしている企業もあります」と述べた。

COVID-19 Tech Indexは、今後IT支出額がどのように変化するかについて、1000を基準とする方向指標によって展望を示し、1000より大きいスコアはIT支出の増加が見込まれることを表し、1000より小さいスコアは減少を表す。この指標は、企業ITバイヤーを対象とする世界調査に加え、各種の市場指標を考慮したデータに基づいて2週間ごとに更新される。さらに、医学的な感染率、社会的隔離の状況、そして政府の景気刺激策の影響に関係する国別の情報を用いて2~3か月先を見据えた調整が加えられている。3月最終週に行われた最新の調査によると、ヨーロッパおよびアジア太平洋地域ではIT支出が減少するとの予測が示されたが、米国の調査回答者が示した強気な予測によって相殺され、バイヤーの意向は全体としてほぼ変わらずという結果となった。ミントン氏は「COVID-19の影響がすべての企業ITバイヤーにはっきりと見えてくるまで、ある程度の時間差があるでしょう」と述べている。続けて「一部の米国企業は、3月最終週の時点でもまだ、全体的な予算が増加する見通しを示していました。しかし、そうした予測は数週間以内に下降する公算が強い。全体的なIT支出について最も悲観的だったのは、ヨーロッパの企業です」と述べた。市場指標は、バイヤーの意向よりさらにネガティブだ。雇用およびその他のファクターについて発表済みの限られたデータでも、2020年の残りの期間に対するエコノミスト予測は、大幅に下方修正されている。不確実性の度合いは依然として高いが、これらの指標も今後数週間で下降する傾向にあるとみられる。今年後半、どのようなペースで景気が回復するかは依然として大きな疑問である。

© 株式会社アールジーン