「誰かのおかげで自分がいる」 野球名門校吹奏楽部の“テレワーク演奏”が示した指針

千葉・船橋市立船橋高校の吹奏楽部【写真提供:市立船橋高校吹奏楽部】

市船吹奏楽部顧問の高橋健一先生が語る生徒たちへの思い

千葉・船橋市立船橋高校の吹奏楽部がSNSに載せた“テレワーク応援”動画が話題になっている。野球応援などに使用する曲を3年生全員が自宅で収録し、動画を一緒に流すことで演奏する動画を製作した。その完成度が見事の一言。離れていてもひとつになれることを証明した。教育現場にも葛藤が多い中、顧問の高橋健一先生は「誰かのおかげで自分がいる」ことを学ぶ場所と部活動の意義を再認識した。

もともとは新日本フィルハーモニー交響楽団の皆さんが、3月中旬にこのような演奏の方法を採っていて、自分たちにもできるのかなと思っていました。12個ある各パートリーダーがやり方を決めて、それをラインで送って、テンポを取って……。各自が動画を撮影し、(学校でYouTubeチャンネルを制作しているトロンボーンのパートリーダーの)北奥(優羽)さんが編集しました。生徒からは「うまくいきません」と言われたこともありました。でも「絶対にできる!」と自信を持たせました。

学校は3月2日から休校。部活もできません。その中でできることがあるはず、自宅にいながらできることをしっかりやってあげたいなという思いが常にありました。この高校生という大事な時間、みんなと一緒にできるこの大切な機会を奪ってはいけない。休校の次の日から、朝9時にテレビ電話でパートごとに1時間のミーティングを設けています。今日一日をどう過ごすのかを部員同士で話し合い、みんなで発声や練習をし、部活動を続けてきました。2,3年生で全部員は101人。4月に入学式だけあったのですが、そこで入部希望者は45人いました。新入生については部員が顔も知らないので、在校生が自己紹介を撮って送ってあげたりしています。

「12月に行う3年生が卒業となる定期演奏会は絶対にやりたい」

24時間、すべてが自分の時間になります。さぼることもできます。でも、逆に考えれば自分を律するためのチャンス。生徒の中には山奥で発声したり、田んぼの真ん中で練習している人もいる。自分をコントロールできるようになる良い機会とも思っています。

命を守ることが一番。でも子供の教育、学生生活については考えていかないといきません。高校野球ができない。部活ができない。これは大きな問題です。授業や学びは個人でもできます。でも、学校に通う、部活をするということは人間形成を学んでいる部分もあります。チームでいれば、失敗をすると誰かに迷惑をかけてしまう、誰かのおかげで自分がいる――。そういうことを学ぶ場所だとも私たちは考えています。

生徒たちから「このまま、僕たちは卒業してしまうんですか?」という悩みがたくさんきました。でも私は「あきらめない。何かしらを考える」そう伝えています。高校生という大切な時間、機会を守っていきたい。第1弾がSNSやYouTubeで発信でき、生徒たちも感じたことがあるはず。なので、第2弾も製作しました。。今後、どのような情勢になるかはわかりませんが、12月に行う3年生が卒業となる定期演奏会は絶対にやりたい――。やれると信じて、これからも頑張っていきます。(小倉星羅 / Seira Ogura)

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