新型コロナウイルスで大打撃!影響はパイロットにも
新型コロナウイルス関連の報道が連日続いていますね。
医療従事者や保育士、宅配スタッフなど感染リスクが高い中で業務を遂行されている方々のニュースがたくさん取り上げられていますが、CAやパイロットも公共交通機関の担い手として、まさに前線で働く仕事といえます。
航空業界もまた、新型コロナウイルスの影響を多大に受けている業種の一つです。
日系の航空会社ではまだ実施されていませんが、イギリスのブリティシュエアウェイズでは4,500名のパイロットが3ヶ月にわたり2週間の無給休暇を分散して取得させられていて、併せて4月と5月の給料を半減する方針です。
財政面で安定を誇っていたIAGグループ(インターナショナル・エアラインズ・グループ)でもこのような状況となっていることから、新型コロナウイルスの影響力の大きさを思い知らされます。
そんな不安定な状況でも日々フライトに臨まねばならない、現役パイロットを取り巻く環境の変化や本音、そして厳しい状況に負けじと取り組む航空業界全体の前向きな姿勢をご紹介します!
募る感染への不安。会社としてもパイロット個人でも万全の対策を
航空会社はリモートワークしづらい業種の1つ。
航空機を運航する以上、CAやパイロットのほか貨物や燃料の積み込み、地上係員など現場で作業が必要な職種がたくさんあるからです。
パイロットも、整備士や運航管理者などと対面でやり取りする必要があり、さらにコックピットという密室かつ近距離での業務をしなければならず、パイロットたちは皆感染への不安を口々に言い合っているそうです。
そんな不安を少しでも解消すべく、会社としてもパイロット各自でも感染症への対策を講じており、さらにフライト中やフライト後の意識や行動にも、大きな変化があったそうです。
例えば、フライト前にはアルコールをチェックする機器に息を吹きかけて、呼気チェックをするのですが、これまでのように共用品を使いまわしせずに、個人への貸与品を各自使用することで感染リスクを低減しています。
会社からは社員にマスクが支給され、フライト前のブリーフィングというミーティング中から、CAとパイロット全員必ずマスクを着用。フライト中はATC(交通航空管制塔)との安全上のやり取りがあり、声が届きにくくなるのでマスクは着用しづらいようですが、着陸後コックピットドアが開いた瞬間に皆マスクをするようになったそうです。
空港内の移動中やタクシーの中でもマスクの着用を徹底しています。
また、コックピット内で人の触れるところは除菌シートなどで拭いてから使用。
手指消毒用のアルコールは非接触式に切り替わり、感染リスクを減らすよう徹底されています。
フライト後はクルーで食事する機会が多かったのですが、現在は自粛され全くなったとのことでした。
さらに、フライト外でパイロットミーティングや自主的な勉強会があるのですが、大人数が集まるためすべて中止になりました。
これらは全体としての取り組みの一部ですが、各パイロットが私生活での健康管理を含めた万全の感染症対策を行っています。
減便に次ぐ減便で雇用面の心配も
感染リスクへの不安とともに、パイロットたちが懸念しているのは雇用や給与面での影響です。
外出自粛や渡航制限によって減便・運休が相次いでいているため、フライトタイムは大幅に減少。現役パイロットである筆者の夫も緊急事態宣言後、月末までアサインされていた便のほとんどが減便となり、2週間以上自宅スタンバイを余儀なくされました。
さらに減便したことで、フライトパターンの大幅な変更や見直しが必要となり、所属基地空港に帰るために地上交通機関を使わなければならないことも増えました。
さらに情勢によっては今後さらなる減便もあるのでは、という不安や冒頭述べたブリティッシュエアウェイズのように、減便に伴う給与の支払いや雇用面への影響を懸念する声も現場には溢れています。
実際、海外に居住している外国人パイロットの中には、日本への渡航が許されず本国で足止めされている人がいるそうで、こういった外国人パイロットの今後の雇用について見直しの動きが出てきているのです。
次のページ:いまできることをやろう!航空業界全体の前向きな取り組みをご紹介!
不安の中でも前向きな姿勢を忘れないCA・パイロット達!航空会社の取り組みとは
感染リスクへの不安や経済的影響への懸念を持ちながらも、航空会社やCA、パイロットはいまできることをやろうと前向きに取り組んでいます。
その一部をご紹介します。
まずは、社内の新型コロナウイルス対策プロジェクトの発足です。
情勢の変化などで急な減便の追加や対応の変更などが相次いでおり、各地にフライトするCAやパイロットにはタイムリーな情報伝達が難しいことがあります。そのため、社内のイントラを使い、対策プロジェクトチームからタイムリーな情報共有を可能にしています。
これにより、会社として必要な情報を集約して社員へ正確に発信することができ、デマや不正確な情報で現場が混乱したりむやみに不安に陥ったするのを防いで、現場の一体感を高める効果を実感しているそうです。
また、パイロットは航空機に搭載する燃料の削減や最適化に積極的に取り組んでいます。
航空機の燃料費はとても高額で、燃油価格が1円アップするだけで会社の業績を大きく左右するといわれるほどです。減便により、現在の会社の経営状況が非常に厳しいことをふまえ、このようなコスト削減に貢献しているのです。
さらに、コストカット案としてパイロットとCA発案で実施され始めたものもあります。それはフライト中パイロットへのドリンク配布の廃止。微々たることかもしれませんが、社員一人一人がしっかりとコスト意識をもって業務に取り組んでいる表れだと感じました。
さらに、需要が高まっている医療用防護服について、ANAのCAが製造を支援する方向で検討段階に入っています。減便により人手が余っているCAを人材活用し、医療用防護服の縫製を支援する見通しとのことです。
ご紹介したのはごく一部ですが、現在の逆境においても航空業界は前を向こうとしているのがお分かりいただけたのではないでしょうか?
今こそポジティブに!自分にできることから!
パイロットや航空業界に限らず、いまあらゆる業界で働く方々が新型コロナウイルスにより様々な影響を受けています。
閉塞感が募り、不安を抱えて過ごす毎日の中で、ネガティブな考え方に傾きがちになってしまうかもしれません。私自身もそうでした。
ですが、ただ現状を嘆いたり不満を言うだけでなく、最善を尽くし皆で力を合わせて乗り越えようとする姿勢は、この世界的な危機を乗り越えるためなにより大切なのではないか、と本記事を執筆する中で改めて感じました。
一人が一人が少しでもできることを考え、行動に移せばきっと大きな力になりますよね。
私自身も、マスクが手に入らず困ってる知人や友人にマスクを配ったり、病院を経営している友人にマスクや消毒液を送ったり、医療機関に医療用トレーラーなどの物資を提供し支援するNPOに募金をするなど、小さなことですが実行に移しています。
この記事を読んで、少しでも前向きな気持ちになって下される方がいれば幸いです。