思い浮かぶ顔

 ちょっとこわもてだけど、話すと優しい店長の顔が、ふっと頭に浮かんだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、長崎市のある居酒屋グループが臨時休業に入ったことをホームページで知った▲家族や同僚、友人らとよく通った。いつも繁盛をしているので、入店ができないこともあったが、それでも時折行きたくなる▲まだ本県に緊急事態宣言が出ていなかった4月初め、店をのぞいた。店内は常連客がちらほらいる程度だった▲このグループはインターネットを通じて資金を募る「クラウドファンディング」と呼ばれる手法で支援を呼び掛けている。人件費や運転資金に充てるという。そこには「事業継続と従業員の雇用、仕入れ先様を守るため」と記してあった▲「仕入れ先」の言葉を見て、別の顔を思い出した。この居酒屋と取引がある精肉店の店主の奥さん。話を聞いてみると、やはり売り上げは激減し、従業員の勤務時間を早めに切り上げているという。新たな試みとして通販を始めるようだ▲飲食店の休業の影響は、小売店にも広く及んでいることを思い知り、わずかながら協力をさせてもらった。「すみません。今日はお客さんいっぱいなんですよ」「あの店に行ったら、肉料理を注文してくださいね」。これまで気にも留めなかった言葉が、懐かしい。(明)

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