乱舞するNOKKO、雨中の早稲田祭「プライベイト・ヒロイン」の衝撃! 1986年 11月1日 レベッカのシークレットライブが早稲田祭で開催された日

恐ろしいほどのエネルギー、歌姫 NOKKO のパフォーマンス

私の中で今、NOKKO がアツい。歌謡曲バーでバイトするほど「80年代の音楽が好き」と言っておいて、今になってレベッカか? という感じもするのだけれど、レコードで聞く NOKKO と、ライブ映像の NOKKO はまったく別物で、私は殴りつけられるような衝撃を受けてしまったのだった。

パフォーマンスすべてが NOKKO の音楽であり、身体全身を使い、空気を巻き込んで、表現する。こうして小さな身体から発せられるハイパワーな声量に圧倒される。

音楽の中に没入し、乱舞する姿を見ると、恐ろしいほどのエネルギーを感じる。女が持っている狂気的な「強さ」に、震えるほどの感動がある。興奮度が高く、吸い込まれそうな NOKKO のパフォーマンス。音楽とその場の空気に身を任せたダンスは、野性的で血のほとばしる美しさがある。

そんな “ナマ” のパフォーマンスこそ彼女の持ち味であり、歌姫 NOKKO たる由縁であり魅力なのだと再認識したのだった。

1986年11月、早稲田祭で行われたレベッカのシークレットギグ

中でも私が最高に好きなのが、1986年11月1日に早稲田祭で行われたレベッカのシークレットライブの映像だ。雨が降る早稲田大学戸山キャンパスでの映像。私の母校であり、4年間を過ごしたキャンパス。歌謡曲バーのお客さんが持ってきてくれたDVD映像に映るステージは、紛れもなく私が通っていた場所そのままであった。

ステージに立つ NOKKO。それを取り囲む学生たち。雨で機材が壊れるような状況にもかかわらず、NOKKO は声を張り上げて最高のパフォーマンスを見せる。その姿は、「頑張っている」とか「感動した」とかいう言葉では説明できない。観ているだけで涙が出てくるパフォーマンスってものがあるのかと、私は収録されている「プライベイト・ヒロイン」を観たびに思う。

NOKKO というボーカリストが持つあらゆるパワーが、濁流のように観客を呑み込んでいく。なかでも間奏でステージの真ん中を肩で風を切るように歩いていく姿は印象的だ。

紛れなきアーティスト、美しく燃えるディーバ

集団的な熱狂がこれほどまでに沸騰する様子を、私は見たことがない。もちろん、誰もが熱狂して生きられるわけではない。ハレとケという生活感がある中で、私たちに生きる喜びや、魂の自由さを伝えてくれる人がいる。それをアーティストと呼ぶのであれば、NOKKO は紛れもなくアーティストであり、美しく燃えるディーバである。

ただ、それができる人は精神的にギリギリな場所にいるのではないかと私は思う。NOKKO の歌う姿を見ていると、この世ではない “どこか” へ行ってしまいそうな不思議な魅力さえ感じる。それが、目を捉えて離さない。

それにしても恐ろしいほどの力だ。内面が蝕まれかねない感受性と生きるのは、あまりにもしんどいことだろう。それでも、あれほどの力でパフォーマンスをぶちかませたのなら、どんなに素敵だろうと思う。母校に爆弾のようなゲリラライブを落としていった、80年代の歌姫に私は、燃えるような憧憬の念を抱いている。

カタリベ: ミシマサイコ

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