豪州SC:eシリーズ第4戦北米連戦はウインカップ初勝利、初参戦ロッシも2位を獲得

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』第4戦が4月29日(水)に開催され、直前のフォーマット変更による4レースで4名の勝者が誕生した。ワイルドカード枠で注目を集めた北米のスター勢は、NASCARのジョーイ・ロガーノがマルチクラッシュの引き金となり、インディ500勝者アレクサンダー・ロッシは最終レースで2位を獲得する対照的な結果となっている。

 この『Supercars All Stars Eseries』第4戦は舞台を北米に移し、アメリカ東部を代表するロードコース“ザ・グレン”ことワトキンスグレンと、カナダ・モントリオールのF1トラック、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでの勝負となった。

 その開催直前にはフォーマットの修正が行われ、各トラック2ヒートの計4戦を実施し、その最初のレースに向け双方のトラックで15分の予選を戦うのに加えて、3番目の“特別なセッション”も追加。これはファンへのデモンストレーションとして、すべてのドライバーがヴァーチャルでのバーンアウト、ドリフト、トラックの逆走を許される『ノー・ルール』の8分間が設けられた。

 そんなお祭りムードを前に、予選シュートアウトでは仮想空間での実力者たちが順当な走りを披露し、eシリーズ最多ポールポジション男のErebus Motorsport、アントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)と、2016年VASC王者SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が、それぞれモントリオール、ワトキンスグレンの最前列を獲得した。

 F1トラックとしても幾多の勝負を演出したジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、この『Supercars All Stars Eseries』でも混沌としたバトルを生み出し、まずレース1の1コーナーに向けホールショットを奪ったパスカーレに対し、フロントロウ発進のSVGが2コーナーのクロスラインで早くも首位奪取に成功。VASC連覇中の王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)との三つ巴で後続を引き離していく。

 18分レースの5周目にSVGが義務ピットへ向かうと、翌周にはマクラフランが反応。少し遅れたパスカーレはふたりの“Kiwi”ことニュージーランド出身者の後方、3番手で追走する展開でファイナルラップに突入する。

 その優勝争いを決めたのが1~2コーナーの切り返しで、勝負を焦った2番手マクラフランは2コーナーの切り返しで前を行くSVGにわずかに接触。このプッシングでラインを乱したSVGは2番手陥落となってしまう。

 しかしeシリーズのドライビング・スタンダード・オブザーバーを務める、バサースト12時間勝者のクレイグ・ベアードにより「ポジションを戻すよう」指示を受け、マクラフランがバックオフすると、その隙を突いたパスカーレも先行。SVGが直近6戦で4勝目を挙げる快挙を達成し、2位パスカーレ、3位マクラフランの最終結果となった。

 続くモントリオールでのレース2はオープニングからカオスな展開が勃発。このリバースグリッド採用のヒートでジャック・スミス(ホールデン・コモドアZB/Brad Jones Racing)とともにフロントロウに並んだNASCARのスター、ジョーイ・ロガーノ(フォード・マスタング)は、普段ローリングスタートに慣れ親しんでいる影響もありスミスとともに最悪のスタートを切ると、後続の車列にヒットされホームストレート上で数回転スピンするアクシデントを誘発。

 これにより混乱に陥った車列は、続く1~2コーナーでマルチクラッシュを引き起こし、グリッド上のほぼ全車がダメージを受ける悲惨な状況へと発展してしまう。

カナダ・モントリオールのF1トラック、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでのR2は、オープニングラップで多重クラッシュが発生する大混乱に
優勝こそなかったものの、王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)は4戦中3度の表彰台を獲得する安定感を見せた
この日、唯一といっていい静かなレースとなったワトキンスグレン初戦は、アントン・デ・パスカーレが勝利

 セーフティカー出動後は、この悪夢をすり抜けていたファビアン・クルサード(フォード・マスタング/DJR Team Penske)と、Walkinshaw Andretti Unitedの新エース、チャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB)の一騎討ちとなり、なぜかSCピリオド中にピット作業を消化しなかったクルサードが終盤にトラックから去り勝負あり。

 モスタートがeシリーズ初勝利を挙げ、元同僚のTickford Racing、キャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)と、ルーキーのゼイン・ゴダード(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)が続くトップ3となった。

■ワトキンスグレン・ラウンドも波乱の展開に

 さらにこの夜ふたつめのトラックに舞台を移し、ワイルドカード枠もうひとりの注目株、VASCの2003-04年王者マルコス・アンブローズが豪州出身者唯一の勝利を挙げた地、ワトキンスグレンでの2レースが争われた。

 その最初のヒートに向け予選でポールを獲得していたSVGは、モントリオールでも前後を分けあったパスカーレ、マクラフランとともにカオスとは無縁の静かなスタートを切るも、あまりにも安全策を採りすぎたか1コーナーまでに6番手にまで後退することに。

 これで勝負の行方が絞られ、マクラフランはアーリーピットでアンダーカットの期待を掛けるも、パスカーレの前に出ることはかなわず。そのままパスカーレが勝利を飾り、マクラフランが2位、SVGが3位のリザルトとなった。

 そしてこの日最後のヒートとなるザ・グレンでのレース2は、リバースグリッドによりふたたびカオスが演出され、2度目のリバースポールについたスミスのホールデンを挟むように、クリス・ピザー(ホールデン・コモドアZB/Team Sydney)がインサイド、R2で3位入賞のゴダードがアウトサイドに並び掛けると、迫る1コーナーで首位に立ったゴダードがスピンオフ。

 これを引き金にチェーンリアクションとなり、ウィル・デイビソン(フォード・マスタング/23Red Racing)がターン1のウォールに激しくヒット。トラック上に跳ね返ったマシンを避けるように、後続のクルサードらがコースオフを喫し大混乱に陥っていく。

 これを掻い潜って好機を手にしたのは、8番グリッドからスタートしていた7冠王者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)で、ここまでSimレースに苦しんでいたレッドブル・レーシング・ホールデンの絶対王者は、18歳のSuper2参戦組である同チームの秘蔵っ子、アンジェロ・ムザリス(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)との勝負も制し、彼が他車との接触スピンで去ったことでeシリーズ初勝利を獲得。

 その後方では熾烈なポジション争いを制したワイルドカード組のアレクサンダー・ロッシ(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)が、マクラフランを抑えて2位に入り、SVG、ウォーターズが続くトップ5に。一時3番手争いを展開したゲスト組アンブローズも、得意のグレンで6位に入る力走を見せた。

 続く『Supercars All Stars Eseries』第5戦はヨーロッパに向かい、F1カレンダーを代表するトラックであるベルギーのスパ・フランコルシャン単独開催で、5月6日(水)に3ヒートでの勝負が繰り広げられる。

VASCからNASCARに移り北米でも活躍したマルコス・アンブローズは、仮想空間でも”ザ・グレン”巧者のドライビングを披露した
4ヒートを経て見事にポディウムまで獲得する適応ぶりを見せたインディ500勝者のアレクサンダー・ロッシ
当初ニュル戦も予定された第5戦はスパ1本に。豪州MotoGPの伝説、ミック・ドゥーハンの息子ジャックがワイルドカード参戦を果たす

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