トヨタはコロナウイルスの影響で中止となった「第90回ジュネーブ国際モーターショー」で披露予定だった新型コンパクトSUV「ヤリスクロス」を、世界初公開しました。本家ヤリスに対してどのような位置づけのクルマになっているのでしょうか。
市場規模が拡大中のジャンルに挑戦
ヤリスクロスは現在日本でも販売されているヤリスをベースに、市場が拡大している「都市型コンパクトクロスオーバーSUV」のジャンルを再定義するモデルです。
ボディサイズは全長4180×全幅1765×全高1560mm、FFのほかにAWD仕様も設定されます
すでに定評ある新型TNGAプラットフォームによる確かなハンドリングや内装の質感の高さをキープしつつ、大胆なデザインを採用。ホイールベースはヤリスと同じ2,560mmですが、全長は+240mm、全幅は+20mm、全高は+90mmとボディは大型化されました。またSUVの特徴である最低地上高に関してもヤリスより+30mmとすることで悪路走破性を求めるというよりはスタイリングの美しさや日々の乗降性が高まるという解釈の方がしっくりきます。
パワートレーンはヤリスと共通
ヤリスには最新の環境技術を搭載しており、ヤリスクロスにも同様のパワートレーンが採用されています。
ガソリン車、ハイブリッド車とも高効率の1.5Lエンジンを搭載、ヤリスのようにガソリン車に6速マニュアルの設定はありませんが、欧州ではマニュアル車のニーズが高いのでひょっとしたらそれほど遠くない時期に搭載されるかもしれません。
駆動方式はFFをベースにAWDも設定、ハイブリッド車は電気式4輪駆動である「E-Four」になる点もヤリスと同様です。
気になる燃費性能はまだ公表されていませんが、車両重量が増すことや、それに伴うパワートレーンの細かいチューニングによりヤリスほどの低燃費は期待できないと予想します。それでもこのクラスでは(多分)ダントツの環境・燃費性能になることは間違いないでしょう。
室内空間の広さや使い勝手は向上
ホイールベースがヤリスと同じでもボディサイズを拡大することで特にトランクスペースの拡大が期待できます。公開されている公式動画からも特に奥行きが延長されていることもわかりますし、リアシートの分割可倒機構は40:20:40とすることで4名乗車で真ん中に長尺物(例えばスノーボード)を積載できます。
ホイールベースには変更ありませんが、ヤリスに比べ、頭上周りの空間は広いと予想できます
またこのクラスとしては極めて珍しいパワーバッグドアを設定、荷物で両手が塞がっている際にも足をバンパー下に入れることで電動で開くことができます。
ライバルの販売にも影響するほどインパクトは大きい
これまでも一定の販売規模は持っていましたが、ヤリスクロスの登場は、このコンパクトSUVという市場を活性化させるほどのポテンシャルを持っていると感じました。
フォルクスワーゲンの「T-Cross」が、デザインのコンセプトこそ違えどライバルとしては近いと考えられます。
この他に国産車のライバルとしてはマツダCX-3が挙げられます。特に先日200万円以下の車両価格となる1.5Lガソリン車を追加することでこのクラスでの存在感や競争力を再度高めようとしています。
ヤリスクロスより下位のセグメントとしては、6月発表予定の日産キックスや現在大ヒット中のダイハツロッキー/トヨタライズも競合車として考えても良いでしょう。
トヨタはヤリスクロスだけでなく、RAV4や6月発表予定の新型ハリアーも含め、どのセグメントでもSUVをラインナップすることで顧客をしっかり獲得しようという狙いも見えてきます。
ヤリスクロスはまだプロトタイプの状況で価格も当然決まっていませんが、それでもこのクラスでは圧倒的なプレミアムセグメントとしての位置づけを行うことでしょう。その点でもこのクルマの登場は市場の活性化と伸長が期待できるはずです。