テレワークで宅飲みコーヒー豆が人気、気分転換や眠気対策で新たな客も

 「新型コロナウイルス」感染が広がる中、専門店のコーヒー豆が人気を集めている。
 緊急事態宣言が全国に発令され、テレワーク導入の会社が増えたが、外出自粛で散歩もままならない。慣れないテレワークで人と接する機会が減り、気分も滅入りがちになる。
 そんな気分を転換しようとコーヒーを淹れる人が増えたのだろう。眠気対策も兼ねたコーヒーの豊潤な香りが、至福の時をもたらす。
 新型コロナの感染拡大で、馴染みの百貨店や商業施設のコーヒー豆専門店、喫茶店が次々に休業している。休日に自宅でコーヒーを堪能していた「通」だけでなく、テレワークで疲れた神経を癒す一杯のコーヒーを求める人がコーヒー豆の人気を後押ししている。

 社内や近くのコーヒーチェーンで、手軽にコーヒーを手にしていた会社員は多い。最近は、自宅のインスタントや缶コーヒーに物足りず、本物の味と香りを求めてコーヒー豆専門店を探して足を運ぶ人が目立つという。
 神奈川県川崎市でコーヒー豆専門店「ツキノワコーヒー」を経営している馬場直樹店主に話を聞いた。
 店主の馬場直樹さんは、「4月に入り、コーヒー豆の販売がいつもの2割から3割増えた」と変化を話し始めた。初めてのお客だけでなく、常連客の注文が増えているという。「テレワークで自宅に閉じこもり、コーヒーを楽しむ時間が増えたのではないか」(馬場店主)と理由を推測する。

香ばしい焙煎したてのコーヒー豆(ツキノワコーヒー店)

香ばしい焙煎したてのコーヒー豆(ツキノワコーヒー店)

 最近のトレンドは、「すっぱい(酸味)を嫌がる人が増え、ロースト(焙煎)も浅めで、香りを楽しむ顧客が増えている」(馬場店主)と嗜好の移ろいを語る。
 コーヒー豆を挽いて持ち帰る人もいるが、挽かずに豆のまま購入する本格派も増えた。
 コーヒーマシーンやミルを購入し、コーヒー豆が砕かれる時に醸し出す香り。カップから迸る香り。自分好みの味で、慣れないテレワークに疲れた神経を癒す一杯だ。
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 ほとんどの会社員が初めて経験するテレワーク。通勤が「ゼロ」になる一方で、日常のサイクルが狂い、仕事とプライベートのバランスに悩む人も多い。
 そんな時、コーヒー豆を挽き、熱湯を注ぎ、立ち上る香りで疲れを癒す。初めてのテレワークを、楽しみを見出し乗り切ろうとする。
 馬場店主は、「緊急事態宣言で、新規のお客様も増えている。みんな大変な時期だが、感染防止に努めていきたい」と語る。
 ツキノワコーヒーは時短営業中で、感染拡大の防止対策として5月4日、5日、6日の3日間は営業自粛の予定だ。

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