《コロナと向き合う (6)》雇用流動 検討も必要 連合群馬会長・佐藤英夫さん

 新型コロナウイルス感染症拡大により、労働者は収入減や健康面の不安を抱えながら生活している。労働組合でつくる連合群馬会長の佐藤英夫さん(57)は「命を守ることが第一」とし、特定の業界を除いた全面的な休業要請が必要と訴える。

―産業界への影響の度合いは。
 需要が激減したり事業ができなくなったりした業界と、多忙で人手不足に陥っている業界と大きく二つに分けられるが、どちらも被害者。もともと体力のない中小企業ほど影響が強く出ており、ぎりぎりの状況になっている。小売りや流通、医療関係者らは感染リスクにさらされながら働いており、平穏無事の業界はないと受け止めている。

―長期化すれば雇用への影響が心配される。
 日頃から労働相談を実施しており、コロナ関連で「会社都合なのに自己都合退職を強要されている」という声が寄せられた。今後、解雇や契約解除といった相談の増加を懸念している。労働界から積極的に声を上げるべきではないが、休業状態の業界と、人手不足の業界とで雇用の流動ができる仕組みについて検討してもらう必要があるのではないか。この緊急事態で一つの雇用対策になると思う。

―優先すべき支援策は。
 収入減で命を絶つ人を出さず、生活を維持するための施策が求められている。政府が打ち出した一律10万円の支給は、第1段階の支援として評価すべきだ。その先は、影響の大きい業界や労働者への支援を考えていく必要がある。ただ、支援のハードルを下げれば必要のない人にまでお金がいき、上げ過ぎれば必要な人に届かなくなるのが難しい。諸外国の事例も参考に、日本政府として何ができるかを考えてほしい。

―外出自粛要請などの感染防止策の評価は。
 コロナ以外の患者への影響も考えれば、医療システムの崩壊は絶対に避けなければいけない。そのために外出自粛を徹底させるしかない。医療や福祉など社会機能の維持に必要な職種を除き、全面的に休業要請する時期に来ている。線引きが難しい業界もあるが、安心できる対応をきちんと示した上で実施するべきだ。

―連合群馬が果たすべき役割は。
 各業界の情報収集すら難しい状況だが、電話相談の門戸を常に開き、労働者、生活者の声に耳を傾けたい。当面の労働運動を全て中断してでもコロナ対策に全力を尽くしていく。

 さとう・ひでお 県職員労組書記長、同中央執行委員長などを経て2015年から自治労県本部中央執行委員長。連合群馬副会長を経て昨年10月から現職。中央大法学部卒。前橋市。

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