フレッシュなイメージに溢れるハッチバック「トヨタ カローラスポーツ」
1966年に登場以来、現在もその名を残すトヨタ カローラは、言うまでもなくトヨタを代表するビッグブランドです。
しかし、カローラは、長い歴史を持つクルマゆえの悩み……若いユーザー層の確保に苦心するようになり、1997年から発売のプリウスが次第にカローラのポジションに座ったことで、近年のカローラセダンはパーソナルユースよりも「レンタカー」「営業車」というイメージさえありました。
そのためトヨタは、ワゴンモデル「フィールダー」に若々しさを与えて巻き返しを図り、イメージチェンジを継続してきました。しかしトヨタはカローラシリーズ全体をさらに蘇らせるべく、2018年にカローラスポーツ、そして2019年にはセダンとフィールダーを「まったく新しいカローラ像」で生み出したのです。
若いユーザー層の巻き返しなるか
それに先駆けたカローラスポーツは、激戦区の「Cセグメントハッチバック市場」に真っ向から勝負を挑みました。このセグメントには、ベンチマークのフォルクスワーゲン ゴルフと戦うために、各社とも気合の入ったモデルを投入してきます。
カローラスポーツも、優れたハンドリング・心地よい乗り味を持つクルマに仕上がっていて、高い評価を得ています。
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モデル末期の「7」は完熟期 次世代モデルの「ゴルフ8」が欧州では登場済み
いっぽうゴルフの現行型は、2012年デビューの7代目。通称「ゴルフVII(7)」とも呼ばれます。ゴルフ7も、新たな時代を作るゴルフとして設計されました。
その核となるのが、「MQB」プラットフォーム。MQBとはドイツ語でモジュールキットを意味します。
セグメントごとに異なっていたプラットフォームを共通化することで、多くの車種を少ない工数で開発ができるため、大いに注目を集めました。
質感も大幅に向上し、かつての「大衆実用車」のイメージを超え、プレミアムハッチバックと呼んでもいいほどの出来は、ライバル車のレベルも底上げしました。
日本未上陸のゴルフ8?
実は、欧州では後継モデルの8代目「ゴルフ8」が2019年秋に登場しているので、本国でのゴルフ7は、旧モデルになってしまいました。しかし日本では、まだしばらく「モデル末期の現行型」。
フルモデルチェンジ直前のクルマは改良に改良を重ねているため、ゴルフ7は熟成しきった完熟果実のような「オイシイ」状態なのです。なお、ゴルフ8の日本上陸は未定です。
カローラスポーツとゴルフ グレードによっては近い価格帯
ライバル車となると気になるのが価格です。カローラスポーツは1.2Lターボとハイブリッドを用意し、前者の最高峰FFモデル「G Z」は254万円、後者の「ハイブリッドG Z」は282万円ですが、バランスが良い中間グレード「G」「ハイブリッドG」は、それぞれ238万円と265万円。
ゴルフではベースモデルで1.2Lターボを積む「TSI トレンドライン」が259万円、2Lターボディーゼルを積む「TDIコンフォートライン」は323万円、1.4Lターボが搭載され最も装備が多い「TSI ハイライン」は338万円という価格設定になっています。
輸入車は据え置き価格で国産車よりお得?
装備の違いがあるため単純な比較はできませんが、カローラスポーツの「G」「G Z」とゴルフの「TSI トレンドライン」は同じような価格帯にあることがわかります。国産車の価格が上がった一方、輸入車の価格はむしろ据え置きなのです。
1990年時点での売れ筋・ゴルフCLi、5ドア・ATは238万円。ちなみに同時期、カローラのハッチバック「FX」の5ドア最上級グレードは、なんと129.6万円でした。
トヨタ カローラスポーツ、じゃなくて「ゴルフ」という選択肢
ゴルフは登場後8年を迎えても、いまだに内外装デザインは古くなっていません。外観はシャープな造形。奇をてらっていない分、見飽きないのも魅力です。ゴルフ8を目撃した今でも、極端に「旧型」という印象を与えません。インテリアも同様です。水平基調で落ち着いたデザインは、今後数年経っても古さを感じさせないはずです。
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進化され続ける旧型ゴルフ7
旧型……となると装備、とくに安全・安心に関わる機能を積んでいるか気になりますが、ゴルフ7は頻繁にアップデートを行なっているため、現在では「全車速追従機能付きACC(アダクティブクルーズコントロール)」、「渋滞時追従支援システム」、「レーンキープアシストシステムな」ど先進の安全運転支援システムを搭載。メーターは現代的なデジタルメータークラスター「Active Info Display」に、センターコンソールの大型モニターもジェスチャーコントロール付きに進化済みです。
ボディの頑強さは折り紙つき。それがもたらす適度に固く、そしてしなやかな乗り心地は変わらぬゴルフの美点です。全長4265mm×全幅1800mm×全高1480mmというサイズも、ほんとうに使いやすいのです。
迷っているなら、熟した果実もアリ!
最新のカローラスポーツも、このクラスに新風を吹き込み、かつゴルフと真っ向勝負ができるほどのクルマに仕立てあげられています。でも、Cセグメントのリーダー・ゴルフ7の完成し尽くした「熟した果実」状態は、今しか味わえない……のです。
前述のように、もはや価格帯もほぼ同じ。モデル末期を選ぶという、ツウ好みの車選びも楽しめます。カローラスポーツを買おうかな……と思いつつ、輸入車やゴルフが少しでも気になっているならば、今がそのチャンスかも。ゴルフ7というチョイスはいかがでしょうか。
[筆者:遠藤 イヅル]