コロナ禍テーマに短編小説 アマチュア作家・諸屋さん 理不尽な状況でも希望を描く

「コロナ禍の中でも希望は見いだせる」と話す諸屋さん=長崎市大浦町、「Book with Sofa Butterfly Effect」

 コロナ禍を生きるさまざまな人々を描いた短編小説シリーズが、同市の出版社「編集室水平線」のホームページ(HP)で無料公開されている。作者は長崎市大浦町で書店を営むアマチュア作家、諸屋超子(ちょうこ)さん(38)。「不条理な状況を社会的少数者(マイノリティー)側の目線で描いた。たくさんの人に読んでほしい」と話す。
 諸屋さんは、小さな書店「Book with Sofa Butterfly Effect」を営む。交流のある編集室水平線代表の西浩孝さん(38)に勧められ、今年から小説の執筆に挑戦。4月、シリーズ1作目となる「ソシアル ディスタンス」を同社に持ち込んだ。
 コロナ禍で会えない状況の恋人同士が、スマートフォン越しの会話中にさまざまな思いを巡らせるストーリー。西さんは「人間の振る舞いや関係性、生活スタイルなどを鋭く観察している」と評価。校正、編集作業を経て4月22日に公開した。
 コロナ禍をテーマにした理由について、諸屋さんは「今の状況で恋人同士はどうしているんだろうとか、日常の中でコロナを中心にいろいろと考える事が多くなったため。ストーリーは全てフィクションだが実在の人物をモデルにしたケースもある。理不尽な状況でも希望を見いだせることを一貫して描きたい」と話す。
 5月4日現在、HPでは「ソシアル-」のほか、電車内で子連れの母親が閉塞(へいそく)感にとらわれていく「禍(まが)禍(まが)」、コロナ感染におびえながらも互いを思いやるカップルを描いた「ノー密」、スーパーの店員や看護師らコロナ禍でも働かざるを得ないエッセンシャルワーカーの複雑な心境をつづった「I’m working for Essential People.」の4作品を公開中。PDFファイル版もダウンロードできる。
 次作のタイトルは「オーバーシュート」をもじった「オーバーミュート」にする予定。「コロナ禍を理由に過剰に黙らされている人を描きたい。ありのままに生きることを許さない同調圧力が社会でじわじわ強まっているのを感じるから」と話す。シリーズは全9作品の予定で順次公開される。
 編集室水平線のHPアドレスはhttps://henshushitsu-suiheisen.themedia.jp/

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