「特別定額給付金」への便乗詐欺に要警戒 キーワードは「三近」

詐欺の魔の手はニュースとともに、忍び寄ってきます。昨年は改元詐欺で、今年は新型コロナ詐欺です。多くの人がウィルス蔓延の影響から経済的なダメージを受けていることから、10万円の給付金が支給されることになりました。当然ながら、騙す側にとってこの給付金はこの上ない詐欺の材料になりますので、注意が必要です。


詐欺師が全国民を狙う

以前に検討されていた30万円の支給であれば一部の人だけが対象でしたが、今回の特別定額給付金は、国民全員が対象です。それゆえに、詐欺師から全国民へのアプローチが可能になります。さっそく多くの人が日常的利用するメールを使用した詐欺がやってきています。

「給付金10万配布につき、お客様の所在確認」。こう題されたメールが届いているとして、警視庁は注意を呼び掛けます。そこには「各携帯電話キャリア会社を通し、国民の皆様へ配布していくこととなりました」と嘘の内容が書かれ、「詳細確認とお手続きは下記URLへアクセスください」と、詐欺サイトにアクセスさせようとしています。さらに「お渡し方法は銀行振込もしくは、係の者がマスクをつけて向かう場合もございます。有効期限:4月30日(木)23時59分迄」と期限を決めて焦らせて、家に詐欺師が訪れてくるような文面も見られます。もしURLをタップして手続きを進めると、金融機関の口座やクレジット情報、パスワード、住所や電話番号などの入力を促されて、金銭的な被害に遭う可能性が高いと思われます。この種の詐欺メールは、今後も送り続けられるでしょう。

気を付けるのは「三近」

詐欺や悪質商法は、電話、訪問、ネットの三方向「三近」でやってくることを、以前にお話しましたが、電話による給付金詐欺も多く起きています。

国民生活センターには、男性から「国から一律に10万円の給付をすることになりましたが、より早く手元に届けるために申請代行をします。マイナンバーカードなら1週間以内に確実に振り込まれます」という電話があり、マイナンバーカードの取得や給付金の申請代行の手続き費用として、3万円ほどを払うように言われたという相談もあります。マイナンバーカードの取得をしていない人が多いことに目をつけての手口かと思われます。

給付金については、以前から注目する話題になっていましたので、すでに被害も出ています。

70代高齢女性の家に、役所を装った男から「市から給付金が出ます。給付金を受け取るためには、銀行の口座情報が必要となりますので、担当者を向かわせます」との電話がありました。その後、手続きと称して家にやってきた人物にキャッシュカードを詐取されて、50万円が引き出されています。

この他にも「(雇用)助成金があるので、銀行口座の手続きをしてください」と電話があり、ATMへ誘導された事例もありますので、これを給付金に転用してATMに誘導することも十分に考えられます。

支給の早い市区町村ですと、5月上旬から行うとのことですから、詐欺師もこれから本格的に動き出す可能性があります。メールや電話での詐欺はすでに起こっていますが、人ではなくモノが家にやってくる、郵送の手口にも気をつけてください。

10万円の給付をうけるには、住民基本台帳に載る住所に申請書類が送られてきて、その書類を返送するか、オンラインの形で申請することが必要になりますが、その手順に便乗して、詐欺師が偽の用紙を送る可能性も考えられるからです。

以前にも似たような事例が

昨年に起きた改元詐欺でも「銀行法が改正されたので、キャッシュカードの変更をしてください」といった封書が送られて、キャッシュカードを入れて返送するように促してきた事例もあります。同様に、偽の書面を送り暗証番号などを記入させて、口座確認のためにと称してキャッシュカードの返送を促すかもしれません。また、申請書とともに、手続き案内の用紙が入ってくるかと思いますが、これにも注意が必要です。偽の案内書や手順書に詐欺師につながる電話番号を記載したり、運転免許証などの身分証明のコピーを偽の住所に送らせることも考えられます。

国は住民基本台帳を使って送りますが、詐欺師は過去に取得した騙しの名簿から、郵送物を送ります。くれぐれも申請の封書を受け取って、すぐに記入や手続きを始めるのではなく、まずは立ち止まって、書面の内容をしっかりと読み、郵送物の真偽を確認してから返送するようにしてください。

詐欺師は私たちの行動の先を読んで待ち伏せをするものです。それゆえに、私たちも詐欺師が行うであろう詐欺の想定しながら身を守る「想定力」が大事になってきます。

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