「つみたてNISA」相場が落ち着いたら改めてすべきこと、暴落から次はどう備える?

市場の値動きは、しばしば波にたとえられます。株式投資のチャートには、小刻みに上下する波や、全体的に緩やかに上昇・下降する波の姿が見て取れます。

過去の相場を見れば、この波にはサイクルがあります。5年~10年で上下の1サイクルとなっています。2011年の東日本大震災の下げ相場の後は、アベノミクスで上げ相場、世界的にも好景気が訪れました。そして2019年の米中貿易戦争・2020年の原油価格暴落&コロナショックで下げ相場というわけです。

コロナウイルスが一刻も早く収束してくれることを願うばかりですが、そのめどが立たない以上、次の波がやってくるかもしれません。また、問題が解決したとしても、まったく違う新しい波が発生することもありえます。いつかくるかもしれないそのときのために、相場が落ち着いたら改めてすべきこと、相場に対する心構えについてまとめました。


資産全体の無リスク資産とリスク資産のバランスをとる

つみたてNISAで非課税にできる金額(非課税枠)は最大で年40万円、20年間で800万円分です。この枠内ならば、利益に対する20.315%の税金が非課税になるのですから、できるだけ活用したほうがいいでしょう。

しかし、つみたてNISAの非課税枠は、一度使うと再利用ができません。つみたてNISAの投資信託を売ると非課税枠が減るため、リバランスをするのは損になってしまいます。また、年40万円までという非課税枠の上限があるため、値下がりした投資信託を買い増すリバランスもしにくいのです。

そこで、リバランスするならば、「つみたてNISA内」ではなく「資産全体」でリバランスをすべきです。つまり、資産全体のリスク資産と無リスク資産(現金・預金・個人向け国債)とのバランスを見て、調整するということ。

たとえば、資産全体で無リスク資産50:リスク資産(つみたてNISA含む)50という配分比率で資産運用していたところ、株などのリスク資産が順調に増えて30:70になったとします。この場合、今後仮にリスク資産が値下がりしたときに資産が受けるダメージが相対的に高まるため、つみたてNISA外のリスク資産を一部現金化して、無リスク資産とリスク資産の比率を元に戻したほうがいいかもしれない、というわけです。

こうした、資産の配分を元に戻すことをリバランスといいます。

今回のコロナ相場は、投資の冷え込みだけでなく、今後の勤労収入も減る可能性が高い状況です。そんな時に、現預金が給料の手取り6カ月分から1年分はあると、なんとか暮らしていけるという安心材料にもなるかと思います。

つみたてNISA内でリバランスする場合は、毎月の積立で時間をかけて調整

それでもつみたてNISA内でリバランスをしたほうがいいという場合には、毎月の積立金額を見直してみましょう。運用の結果、当初の配分比率から増えた投資信託の積立金額を減らし、逆に減った投資信託の積立金額を増やします。

ただし、ドルコスト平均法の効果を得るためには、毎月の積立金額は変えず、商品自体も変えないというのが選択肢としてありますので、上述の通り、つみたてNISA外の資産で調整して、資産全体のバランスをとるよう方が良いと考えます。

株・債券・不動産・金など様々な資産に分散投資してリスクを軽減する

投資信託は1本で数十から数百の投資先に投資できる商品ですから、分散投資向きだといえます。とはいえ、さらに資産を分散させるために、REIT(リート・不動産投資信託)や金などといった他の資産にも一部でいいので投資をしておきましょう。

異なる値動きの資産を持つことで、リスクを低減しながら堅実なリターンを狙うことができます。

バランス型の投資信託は値動きを気にせず淡々と続けよう

1本で国内外の株式・債券・不動産など、複数の資産にまとめて投資できる投資信託をバランス型といいます。もし、つみたてNISAでバランス型の投資信託を購入しているならば、そのまま保有・購入を続けましょう。

バランス型の投資信託は、自身で自動的にリバランスの作業をしてくれますので、任せてほうっておいてもいいでしょう。

といっても、バランス型もリスク資産ですから、資産全体から見てリスク資産の比率が高くなりすぎているのであれば、つみたてNISA外の資産で調整して、資産全体のバランスをとるよう方が良いでしょう。

暴騰・暴落になると忘れがちな「ドルコスト平均法」を思い出そう

暴騰・暴落が起こるとつい忘れてしまいがちですが、つみたてNISAは積立投資。値下がりも味方にできる投資なのです。

積立投資をすると、ドルコスト平均法の効果が期待できます。

ドルコスト平均法は、定期的に一定額の金融商品(ここでは、投資信託)を購入しつづける投資法です。こうすることで、投資信託の価格(基準価額)が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わないことになるため、平均購入単価を下げることができるのです。

一定額ずつ積み立てると、基準価額が安いときにたくさん買えるので、一定量ずつ積み立てた場合に比べて平均購入単価が抑えられるのです。平均購入単価が下がっていけば、値上がりに転じた際に利益を出しやすくなります。

値下がりしたら購入金額を増やすことも検討

今回のコロナウイルスのような暴落は、誰の目にも明らかに値下がりしています。投資信託の積み立ては、価格が下がったときこそ多く買い付けられるのですから、少し言い方が悪いかもしれませんが、相場が急落したときは絶好の買いチャンスだともとらえられるのです。

大きな値下がりがあったら、資金に余裕があるならば一時的に購入金額を増やすというのもひとつの手でしょう。

ただし、純資産総額が暴落前からずっと減り続け、回復の兆しが見えないような投資信託だったら、増額ではなく乗り換えを考えてもいいかもしれません。

下がったら売るのはNG! 売るのはお金が必要になったら

値下がりしたからと慌てて売ってしまうようでは、損をするだけですし、その後仮に値上がりしても恩恵を受けられなくなってしまいます。

解約時期はあくまで、当初お金を貯める目的にあったライフイベントなど、お金が必要になったら。余暇資金、住宅購入資金、車の購入資金、子どもの教育資金、老後資金など、ライフイベントでは、まとまったお金が必要になるケースが多くあるはずです。そのつど、かかる費用分だけ資産の一部を売却して活用するとよいでしょう。

また、売却する際は何度かに分けて行うと、購入時と同様、平均売却価格が安定します。「あの時売っておけばよかった」と思うことも少なくなるでしょう。

20年後の解約時に暴落があったら…課税口座に移して運用を続けよう

つみたてNISAの非課税投資期間は20年。2018年にスタートした分は2037年まで非課税で運用できます。では、2037年に今回のような暴落があったらどうしますか。まだ先のことでわからないかもしれませんが、絶対にないとはいえませんね。

20年後にもし暴落があっても、つみたてNISAの資産は売らずに運用を続けましょう。20年経過後は、非課税ではなくなってしまいますが、資産は課税口座に移るだけなので、運用しつづけることができます。あとは頃合いを見計らって、値を戻したところで売ればいいのです。

つみたてNISAで投資をしていることは、忘れるくらいがちょうどいい

資産全体の無リスク資産とリスク資産の比率を意識しておけば、暴落があっても慌てず、じっくりとつみたてNISAでは長期・積立・分散投資を続けるのがベスト、ということになります。普段はほったらかしでOK。つみたてNISAで投資していることを忘れるくらいで、ときどきチェックするくらいがちょうどいいでしょう。

相場の波で一喜一憂しないことが続けるコツ。長期でしっかりと資産運用をしていきましょう。

© 株式会社マネーフォワード