20歳・ウッドの快投は歴代最高のピッチングだった

1998年5月6日に20歳の新人右腕ケリー・ウッド(当時カブス)が1試合20奪三振の快投を披露してから22年が経過した。ウッドはメジャーデビューから5度目の登板となったこの試合で打者29人に対して被安打1、奪三振20、与死球1の完封勝利をマーク。メジャー最初の4先発で防御率5.89だった右腕の快投は球界に大きな衝撃を与えた。完全試合やノーヒッターを達成したわけではないが、この試合のウッドのピッチングは「歴代最高」と言っても過言ではない。

この試合はカブス先発のウッドだけでなく、対戦相手のアストロズ先発のシェーン・レイノルズも8回10奪三振2失点(自責点1)の好投を見せ、わずか2時間19分で終了。カブスが2対0で勝利した。アストロズ打線にはジェフ・バグウェルとクレイグ・ビジオの殿堂入りコンビのほか、強打者モイゼス・アルー、当時好調だったデレク・ベルやリッキー・グティエレスらが名を連ねており、この豪華メンバーから20個の三振を奪ったウッドの快投は驚異的だ(唯一の安打を放ったのはグティエレス)。ちなみに、アストロズの4番を打っていたのはヤクルトや巨人でもプレーしたジャック・ハウエルだった。

先発投手のパフォーマンスを評価するためにセイバーメトリクス専門家のビル・ジェームスが考案した「ゲーム・スコア」という指標がある。

・スタートは50ポイント
・1アウトでプラス1ポイント(1イニングで3ポイント)
・5回からは1イニングを投げ切るごとにプラス2ポイント
・1三振でプラス1ポイント
・1安打でマイナス2ポイント
・1四球でマイナス1ポイント
・1自責点でマイナス4ポイント
・1非自責点でマイナス2ポイント

上記のルールに従って計算されるこの指標で、ウッドは9イニングの試合では歴代最高となる105を記録しているのだ。つまり、ウッドの快投は、少なくともこの指標に従えば、その他の投手による完全試合やノーヒッターを上回る快投だったということになる。ジェームスがボックススコアの投手成績を用いて計算していた都合上、与死球が計算式に含まれていないが、仮にウッドの与死球1をマイナス1ポイントで計算したとしても、ゲーム・スコアは歴代1位タイの104である。

たとえば、マックス・シャーザー(ナショナルズ)は2015年10月3日のメッツ戦で許した走者がエラーによる1人だけという17奪三振のノーヒッターを達成したが、このときのゲーム・スコアは104だった。ウッドの105に並ぶためには「18奪三振かつ無四球でのノーヒッター」が必要であり、記録の更新は極めて難しいと言える。これだけのピッチングをメジャーデビュー5試合目の20歳の右腕が成し遂げたのだから、そのインパクトの大きさは計り知れない。

ちなみに、延長戦も含めると、1920年5月1日の試合で26イニングを完投したジョー・エシュガー(ボストン・ブレーブス)とレオン・カドーア(ブルックリン・ロビンス)の両投手がそれぞれゲーム・スコア153、140で歴代1位と2位にランクインしている。

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