失政連発で応援団からも批判続出!高まる玉城デニー知事への不信|石本譲二 武漢コロナウイルス対策だけでなく、猛威をふるった豚熱への対応も後手後手で、遂に県政与党や応援団からも批判が殺到!“メディア受け”する基地問題では張り切るが、肝心の代案もなくパフォーマンス一色。停滞する経済、深刻化する子供の貧困などに対しても何ら対策を示さず、一方で業者との不適切な関係疑惑が――もはや知事失格の烙印を押さざるを得ない!

危機管理の未熟さ、人口比率では東京都を上回る感染者数

世界的規模で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大は、沖縄でも深刻だ。そして、県民が危惧の念を強めているのは、玉城デニー知事のもとでの危機管理の未熟さである。

県内では2月14日に沖縄本島南部の60代女性が感染したと確認されたのを皮切りに、2月中に感染者が3人となったものの、その後は3月下旬まで1カ月も新たな感染者が現れなかった。それに気を許したのだろうか。2月27日にいったんは中止や延期の方針を決めた県主催のイベントを、3月13日には必要な対策を講じることを条件に、開催する方針に緩和してしまっていたのだ。

3月下旬以降に感染者が急増したことを受けて、4月4日に再び中止・延期の方針を決めた。

迷走する玉城デニー県政のもとで、いまや沖縄県では4月15日現在ですでに感染者の数は86人と、人口比率では東京都を上回る数だ。県内の離島のなかには、医療体制が十分でないところも多い。

日本の安全保障政策にも直結する重要な選挙

その沖縄では、5月29日告示、6月7日投票という日程で沖縄県議会選挙が行われる。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために集会を開くことができず、各陣営とも盛り上げに四苦八苦しているが、地方の一県議選と片づけるわけにはいかない重要な選挙である。

政府が進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり反対の姿勢を続ける玉城デニー知事の任期の折り返しにあたり、中間評価という意味合いがあるからだ。日本の安全保障政策にも直結する重要な選挙と位置づけることができる。

選挙の焦点は、玉城知事の県政を支える共産党や社民党、さらに沖縄のローカル政党である社大党など革新各党からなる「オール沖縄」勢力に対し、県政野党の自民党や公明党などが過半数を奪うことができるかどうかだ。

沖縄県議会の定数48のうち、現在は2議席が欠員である。県政与党は現在、社民・社大・結連合が11、おきなわが8、共産が6など合計26で過半数を握る。

一方、県政野党は、自民が14、公明が4に留まる。また、これまで県議会で自公と協力関係にあった維新は、下地幹郎衆議院議員がカジノ誘致をめぐり中国企業から現金を受け取っていた問題で維新を除名されたことを受け、2人の現職県議も維新を離れ、新たに無所属の会という会派を立ち上げている。自民・公明にこの2人を合わせても、現在は20。県議会で過半数を奪うには、5議席増やさなくてはならない計算になる。

沖縄経済にとって未曾有の危機!それでも遅い対策

沖縄県議選の争点はなにか。地元紙はいつものように、辺野古移設問題が最大の争点だというが、やはり新型コロナウイルスへの対応が、県民にとっても最も気になる問題であるはずだ。

その点では、玉城デニー県政による危機管理に疑問符がつくのは冒頭にお伝えしたとおりだ。3月には那覇空港の第二滑走路の供用がスタートしたが、那覇空港を発着する海外路線230便がすべて運休となってしまっている。

観光を主力産業とする沖縄経済にとって未曾有の危機であり、ホテルやタクシー、飲食など関連産業は深刻な打撃を受けているが、その対応策ともなると県の動きは遅い。

豚熱への対応でも後手後手

沖縄では、この新型コロナウイルスの感染拡大よりも前の今年1月に、豚の感染病である豚熱が猛威を振るった。最初に豚熱が発生したうるま市の農場から県への通報が非常に遅れたため大きな被害をもたらしたとされるが、県の対応もまずい。

県内の養豚業者からは早期にワクチン接種を望む声が寄せられたが、ワクチンの接種を決めたのは2週間以上経ってから。県政与党からも「遅い」の声が上がった。

昨年10月には、沖縄県民の心の拠り所である首里城が火災で焼失したが、未だに火災原因が明らかになっていない。火災原因の特定は、県警や那覇市消防本部がすべきことだが、両者は「火災原因はわからない」とすでに匙を投げている。

そもそも首里城の管理責任は県にあり、玉城知事は「再発防止策を取りまとめる」とたびたび述べているが、火災原因も分からずに、どうやって再発防止策を練るというのだろう。

県民の生命や健康より支持母体の意向を重視するのか

玉城知事の優柔不断ぶりが厳しく問われている課題がある。沖縄本島北部の基幹病院の整備計画だ。

北部の名護市には、大規模病院として県立北部病院と北部地区医師会病院がある。二つの病院ともに慢性的な医師不足に悩まされ、医師が常駐しない診療科が増えてきたことから、二つの病院を統合し新たな基幹病院を設置する方針が決まったが、これに反対するのが県職員労組だ。

統合によって、県立北部病院の職員のなかには県内の他の県立病院へと転属を求められることが予想されるからだ。

県職労は、玉城知事を支持する有力母体である。そのせいであろう、玉城知事は判断を先延ばしして、いつまで経っても整備に向けた基本合意書に同意しようとしない。これには、県民の生命や健康より支持母体の意向を重視するのか、と県民の批判が高まっている。

「移設反対が県民の総意」は本当なのか?

地元紙が最大の争点だとする辺野古移設問題についても触れておこう。

この問題をめぐっては、昨年2月に辺野古沖の埋め立ての是非を問う県民投票が行われた。県内の学生らが中心となって始まった県民投票の実施を求める署名活動に、革新各党や地元紙などが乗って実施され、「埋め立てに反対する」が72%を得た。

これをもって地元紙などは「移設反対は県民の総意」とするキャンペーンを展開したが、そもそも投票率は有権者の52%あまりに過ぎない。移設をやむなしとする県民の多くが投票に行かなかったためだと見られている。有権者全体を見ると、「埋め立てに反対」としたのは38%に留まっているのだ。これをもって移設反対が県民の総意とは言えないだろう。

沖縄では、辺野古移設についてやむなしとの立場を表明しにくい雰囲気がある。そんなことをすれば、マスコミの吊し上げに遭ってしまうからだ。2013年に当時の仲井眞弘多知事が辺野古沖の埋め立ての承認に踏み切った途端、マスコミから「裏切り者」と総攻撃を受け、翌年の知事選で敗北してしまったことはまだ記憶に新しい。

深刻な子供の貧困率

ただ、ここ数年、沖縄の県民の間で、辺野古移設問題への関心が薄れてきているのも事実だ。沖縄県が昨年3月に公表した県民の意識調査では、県が重点的に取り組むべき施策として、これまで調査のたびにトップだった「米軍基地問題の解決促進」を抑えて新たにトップに挙げられたのは、「子供の貧困対策の推進」だった。2位を16ポイント近くも引き離してのトップである。

離婚率や一人あたりの県民所得、非正規雇用率といった指標が全国で最悪の沖縄県は、子供の貧困率も全国で最も高い。前知事の翁長雄志氏は在任中に、「基地問題に労力の8割から9割を割いている」と発言したが、そんな翁長氏や玉城デニー氏のもとで、基地問題ばかりフレームアップする県政が続くことへの不安感は高まっている。

単なるパフォーマンスで代替案を示さない

それは、知事を支えるはずの県職員とて同じことだ。

「辺野古関連の訴訟は、勝算がないのを承知でやっていて、単なるパフォーマンスと化していました。辺野古反対を言うばかりでなく代替案を示してもいいのではないかと思いますが、知事からはそうした指示が降りてくるわけでもない。辺野古移設問題を担当する知事公室以外の部署では、職員のモチベーションが上がりようがありません」(県庁幹部)

3月26日には、最高裁がまたもや辺野古移設問題をめぐり沖縄県の訴えを斥けた。すでに翁長県政時代に、仲井眞元知事による埋め立て承認を取り消したものの、国に違法だと訴えられて最高裁で敗訴。今回は承認を撤回するという県の措置に対する裁判だったが、あらためて敗訴したわけだ。

これには玉城デニー知事の応援団である地元紙の「沖縄タイムス」も、「県は敗訴が確定すれば戦略変更を迫られる」と指摘する(3月21日付記事)。

近く埋め立て予定地にある軟弱地盤を改良するための設計変更が防衛省から県に申請される予定だが、沖縄県はこれを認めない方針だから、またもや国と沖縄県の対立が続くことになる。本土の読者のなかには「またか」と思われる方もいるやもしれない。じつは沖縄でも、多くの県民がこの問題よりも重要な課題があると認識するようになっているのだ。

県民が失った額は2670億円

また、国との対立が続いた影響ということであれば、翁長県政とそれを引き継いだ玉城デニー県政の間に沖縄振興一括交付金が大幅に減額になったことも見逃せない。

いわゆるヒモ付きではなく、県や市町村が自由に使途を決めることができる一括交付金は、仲井眞元知事が国に認めさせた独自の制度で、仲井眞県政の最後の年の2014年度には1759億円あったが、2020年度予算では1014億円にまで減額した。この6年間で県民が失った額は、2670億円にもなる。

一括交付金の減額によって、市町村のなかには公園の整備など予定していた事業の中止に追い込まれたところもあり、暮らしに直結する影響が出ている。

大型会議施設も鉄道敷設計画も全く前進せず

先ほど指摘した那覇空港の第二滑走路も、それまで滑走路が1本しかなかったために空港の発着枠は限界ギリギリで、夕方の混雑時間帯は上空で飛行機が旋回して着陸の順番を待つことが常態化していたが、第二滑走路の完成で、発着枠はこれまでの1・8倍の24万回となった。

第二滑走路は当初、工期は7年とされていた。それを仲井眞元知事が在任中に菅義偉官房長官に直談判して、5年あまりに短縮させたのだ。観光振興には早期整備が欠かせないとの判断からで、第二滑走路の整備は仲井眞県政が残した最大の功績のひとつである。

では、翁長・玉城の両県政で、新たに大型の事業がスタートしただろうか。翁長県政は沖縄本島東海岸の与那原町での大型会議施設のMICEの建設を肝煎り事業として掲げていたが、未だに予算化のメドも立たない。仲井眞県政時代に検討作業が本格化していた本島を南北に循環する鉄道敷設計画の事業化も、まったく前進していない。

「新型コロナウイルスの感染が拡大するまでは、観光を牽引役に沖縄経済は絶好調でした。そのため、多くの県民は意識していませんが、新規の大型事業が翁長・玉城県政ではまったく進んでいません。将来を見越して新規事業を進めるのが行政というものです。いまの好景気は仲井眞県政時代の種まきが実を結んでいるわけですが、こんな調子では10年、20年先の沖縄はどうなるのか」(前出の県庁幹部)

クリーンなイメージの裏で業者との不適切な付き合い

クリーンなイメージで見られがちな玉城知事だが、業者との不適切な付き合いも指摘されている。玉城氏が自らの政策を推進するために立ち上げた「万国津梁会議」の運営を支援する業務を受託した業者と、契約の前日に会食していたことが発覚したのだ。しかも、この業者の沖縄事務所長は、長く玉城氏の支援者でもあった。

県議会での追及に、玉城氏は私的な会食であり、支援業務については話をしていないから問題ないとの答弁を貫いたが、これには玉城応援団の地元紙もさすがに「癒着を疑われるのも当然だ」との識者のコメントを掲載せざるを得なかった。

こうした玉城知事の失政の数々をどこまで野党の自民党や公明党が攻め切れるのか。2年後には県知事選挙も控えており、沖縄をめぐり、政治が再び熱くなってきた。(初出:月刊『Hanada』2020年6月号)

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石本譲二

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