DJI、産業用フラッグシップ機「MATRICE 300 RTK」と初ハイブリッドカメラ「ZENMUSE H20シリーズ」発表

MATRICE 300 RTKにZenmuse H20とH20Tを装着

DJIは、産業用ドローンプラットフォームである「Matrice 300 RTK(以下:M300 RTK)」と、ハイブリッドマルチセンサーカメラ「Zenmuse H20シリーズ」を発表した。2020年5月中旬より出荷が開始予定。

同社は、このオールインワンのハイテクソリューションを開発することで、これまでの作業や業務領域の可能性を広げ、空中での正確な点検、調査、データ収集ミッションを実現するという。DJIコーポレートストラテジー担当シニアディレクターのクリスティーナ・チャン氏は、次のようにコメントしている。

M300 RTK飛行プラットフォームとZenmuse H20カメラシリーズは、法人のお客様により安全でスマートなソリューションを提供します。このソリューションは、産業用UAVソリューションの基準を刷新し、公共安全、警察・消防、エネルギー、測量やマッピング、さらには重要なインフラの点検全体の運用を大幅に強化します。

DJI MATRICE 300 RTK

M300 RTKは、最新の航空技術、高度なAI機能、6方向検知と測位技術システム、UAV状態管理システム、55分間という長時間飛行を組み合わせた同社初の製品。AES-256暗号化と保護等級IP45の耐候性筐体に加えて、新しいOcuSync Enterprise伝送システムが組み込まれたこのドローンプラットフォームは、3チャンネルで1080p動画伝送 、最大伝送距離15kmを実現。また、最大3つのペイロードを同時にサポートし、最大2.7kgの積載能力を備えている。

ShellのRobotics Theme LeadのAdam Serblowski氏は、次のようにコメントしている。

石油およびガス業界で働く私たちのチームにとって、パフォーマンスと安全性は必須です。DJI Matrice 300 RTKは、既存のDJI製品の理想的なアップグレードであり、ドローン利活用のメリットをさらに高めるものです。同社との生産的なパートナーシップは、エネルギー産業における安全性の向上を継続的に支援するものです。

■より効率的なデータ収集を実現する高度なインテリジェンス

M300 RTKとZenmuse H20シリーズのソリューションを組み合わせることで、2種類のインテリジェントなデータ収集方法が実現した。

・スマートピン&トラック

調整されたミッションでの空撮知能の同期を強化するインテリジェント機能。ピンポイントは、ターゲットとなる対象物にマークをつけ、正確な位置データをもう1人の操縦者に即座に共有したり、必要に応じてDJI FlightHub経由で地上チームに情報共有することができる機能。スマートトラックは、離れた距離からでも動く対象物を自動で検出し、追跡しながら対象物の動的な位置をリアルタイムで同期できる。

・スマート点検 送電線、鉄道、石油やガスプラントの点検といった定期的なデータ収集ミッションを最適化するために開発された新しい機能セットで、次に挙げる新機能で構成されている。

ライブミッション記録は、リアルタイムで自動ミッションのデモ飛行を記録する。AIスポット確認は、毎回正確に同じ位置からデータを収集できる機能で、自動ミッションの精度を大幅に改善する。デモ飛行中撮影したウェイポイント点検ミッションの写真を記録後、操縦者や点検者は特定の対象物にマークをつけることができる。

次回の自動飛行ミッション中に、AIアルゴリズムがマークされた被写体と現在のライブビューを比較することでカメラの方向を補正し、正確で矛盾のないデータの取得が可能。Waypoint 2.0は、最大65,535個のウェイポイント(通過点)を設定できるよう改良された飛行計画システムで、連続した一連のアクションやサードパーティー製ペイロードなどに対応している。

■航空機レベルの状況認識力

現在運行されている航空機にヒントを得たM300 RTKには、PFD(プライマリーフライトディスプレイ)が搭載され、リアルタイムの飛行情報と航行情報を1つのディスプレイに統合して表示。

M300 RTKのPFDは、高度や速度などの標準テレメトリデータに加えて、飛行中に近くの障害物を視覚化する障害物データを提供するため、操縦者は必要に応じて飛行軌道を調整することができる。こうした機能強化により、操縦者は機体を追跡しながら、同時に状況認識力をさらに高め、安心・安全な飛行を確保することができる。

■様々な制御を、指先だけで

DJIの産業用ドローンプラットフォームに新しく導入された新機能、M300 RTK専用の高度なデュアルオペレーターモードは、安全性、信頼性、柔軟性を高めながらミッションの遂行を可能にするマルチパイロット制御プロトコル。M300 RTKを2人の操縦者が制御すると、各操縦者に同等のアクセス権を与えて飛行制御の優先順位を取得する。

優先順位の切り替えは、同社スマート送信機(業務用)の一連のアイコンで表示。もし1人の操縦者に問題が発生したり、あるいは送信機のバッテリー切れや接続不良が発生した場合、もう一人の操縦者がM300 RTKおよびそのペイロードを完全に制御できるようになる。また、新しい操縦者を訓練する場合、教官/主操縦者パイロットは必要に応じて、安全に飛行制御を引き継ぐことができる。

■安全性と信頼性の向上

M300 RTKには、安全性と信頼性が強化され、新機能が追加されている。

  • AES-256暗号化:コマンド&コントロールアップリンクおよびビデオ送信ダウンリンクの安全なデータ送信を実現
  • AirSense(ADS-Bテクノロジー):空域の安全性を強化
  • 衝突防止ビーコン:特に低照度環境下での機体の視認性を向上
  • IP45保護等級および自己発熱型バッテリー:悪天候条件用(-20 to 50°C)
  • 6方向検知&測位技術システム:水平方向に最大40 mの検知範囲を実現し、DJI Pilotアプリで機体の検知動作をカスタマイズするオプションも用意

現代の旅客機と同様に、M300 RTKは統合型UAV状態管理システム(UHMS)を導入し、フリート(航空隊)のメンテナンスを最適化。機体のフライトデータを初回から全て記録し、さらにドローンのハードウェアとソフトウェアの両システムを利用して現在の機体性能を把握した上で、今後のメンテナンスの判断材料にするという。この新しいシステムを活用することで、機体の重要システムすべての概要を確認し、フリート全体でファームウェア更新の管理、飛行時間の追跡、飛行任務を確認できる。

DJI Zenmuse H20シリーズ

Zenmuse H20

DJIは、M300 RTKが規定する新しい基準に合わせて、ミッションの効率を劇的に改善する全く新しいカメラペイロードを発表した。Zenmuse H20シリーズは、同社初となるハイブリッドマルチセンサーソリューションを実現。効率的な時間管理と多層的な視覚にすぐにアクセスできることが重要な産業用途および公共安全ミッションのため、あらゆる映像を撮影できるようになるという。また、IP44保護等級に分類され、どの方向の水しぶきからも筐体を保護する。

Zenmuse H20T

Zenmuse H20シリーズには2つのバージョンがある。H20は、20MPのハイブリット光学23倍ズームカメラ、12MP広角カメラ、3m~1200mの距離をカバーするレーザー距離計を搭載したトリプルセンサーで、H20Tは640x512放射分析サーマルカメラを加えたクアッドセンサー。高い熱感度と30 fpsの動画解像度により、操縦者は人の目では見えないものを見ることができる。

■スムーズな対話のための統合型ユーザーインターフェイス

操縦者が一度に複数のセンサーを操作できるようにするため、付属のDJI Pilotアプリのインターフェイス(UI)を完全に見直す必要があり、新しいUIでは、わずか数回タップするだけでカメラをすばやく切り替えることができる。また、広角カメラまたはサーマルカメラの映像上でズーム視野(FOV)をプレビューできるようにすることで、ズームインとズームアウト処理を簡単に行うことができる。

■クイック撮影モードによる最大級の柔軟性

Zenmuse H20シリーズは、マルチセンサー統合UIデザインにより、広角カメラ、ズームカメラ、サーマルカメラをスムーズに切り替えることが可能。さらに、一刻を争うミッションで使用する場合に最大級の柔軟性を実現する機能も搭載している。高解像度グリッド写真は、カスタムグリッドを使用することで、定義付けされた被写体の詳細な画像を一度で撮影することができ、画像は後で詳しく確認するために保存することが可能。

  • ワンクリック撮影:カメラビューを手動で切り替えたりミッションを繰り返したりする必要なく、最大3つのカメラで動画または写真を同時に撮影
  • 夜景モード:照度条件が最適でなくても、よりクリアな可視性を得ることができる

なお、推奨基本製品構成は、Matrice 300 RTK + Zenmuse H20T + DJI Enterprise Sheild(一年間)となり、機体本体参考価格:約税別95万円(バッテリーと充電器は含まれない)。
Zenmuse H20シリーズ参考価格は、約45万円からである。バッテリーなどのアクセサリー類は、基本製品構成には含まれていない。

▶︎DJI


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