コロナ危機最前線【雇用】減給か退職迫られた 自粛続き、求人取り消しも

多くの求職者が詰め掛けるハローワーク宮崎。新型コロナウイルスの影響で足元の雇用情勢は揺らいでいる=4月28日午後、宮崎市柳丸町

 新型コロナウイルス感染拡大は県民の暮らしと経済に大きな影響を及ぼしている。危機に直面する現場を取材し、県民の声を伝える。
 今月初め、宮崎市柳丸町のハローワーク宮崎。求人検索のパソコンの前に5歳の女の子が座っていた。隣で熱心に画面を見つめる30代の母親は、アルバイトとして勤めていた同市の繁華街「ニシタチ」のクラブが休業。収入が途絶えた。
 昼の仕事を探しても育児と両立できる求人は見つからない。娘の保育園は登園自粛で、家で過ごす時間が増えた。「食費や光熱費がこれまで以上にかかっている」。焦りと不安が募る。
 4月末~5月初めに同ハローワークを訪れると、外出自粛の中も連日のように「満車」の看板が掲げられ、失業手当の手続きや求人窓口がある1階は、職を求める人たちであふれていた。
 同市の40代女性は「失業するとは思っていなかった」。勤務先の同市のアパレル店は3月半ばに閉店。県外の本社がコロナの影響による業績悪化で倒産したためだ。「資格もキャリアもなく、どうすればいいのか…」と途方に暮れた。
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 長引く自粛で経済が停滞し、足元の雇用情勢は揺らいでいる。
 宮崎労働局によると、4月の新型コロナに伴う労働相談は2011件(速報値)と、3月の2倍超に膨らんだ。「4月に入り、相談の質も変わった」。ハローワーク宮崎の清水由美所長は労働者が寄せる声の内容から、状況の悪化を感じ取っていた。3月まで多かったのは「漠然とした不安」。その不安は現実になり、「派遣先がなく辞めるしかない」「減給か退職かを迫られた」と切迫感が増した。
 製造やリース、警備業、医療・福祉…。清水所長は「リーマンショック時より影響を受けている業種は幅広い」。人手不足などを背景に高まっていた企業の採用意欲はしぼんだかのように、求人を取り消す動きも出始めた。
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 コロナ禍は、失業の長期化も招いていた。
 ハローワーク宮崎で4歳の娘を連れた宮崎市の40代女性は、転職して子どもとの時間を増やそうと昨年末に会社を退職。簡単には再就職先は決まらず、「コロナで面接できない」と断られたこともあった。
 今年1月に失業した同市の30代男性は職を見つけられず、失業手当で生活。それも家賃や光熱費に消え、足りない分は友人から借金して食いつなぐ。「こんな状況がいつまで続くのか」。誰もが出口を見通せずにいる。

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