バラモン凧勇壮に 五島市・鬼岳 空を見上げて笑顔

こいのぼりが連なったバラモン凧の糸をつかむ子どもたち=五島市、鬼岳

 長崎県五島市の鬼岳で6日、地元伝統の「バラモン凧(だこ)」が勇壮に空を舞った。子の健やかな成長を願い、厄を払う縁起物。新型コロナウイルス禍が収束し、子どもの元気な声が街中に響くように-。ベテラン愛好家たちは、そんな願いを込めて糸を手繰った。

 正午すぎ。山頂近くの駐車場に車を止めると、空から「ブーン」と独特の音が聞こえた。凧の上部に弓状の部品が付いていて、弦の部分が風を受けてうなるのだ。ハチの羽音のようにも聞こえ、複数の凧の音が重なると、音が“降って”くるような迫力がある。
 山頂にいたのは「五島ばらもん凧揚げ振興会」(川口進会長)の4人。例年なら絶好の北風が吹く春と秋に、20人近くが集まり凧揚げ大会に興じるが、今年は新型コロナ禍で自粛。それでも川口会長は「五島を元気づけたい」と、人数を絞って凧を揚げた。
 バラモンは五島の方言で「元気な、活発な」という意味。凧には鬼と戦う勇ましい武士が描かれ、五島では男の子の初節句に祖父らが贈る風習がある。
 富江町の今村光洋さん(70)は15年ほど前に趣味で凧作りを始め、50~60枚を制作。この日も風の強さや向きを見定めながら、手製の凧を上空60メートル以上へ軽々と揚げた。「ブンブン鳴る音がいい。孫が小さい時には、よく一緒に揚げたよ」と懐かしんだ。
 他にも「祈“コロナ”撲滅」の垂れ幕を付けた凧や、15匹のこいのぼりを連ねた凧など計8枚ほどが空を舞った。3人の息子を連れた同市の公務員、上川尚孝さん(35)は「ちょうど良い時に来た。兄弟仲良く育ってほしい」と子どもたちに笑みを送った。
 鬼岳の青々とした芝生では、数組の家族がシートを広げてくつろいでいた。「3密」とは程遠い空間。子どもたちはまぶしそうに、そしてうれしそうに空を見上げた。

「祈“コロナ”撲滅」の垂れ幕を付けたバラモン凧も揚げた

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