《コロナと向き合う (8)》弱者目線 支援迅速に 群馬弁護士会長・久保田寿栄さん

 新型コロナウイルス感染拡大で雇い止めや収入減などが広がり、国民生活に甚大な影響を及ぼしている。群馬弁護士会の久保田寿栄会長(55)は、社会的弱者に寄り添う視点を欠かすべきでないとし、事業者への支援措置の拡大が必要だと強調する。

―感染拡大で弁護士への相談内容に変化は。
 休業要請で、多くの事業者から売り上げの減少や資金繰りの不安が出ている。限界に近づいている業者も増えており、早急な支援を行う必要がある。今後、DV(ドメスティック・バイオレンス)や家庭内における虐待の増加、悪化も懸念される。

―給料の減少や整理解雇の不安も高まっている。
 雇用主の判断で出勤しない場合は労働基準法に基づき、休業手当(平均賃金の60%以上)を請求できる。企業には雇用調整助成金制度(日額上限8330円)がある。整理解雇の問題については、解雇のハードルは高く、その有効性を争うこともできる。

―休業要請に伴う補償について、支援金や協力金が全国の自治体に広がる。
 経済的支援は事業者を守るためにも必要だ。県が「事業継続支援金」として1業者当たり20万円の支給や最長7年間の利子補給を決めたことは評価できる。しかし、本来は国の責務であり、持続化給付金や雇用調整助成金制度などの現在の支援策だけでは足りず、資金繰り支援や税自体の減免など事業者へのさらなる支援措置の拡大が必要だ。

―国民に対し、政府は一律10万円の給付を決めた。
 申請方式になっていることが大きな課題。ネットカフェで生活している人や認知症患者など、申請が難しいとされる人たちにも、きちんと支給が行き届くか。世帯主にまとめて振り込まれることで、DV被害者などが受け取れるかといった懸念が生じている。社会的弱者の目線を忘れずに、迅速かつ適切な給付を進めてほしい。

―インターネット上では感染者やその家族の情報を特定し、「さらす」行為も問題となっている。
 個人の情報をむやみにSNSで公開すると、プライバシー権の侵害となる。相手の社会的地位を低下させた場合、仮に本当のことだったとしても公共性や公益性がないと判断されれば名誉毀損(きそん)として損害賠償責任が問われる。誰もが相手の立場に立って考え、不当な情報発信を直ちにやめることを求めたい。

 くぼた・とししげ 伊勢崎市(旧赤堀町)出身。1998年に弁護士登録。今年4月から現職。前橋高―中央大法学部卒。前橋市

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