フル稼働で市民の生活支える 緊急宣言下 長崎のスーパー ニーズ変化に対応

レジ待ち客の多くは赤いテープの目印に従って並んでいた=長崎市浜町、S東美

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言下、多くのスーパーが休業せず、市民の生活を支えている。長崎市浜町のS東美は営業時間も通常通りフル稼働。地下の食料・日用品売り場を大型連休中に訪ねると、消毒や混雑軽減を徹底しつつ、顧客ニーズの変化に対応していた。

 「いらっしゃいませ」。飛沫(ひまつ)感染防止用のビニールカーテン越しにレジ担当が笑顔を送る。声を聞き取りづらい年配客には顔を近づけて説明する。客の列が途切れる間を見計らい、小まめに手指や台を消毒。あちこちに積み上がる買い物かごや精算機を巡回スタッフがアルコールで拭いていた。
 大型連休中は県の要請もあって周辺の店舗が軒並み休業。市中心街の人通りに比例し、来店客数は前年同期比で2割減った。それでも正午前後には混み合っていた。
 レジ前には赤いテープを張り、待ち位置を指定。「売り場が狭いので、間隔は1メートル取るのが精いっぱい。これ以上だと商品棚まで列が延びてしまう」という。マスクを付けず大声でしゃべる客もいたが、入店拒否はしない。多くの客は入り口に置かれた消毒スプレーを使い、レジ待ちの間隔確保にも従っていた。「ほとんどのお客さまが協力的。不安もあるはず。しっかり対策を取っているので、感謝の言葉を掛けてもらえることもある」。レジ担当の柿山陵子さん(55)はこう話す。
 当然、不安は不特定多数を接客するスタッフ側にもある。全員が出勤前に必ず検温し、バックヤードに掲示されたチェック表に健康状態を書き込む。会社から家族用も含めてマスクが支給され、柿山さんは「誰からもウイルスをもらわない、うつさないと、みんなで誓い合っている」と職場の空気を明かす。
 新型コロナの影響は商品棚にも見て取れる。パスタの麺やソース、ホットケーキやお好み焼きの材料の生産が追いつかず欠品が目立つ。全国的な外出自粛に伴う「巣ごもり消費」の余波だ。米や食パンの売り上げも伸びている。
 一方で、主要商品の総菜は、トングを使うばら売りをやめたため、売り上げが激減。代わりに100円均一の少量パックを始め、酒類と併せて「家飲み」や「オンライン飲み会」を薦めると、好調だという。
 現金のやりとりを伴わないキャッシュレスも推奨。消費税還元キャンペーンの追い風もあって、S東美の決済の半分を電子マネーなどが占めるようになった。
 スーパーは世相を表す。運営会社東美の佐々木達也社長は「お客さまの期待に応え続けられるよう努める」と語る。

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