「そうだ 京都、行こう」―。おなじみのキャッチフレーズで知られるJR東海の観光キャンペーンがピンチだ。新型コロナウイルスの感染拡大により、観光は自粛へ。「京都、行こう」と呼びかけられない今、JR東海はどうしているのか。(共同通信=関かおり)
6%。
これは、ゴールデンウイークを含む4月24日~5月6日の東海道新幹線や、JR東海の在来線特急の利用客を前年と比べた割合だ。新幹線は前年比94%減、在来線特急は96%減。9割以上減っている…。これまで好調に利用客を伸ばしていた東海道新幹線。春に予定されていた臨時便はばんばん取りやめとなり、とうとう定期便も運転計画見直しが発表された。確かに、もう京都行こうとか言っている場合ではない。
「そうだ 京都、行こう」キャンペーンは1993年に始まった。印象的なキャッチフレーズや京都の名所の映像がCMで人気となり、これまで102本を放映。これに加えて、東海道新幹線品川駅の開業効果もあり、旅行会社が提供する新幹線のチケットを含む商品で、首都圏から京都を旅行した利用客は2003年からの10年間で7割以上増えた。今年1月にも早春の石庭をテーマにした新CMを公開し、旅行商品も売り出していた。
本来なら、春は京都旅行の人気シーズンだ。しかし、4月に京都府と京都市が感染防止のため京都観光の自粛を要請。キャンペーンを担当する同社観光開発グループの大江紀洋(おおえ・のりひろ)グループリーダーは「これほど全方向が打撃を受ける事態は経験がない」と頭を抱えた。
「でも、長い目で見れば人類は天然痘もスペイン風邪も乗り越えた。知恵の出しどころだ」
運営するホームページなどに「お知らせ」として「自粛要請に従っていただきますようお願いいたします」と記載した。その上で、見頃になった花の写真をアップしていたコーナーに力を入れ始めた。松尾大社のヤマブキや、本満寺のボタン。見た人からは「今は写真で我慢」「落ち着いて行ける日を楽しみにしている」とのコメントが寄せられている。
さらに、東海地方の写真や映像をインスタグラムで公開。「いいね!」をした人の中から抽選でひつまぶしやお茶が当たるキャンペーン「画面上で旅気分」も始めた。「外出自粛が続く中、せめて心を癒やしてほしい」
現在、京都を含む観光産業は新型コロナウイルスの感染拡大で甚大な打撃を受けている。観光客を呼び込むはずだったイベントもほぼすべてが中止に。倒産する旅館もある。いつまで続くのか先行きが不透明な中、終息後を見据え、大江さんらは沿線自治体と連携して観光需要を呼び戻すための取り組みができないか協議も進めている。ただ、「特効薬はない」として、地道に挽回していく考えだ。
同社のホームページに公開された「お知らせ」は、こう結ばれている。
「京都旅行をゆっくり楽しめる日が早く戻るように、と願いを込めて」