長崎の職人が「イヤーエイド」開発 マスク負担軽減 大村・銀職庵水主の中山さん 革職人の技術生かし

工房でイヤーエイドを作る中山さん=大村市、銀職庵水主

 長崎県大村市水主町1丁目の銀職庵水主(ぎんしょくあんかこ)の筆頭職人、中山智介さん(40)が、マスクを着用した際の耳への負担を軽減する革製品「イヤーエイド」を開発し、希望者に無料で配布している。
 普段は財布といったフルオーダーの革製品などを手掛ける中山さん。国内最大級のレザープロダクトコンペティションで2年連続入賞を果たすなど、技術力も高い評価を得ている。
 だが、新型コロナ禍の影響で物産展などの中止が相次ぎ、知り合いの職人や作家の中には廃業を選ぶ人も。自身の販売にも大きな影響が出ているという。
 「職人として何かできることはないか」-。そんな時によぎったのが、高校卒業後にカステラ工場で働いた経験。一日中マスクをして耳が痛くなっていたことを思い出し、負担を和らげる物が革で作れないかと開発に乗り出した。
 イヤーエイドは長さ19センチ、幅1.5センチの牛革製のバンド。マスクのひもを両端に通して後頭部で支えることで、耳に負担を掛けないという。材料の革は商品に使えない部分を利用し、子ども用も用意した。
 「通常は2年くらい耐久性などをテストした上で製品として売り出す。その意味で今回は自分の製品として売りたくなかった」と、無料で配布することに。300本を用意し4月15日から配布を始めたが、初日ですべてなくなった。
 評判は徐々に広がり、県外の養護施設から問い合わせがあったほか、取引先の業者からは材料提供の申し出も受けた。中にはお金を払う人もいるが、そうしたお金はインドネシアでフェースシールドの寄付活動に取り組む知り合いの職人に贈るという。
 先月は大村市に100本を贈った。今後は市内の医療機関や警察などにも寄贈したい考え。「新型コロナで人のつながりが分断されていると感じる。そんな中『頑張って』と声を掛けてもらうことが何よりの励み」と笑顔で話した。
 イヤーエイドは工房に直接取りに来られる人に配布している。作り方の動画も自身のフェイスブックで公開しており、プラスチック製の下敷きなどでも代用可能という。問い合わせは中山さん(電090.1975.7478)。

マスクのひもを通して耳への負担を和らげるイヤーエイド

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