2020年の年金改正で「年金」が増えるのはこんな人、受け取り方で損得が変わる!

年金改革法案が2020年3月に閣議決定されました。これによって2022年4月から年金制度が変わります。今回の改正で、かなり大きく得をする人がいます。そして、使い方によってはお得になる選択肢が増えました。つまり「自助」による部分が大きいと言うことです。

じっとしているだけでは、得になりません。どうすれば、いいのかを一緒に考えていきましょう。今回の改正で、重要なのは次の3つの項目です。

1.年金の受給開始年齢を75歳までに延ばす。
2.在職老齢年金の見直し。
3.厚生年金のハードルが下がる

では、何が変わるのかを説明します。


年金の開始年齢を75歳まで延ばす

これは、「年金開始が75歳になる」ことではありません。勘違いしないでください。現在、年金の支給年齢は、60歳から70歳までの間です。その間なら、年金の受け取りをいつでも開始することができます。

60歳から65歳になる前に受け取るのを繰上げ受給といい、65歳以後から70歳までに受け取るのを繰下げ受給と言います。繰上げ受給をすると、年に6%の減額になります。60歳まで繰り上げると30%の減額です。

一方繰下げ受給をすると、年に8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げると最大42%の増額になります。今回の改正では、60歳から70歳の受取期間だったのを、60歳から75歳までに延長するものです。

つまり、60歳から75歳までのどの時点からでも、年金の受け取りを開始できます。75歳までの繰下げした場合も、年に8.4%の増額になりますので、75歳から年金の受け取りを開始すると最大84%の増額になります。

これは年金の受け取る選択肢が増えるということです。年金の受給者にとっての不利になるものではありません。

75歳までの繰下げ受給は得なのか?損なのか?

では、75歳まで選択肢が広がったときに、これを利用すると得なのか?というと、微妙です。というのは、75歳まで繰り下げた時の損益分岐点は、11年10ヵ月後で87歳以上長生きすると得になります。

男性の平均寿命は約81歳です。そして90歳までは4人に1人は生きている確率になるのですが、さすがに87歳以上から得すると言われても残りは3年です。ちょっと微妙な感じです。

女性の場合は、平均寿命が約87歳で、90歳以上はほぼ半数近い人が生きているので、まあいいかな?と思ってしまいます。

老後資金がいつまで持つのかが問題!

いつまで生きているのかという問題と、もうひとつ大きな問題は、それまで公的年金を受け取らなくても生活ができるかです。年金を繰り下げている間の生活費は、働いて稼げるのか、老後資金を取り崩して使うのか。

さすがに70歳以降も働いている人はかなり少数でしょう。そうすると生活資金が足りなくなります。老後資金が潤沢にある人はいいかもしれませんが、そこまで余裕のある人は少ないのではと思います。

結論、繰下げ受給をどこまでするのが一番いいのか

私が考える「繰下げ受給」についてもっともよい方法は、「健康状態と老後資金の状態を考えながら決めればいい」と言うことです。年金の繰下げ受給は、結構融通がきく制度で、途中でやめることができるのです。

繰下げ受給を途中でやめる方法は、2種類あります。1つが、年金を一括で受け取る方法です。

たとえば、繰下げをしている途中で、要介護になってまとまったお金が必要になったときには一括で受け取ることができます。その場合には、65歳時点の受給額で計算されて、未支給分の年金を受け取ることができます。

もうひとつは、途中で年金の支給を開始する方法です。

たとえば、老後資金が足りなくなって生活費が心配になったとき、繰下げをやめれば、年金の支給が始まります。この場合には、その時点で繰り下げて増額になった分の金額が受け取れます。その増額された年金が一生涯続くのです。

ですので、繰下げ受給をする場合には、現在の状況を考えながら年金をいつ受け取るかを決めることができます。また、繰下げ受給をしている途中で死んだ場合には、未支給分として遺族が受け取ることができます。その場合にも、生命保険と同じようにみなし相続財産になるので、相続税の税制優遇があります。

在職老齢年金の見直し

60歳から65歳の在職老齢年金が28万円だったのが、2022年4月から47万円に引き上げられます。

在職老齢年金とは、会社に勤めながら年金を受け取っている人が対象です。給料と年金の合計額が月28万円を超えると年金の一部が停止するという制度です。一定額以上は年金の全額が停止になります。65歳以上については減額基準が月47万円に変わります。

今度の改定案では、65歳以上と同じ47万円に引き下げると言うことです。これは65歳までの人に取っては朗報です。あまり働き過ぎると年金が減ってしまうということを気にしながら働かなくても大丈夫ですから。

ただし、65歳以前の特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人なので、対象者が少ないです。
この制度が適用される人は、男性1957年4月~1961年4月1日、女性1957年4月~1966年4月1日の人だけです。

該当する人はとてもラッキーでしょう!

厚生年金のハードルが下がる

厚生年金の対象者を段階的に拡大されます。現在は、パートタイムや短時間で働く人で、従業員が501人以上会社は、厚生年金に加入する義務があります。それを2024年10月には51人以上に拡大します。その段階措置として、2022年10月には、101人以上の会社が適用になります。

厚生年金の保険料は、労使折半になっているので、これによって会社側の保険料負担が大きくなります。とくに中小企業は、厳しくなるところがあるかも知れません。

では、短時間労働者側から見ると、女性や高齢者が多いのですが、厚生年金の加入できるので、年金の受け取り額が増えます。ただ、厚生年金の保険料を支払うことになり、手取金額が減るかも知れませんが、長い目で見ると年金が増えるので、結果的にはいいことだと考えられます。

政府としても、国民年金を支払っていない人が多くいるので、厚生年金の加入者を増やすことで未納者を減らすという狙いもあるのでしょう。

公的年金は、老後の生活をすべて国が面倒みる制度ではありません。今回の改定も個人個人の自助に負うところが大きいのです。つまり、公的年金とはいえ、仕組みを知って使いこなすことが必要になってきます。

今回の改正をどううまく使いこなすのかは、ご自分の裁量です。うまく使いこなしてバラ色の老後生活にしてください。

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