緊急事態宣言はいつまで続く?イタリアの「段階的解除」に見るコロナ対策

政府は5月4日の夕方に記者会見を行い、当初6日までとしていた緊急事態宣言を31日まで延長することを発表しました。新規感染者数が十分に減っていない現状では妥当な措置という声もある一方、すでに1ヵ月の自粛でストレスを抱えている人も多く、また売り上げが大幅に減少している自営業者からは悲鳴が上がっています。

この緊急事態宣言はいつまで続き、そしていつどのようにして終わるのでしょうか。現在段階的に制限を緩和しているイタリアの例を参考に考えてみましょう。


ロックダウン解除後も、すぐにもとの生活には戻れない

政府は今回の延長措置について、14日をめどに予定している専門家会議で感染者数の動向や医療体制の状況などを評価し、可能な場合は解除を早めるとしています。またその解除基準についても、同じく14日をめどに公表する考えです。

ただ14日にせよ31日にせよ、その時点で安心して解除に踏み切れるほど状況が落ち着いているかはかなり不透明です。特に7日以降は営業を再開する店舗が全国的に増えており、決して楽観できる状況ではありません。

また宣言を解除したあと、すぐにもとの生活に戻れるのか、もしくは引き続き何らかの自粛が求められるのかについても、まだ言及されていません。

一方で諸外国の新型コロナウイルス対策を見てみると、ロックダウンの解除後すぐにもとの日常生活に戻っている例はまれで、ほとんどは少しずつ規制を緩和していく「段階的解除」を行っています。

たとえばイタリアでは5月4日以降を新型コロナ対策の第二フェーズとし、外出や企業活動の再開を認めるなど少しずつ制限を緩和しています。また、フランスでも11日から段階的に規制を解除、イギリスでは10日にロックダウンの緩和方針を発表することを明らかにしています。

イタリアの「段階的解除」今後1ヵ月の動向

「段階的解除」とは、具体的にどのような措置が行われているのでしょうか。一例として、イタリアの5月4日以降の制限事項を見てみましょう。

5月4日以降
・同居していない親族への面会を許可(1メートルの距離を保ちマスク着用が条件)
・公園や公共庭園へのアクセス、屋外でのスポーツを許可
・製造業、建設業、卸売業などの活動再開を許可
・15人までの葬列への参加を許可
・州を越えた移動は必要な理由がない限り禁止

5月18日以降(予定)
・店舗(生活必需品以外)の営業を再開

6月1日以降(予定)
・レストラン、バール、美容院などの営業を再開

公園も利用可能になったが、遊具の使用を禁止されるなど制限が残る

3月10日に始まった外出禁止措置はそのまま継続されていますが、これまで外出が必要な状況として認められていた「仕事」「医療」「食料品の調達」などに加え、「親族への面会」や「屋外での運動」が許可されるようになりました。

また、これまで活動停止措置が取られていた一部の製造業や建設業などにも営業再開の許可が出ており、4日には通勤再開となった人々の姿がニュースになりました。イタリア政府は、さらに5月18日、6月1日と段階的に制限を解除し、1ヵ月かけてショップやレストラン、バールなどの営業を再開していく方針です。

この「段階的解除」はこれまでの規制をわずかに緩和するものであり、イタリア人が大好きなピクニックや、家族以外の人々が野外で集まったりする行為は引き続き規制の対象となっています。

ただ、わずかでも規制が緩和されたこと、また2ヵ月ぶりに堂々と外出できる理由を得たことで市中にはどっと人々があふれ出しているのが現状です。ミラノでは市長がSNSを通して、引き続き市民に警戒を呼びかける事態になっています。

また、州を越えて移動することは仕事上の理由や緊急の必要性がない限り禁止されており、学校の再開時期はまだ明らかになっていません。第二フェーズに突入しても生活にはまだまだ多くの制限があり、これらの解除は6月1日以降の状況を見て判断されることになっています。

緊急事態宣言は段階的解除の可能性もある?

さて、話を日本に戻してみましょう。

イタリアと日本では感染者数や死亡者数に差があり、また政府が行っている新型コロナ対策も大きく異なります。状況が違うため、ひとまとめに論じることはできません。ただ、イタリアの例を見る限り、解除後も生活に何らかの影響が残ると考えるのが自然です。

そもそも緊急事態宣言は、ウイルス感染を拡大しないために学校や施設の利用停止を要請したり、医薬品やマスクなど物資の保管を指示したりするもの。宣言を解除しても、ウイルスが消えるわけではありません。

解除されたからといって、すぐにこれまで通りの生活を始めてしまうと、2週間後には感染者数がもとのレベルに戻ってしまう可能性もあります。また最近では、新型コロナには第二波、第三波がある可能性があることも指摘されており、感染者数が減ったからといって油断はできません。

こうした状況を踏まえると、緊急事態宣言が解除されてからも、引き続き外出しないよう求められたり、一部の業種で自粛が継続されることは十分に考えられます。また仮に政府がはっきりと禁止事項を示さなくても、自粛ムードが漂うことで実質的な段階的解除になるかもしれません。

人命を優先するか経済を優先するか、そこに答えを出すことはできません。ただ、当分は何らかの制限や自粛が残るという前提で、事業や生活の予定を立てておくことが必要となるでしょう。

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