ハハハハの日

 昔、ワインの広告コピーに〈あさってはハハハハの日である〉というのがあった。「母の日」に掛けたのだろう。朗らかなお母さんの笑い声が、母の日にはもっと大きくなる。そんな情景を思い浮かべる▲あすの母の日はどうだろう。県内ではそろりと、じわじわと、店や施設の営業が再開されている。何かを贈られたり、どこかに出掛けたりして、お母さんは笑顔を見せるだろうか▲いま、例年にないキャンペーンの最中だと、先ごろの本紙の記事にあった。花の生産や流通に関わる団体が、5月の1カ月間を「母の月」にしようと呼び掛けているらしい▲イベントの中止などで花の注文は落ち込んでいる。そこで、母の日を過ぎてもいいから、5月中にお母さんへ花を贈ってはいかが、と提案している。そうすればカーネーションだけでなく、5月半ばから旬を迎えるバラも届けられるという▲感染を案じ、大型連休中も帰省を控えたりして、近親者と会わずに過ごした人は多い。じかに顔を合わせる機会が減っているいま、花の贈り物に限らず、何かの形で思いを伝え、心と心は至近距離を保ちたい▲社会全体を見渡せば、笑い声が響く「ハハハハの月日」がいつ来るのか、まるで見通せない。まずは近しい人との間で、身近なところで、笑顔が少しばかり増えるといい。(徹)


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