ドアを壊して不法侵入していた空き巣(写真・編集部)。
緊急事態宣言中、対象となる「バー」などの飲食店は店を金銭面と、もう一つの恐怖と闘わなければなりません。店をしめている間に侵入する、空き巣です。それを避けるために例えば、新宿歌舞伎町のゴールデン街では店主同士でチームを組んで、見回るようにしています。いわば自警団のようなものです。
ゴールデン街は数百メートル四方の空間に200軒ほどのバーがひしめきあっています。因みにゴールデン街と一口に言っても「ゴールデン街」と「花園街」に分かれていて、それをまとめて「ゴールデン街」という通称になっています。
以前は青線でした。青線とは非合法売春地域。赤線は合法(新宿二丁目はかつての赤線ですがゴールデン街のように建物は残っていないようです)。赤線も青線も日本全国にありました。青線の特徴の一つとして、店と店が密着しており、いったん火事が出ると延焼していまう為、店主たちもそこだけは用心していました。
しかし、空き巣被害は起きました。
「週に3回、昼にゴールデン街に行って店の様子を見ていたんです。店を換気してそれから自転車でぐるっと一周するような感じで見回っていました」(ゴールデン街店主)。
ゴールデン街は今、外国人の旅行者の間ではすっかり観光地になり、例えばラグビーW杯の時は細い路地が外国人でいっぱいになったものです。
「当番制でパトロールしていました。2人一組で6月までの予定でした」(前出・店主)。
6日の午前1時ごろ、店主の店は被害に遭いました。この時間帯のゴールデン街は真っ暗です。
「私は家に帰っていたので近所の店主に聞いたのですが、すごい音がしたそうです。それはドアのぶを壊した時のようです。その人が様子を見ていたら3分くらいして男性が店から出て来たそうです」(前出・店主)
とがめると、男は片手にジャックダニエルの瓶(後で判明)を持って襲ってきました。何とか近所の交番に連れていき、男は現行犯逮捕。
「それから電話がかかってきて店に行きました」(前出・店主)
すると、ドアがノブごと壊されており、そこから店に侵入したと思われます。警視庁四谷署の管轄なので所轄の警察官と現場検証をした店主。
「店内を調べたら、さほど荒らされていなくて。でも棚を見たらジャックダニエルがなくなっていました」
容疑者の男が持っていたものと同一だと思われます。が、四谷署は窃盗、器物損壊では逮捕出来ないと言ったようです。
「店のと男が持っているものと同一か、分からないからと言うんです。民事なら訴える事が出来るとか不可思議な事を言っていました」(店主)
結局、四谷署で朝まで事情聴取。容疑者の男性は外国人で酔っ払っていた模様。結局、被害届は不法侵入だけにとどまりました。通常なら、窃盗、器物損害などがつくと思われますが……。
「不法侵入だけでなく窃盗、器物損壊でも調べて欲しいと言ったのですが、『不法侵入だけだよ』と言われました」(前出・店主)
翌日に四谷署から「DNA鑑定をさせて欲しい。器物損壊で逮捕するので立ち合ってもらいたい。スタッフにもお願いしたい」と店主は言われます。が、コロナ禍で外出自粛の現在、外出をさせたくありません。最初から器物損壊で捜査して欲しかったと店主は言います。
それにしても、状況と店主の報告と目撃証言だけで不法侵入・器物損壊・窃盗のセットで取り調べられると思うのですが、四谷署はどうなっているのでしょう。テレビの「警察24時」的な番組では不審と見るだけで、しつこく職質をするのに、こちらのケースは不審どころか目視で、前記の三件の容疑で逮捕出来ると思われます。
「四谷署の警察官は『今コロナ禍で署員が少ない』と言っていました」(前出・店主)
もしかして人手不足の現在、四谷署としては面倒だから不法侵入だけで済まそうとしたのではないでしょうか。もしそうならば、警察の任務とは何でしょう。この不安な時勢だからこそ、国民の安全を守らなければならないのではないでしょうか。(文・写真◎編集部)