《コロナと向き合う (10)》中長期目線で再開準備 ザスパ社長・奈良知彦さん

 新型コロナウイルスの感染拡大でプロスポーツチームも打撃を受けている。リーグ中断が続く、サッカーJ2ザスパクサツ群馬を運営するザスパの奈良知彦社長(65)は「最悪の状況を見据えて準備する」とし、中長期的な視点に立ったチーム運営の必要性を強調する。

―3月31日に選手1人の感染が判明した。
 クラブはJリーグのアドバイスを受け、基本的な感染防止策は取ってきた。体温が37度以上ある場合の報告を指示しており、今回感染した選手は発熱後、自宅待機とした。チームの濃厚接触者は計41人となったが、感染は広がらなかった。一歩間違えればクラスターとなっていたかもしれないだけに恐ろしい。感染した選手は入院中に聞いた医療従事者の声を会員制交流サイト(SNS)や取材を通じて呼び掛けた。一つの参考にしてほしい。

―2月末からJリーグが中断し、再開の見通しは立っていない。
 今後、無観客試合になるのか、残り試合が中止となるのか、先行きが見えずに危機感を持っている。最悪の状態を考えて手を打つ必要がある。Jリーグの支援策を視野に入れつつ、クラブとしてはグッズ販売や再開後のチケット販売など今季を乗り切るための目標を立てる。その上で来季以降を見据えた中長期的な視野を持つ。今こそ経営陣が社会の動きを捉えながら経営を進めなくてはならない。

―不況によるスポンサー離れも懸念される。
 スポンサー料は収入の多くを占めており、各社に現状の理解を求める必要がある。歴代のスポンサーはザスパを自社の広告のためだけに支援してきた訳ではない。プロクラブを地元の活力として誇りに感じ、スポーツを通じた社会貢献活動として捉えてくれたはず。経営に苦しむスポンサーに対し、我々ができることもある。SNSを使った支援策を模索しており、この苦境を共に乗り越えたいと考えている。

―再開を待つサポーターにメッセージを。
 なかなか交流ができないことに申し訳なさを感じる。練習は新型コロナの影響で2月から非公開が続き、見てもらうことが仕事の選手はうずうずしていると思う。サポーターとの距離が離れないようにしたい。昨年昇格した時のような喜びをもう一度、ホームの正田醤油スタジアム群馬で味わいたい。再会できる日を楽しみにしている。

 なら・ともひこ 前橋商高のサッカー部監督を27年務め、全国選手権に10度出場し、2度の4強進出を誇る。藤岡工高教頭、市前橋高の教頭と校長を歴任し、2018年から現職。東海大卒。前橋市。

© 株式会社上毛新聞社