<いまを生きる 長崎コロナ禍> いつかまた「みんなでワハハ」 集い笑う“居場所”休止に

 長崎県東彼川棚町の主婦らで運営するコミュニティーサロン「井戸端 みんなでワハハ」が4月末で、いったん活動を休止した。地域の老若男女が集う“居場所”だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で存続が難しくなった。スタッフは「第2章の始まり」と前向きにとらえ、再出発を誓っている。

 8日午後、百津郷にあるワハハのサロンではスタッフが後片付けに追われていた。毎週月、水、金曜日に人々が食事やおしゃべりを楽しんだ部屋から次々と荷物が運び出される。「だいぶ色が薄くなったね」。日に焼けた看板を見上げて、代表の藤田直子さん(62)は、7年半の活動に思いをはせた。
 女性の地域活性化を支援する県の補助事業を活用し、藤田さんら主婦仲間が2012年に開設。地域の高齢者らに昼食を提供し、iPad(アイパッド)や新聞ちぎり絵講座などを開いた。
 イベントやワークショップ、絵はがき販売などで収入を得て、県の補助から自立。自閉症啓発キャンペーンや熊本地震の被災地支援など「井戸端」ならではの発想と行動力で活動の幅を広げてきた。しかし、新型コロナの影響でサロンの維持が困難に。収束の見通しが立たない中、一度サロンを畳もうと決めた。

再出発を誓い、笑顔を見せる「井戸端 みんなでワハハ」のスタッフ=川棚町(撮影のためマスクを外しています)

 藤田さんは「生活そのものに苦しんでいる人に比べれば…」と気丈に話す。それでも利用者や通行人からは休止を惜しむ声が多く寄せられた。「老いも若きもみんなで笑おう」。当初掲げた目標通り、人々にとってのかけがえのない“居場所”に育っていた。
 県内の市民活動をサポートする中間支援組織「Fineネットワークながさき」が4月に県内のNPO法人や市民団体に行った調査では、9割以上が新型コロナで活動に影響が出たと回答。山本倫子代表理事は「地域で『居場所づくり』に取り組むボランティア団体が機能を失い、社会にほころびを生む可能性がある」と指摘する。
 片付け中もスタッフは「転んでもただでは起きない」と終始笑顔だった。藤田さんは「一人一人の生き方が試されている気がする。これからも私たちらしく、楽しいことに挑み続けたい」と奮い立つ。人々が集い、語らう日常は、いつかまた戻る。その時には思いきり笑おう。みんなでワハハ、と。

 


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