IDC、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年の国内ICT市場の支出額は前年比6.1%減と予測

IDC Japan株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新状況を考慮した国内ICT市場予測のアップデートを発表した。これによると2020年の国内ICT市場(支出額ベース)は、前年比6.1%減で、27兆8,357億円と予測している。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく、2020年4月7日に発令された緊急事態宣言によって、各自治体からの外出自粛やさまざまな営業活動の休止が強化された。これによって、国内の経済活動は一層冷え込んでおり、様々な産業への影響が拡大していることから、今回の国内ICT市場予測アップデート(支出額ベース)では、IDCが2020年4月3日付で発表した2020年のICT市場成長率から1.6ポイントの低下としている。2020年における国内ICT市場(支出額ベース)の製品セグメントごとの前年比市場成長率のアップデートは、スマートフォン/PC/タブレットなどのDevicesがマイナス24.3%(前回予測比2.3ポイント減)、サーバー/ストレージ/IaaS/ネットワークなどのInfrastructureがマイナス3.9%(同2.7ポイント減)、Softwareが0.6%(同3.4ポイント減)、IT Servicesがマイナス2.8%(同1.0ポイント減)、Telecom Servicesがマイナス1.2%(同0.7ポイント減)と予測している。Softwareは、オンプレミス中心のプロジェクトの延期/中止などによって、今回最も大きな下方修正となり、2019年並みの市場規模に留まる見込みだ。ただし、リモートワーク環境へのセキュリティ対策とサイバー攻撃の継続的な増加でサイバーセキュリティへの投資は大企業を中心に継続されるとみている。DevicesやInfrastructureのハードウェア市場は、サプライチェーンの混乱拡大および、ユーザー企業側の出社自粛などによる受け入れ体制への影響が拡大し、下方修正した。一方、プロジェクトに依存性の少ないマネージドサービスを提供するIT Servicesの影響は軽微であるとみている。2021年に向けては、GIGAスクール対応で今後急速に拡大するPCやタブレットなどのDevices市場、クラウドサービス事業者の継続的な投資対象であるサーバーやネットワークなどのInfrastructureやSoftwareの市場は堅調に回復するとみている。これらの予測は、COVID-19に関して、国内外共に2020年前半で感染がいったん抑制され経済活動が正常化した後も局地的に感染が再発して回復の阻害要因となるものの、一部の先進企業を中心にDXへの投資が活性化し、景気対策の一環として政府によるICT投資が選択的に行われることを前提に作成されている。今後の状況次第では、危機管理、働き方改革、社会保障や行政のデジタル化などのニーズから、企業、政府、消費者レベルでDX投資が活性化されるというICT市場にとってOptimistic(楽観的)シナリオも想定しており、その場合の2020年における前年比成長率はマイナス3.8%程度に収まるとみている。また、2020年には世界主要地域全般レベルでの感染の抑制と経済活動の正常化が実現せず、感染の収束と経済の回復が2021年中盤以降に持ち越されるというPessimistic(悲観的)シナリオでは、前年比成長率はマイナス9.3%まで落ち込み、今後の状況次第ではさらなる成長率低下の可能性もあるとした。

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