出張客、宴会途絶え苦境 諫早の中小規模の宿泊施設 旅館やホテル テークアウトで活路も

宴会キャンセルが相次ぎ、一部休業しているホテルロビー=諫早市、ホテルグランドパレス諫早

 新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受け、長崎県諫早市の旅館、ホテルが4月以降、臨時休館や一部休業を余儀なくされている。観光客主体の長崎市などと異なり、小中規模の施設が多い上、出張やスポーツ合宿などの宿泊、大規模な宴会が収益の柱を占める特有の事情を背景に、中長期的な打撃が出始めている。
 照明を落としたロビー。宴会場に通じる階段下にロープが置かれている。「人が集まってこその商売なのに、集まってとも言えない」。市内最大の宴会場を持つ宇都町のホテルグランドパレス諫早の中島寿美子常務。歓送迎会シーズンに入る2月下旬から宴会のキャンセルが相次ぎ、「損失は億単位」を見込む。従業員約150人の大半は休業を余儀なくされた。結婚式の予約も8月までゼロ。
 「(宴会などの)空間を提供するのが仕事。緊急事態宣言が解除されても、空間と利益が2倍、3倍に増えるわけではないのが悩ましい」。中島常務はホテル特有の事情を明かす。
 市旅館ホテル業組合には20社が加盟、約700人が働く。2018年の市観光客約274万人のうち、延べ宿泊客は約42万人。宿泊客の観光消費額は約54億1700万円を超え、地域経済を支える産業の一つ。
 市内3カ所でビジネスホテルを経営するグローバル商事(本田一修社長)は7日から1カ所、来月からもう1カ所を臨時休業する。予約状況で残り1カ所に集約するのが得策と判断した。市内の工業団地や公共事業の関係者など県外の出張客がメインだが、4月7日の緊急事態宣言後、県外客の動きがぴたりと止まった。
 一方、感染者が宿泊した場合の影響を案じる声も。ある経営者は「県外客を受け入れたいけど、一時の利益よりリスクが高すぎる。最終的には施設の責任。宣言が解除されても、休業補償がなければ県外客の受け入れは難しい」と営業継続への“担保”を求める。
 8日、市旅館ホテル業組合の緊急要望に対し、宮本明雄市長は市独自の経営支援給付金(一律30万円)や融資制度の活用を促した。経営者の一人は「個人経営と違い、経営規模が大きい業界で(給付金の要件の)月50%以上も減収すれば、その前に倒れる」と実情に応じた支援を訴えた。
 中には、テークアウトで活路を見いだそうとする施設も。永昌東町のL&Lホテルセンリュウ(大石竜基社長)は1日から、ドライブスルー方式のテークアウトを始めた。4月以降、宿泊は7割減、宴会はほぼ100%減。臨時休業も頭をよぎったが、従業員が奮起。「ホテルの味を職場や家庭で味わってもらおう」。ランチとディナーのメニューをそろえ、営業に駆け回る。車中の顧客に商品を渡す笑顔も普段通りだ。
 体育施設を使った県外合宿も途絶えた。諫早観光物産コンベンション協会によると、2、3月だけで3団体、延べ宿泊者2830人、4月も4件、同1400人がキャンセルとなり、宿泊業界への打撃は深刻だ。同協会は「一から誘致活動をやり直さなければいけないが、今は動けない」と途方に暮れている。

車中で料理を受け取れるドライブスルー方式のテークアウト=諫早市、L&Lホテルセンリュウ

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