王貞治会長が掲げる16球団拡張構想 生まれるメリットとデメリットはどこに?

ソフトバンク・王貞治球団会長【写真:藤浦一都】

底辺の拡大、地域経済活性化、CSのねじれの解消…多いメリット

ソフトバンクの王貞治球団会長が打ち出したプロ野球16球団への“エクスパンション構想”。現行のセパ12球団から4球団を増やすというもので、王会長は「若い人にチャンスが広がる」と、野球の底辺を拡大するためにも球団数を増やすことは必要だと、構想の思いを明かしている。

では、この“エクスパンション”によって生じるメリットとデメリットはどこにあるのだろうか。

球団数の増加によるメリットは大きい。まず王会長の語る底辺の拡大。4球団が増加すれば、約250人超の選手が新たにプロ野球選手となれる。若いアマチュア選手にとって夢が広がることになり、門戸が広がることで野球人口の減少に歯止めをかけることも期待できる。そして現在、プロ野球球団のない地域の子供たちがプロ野球に触れる機会を与えられるようになり、裾野を広げることにも繋がる。

地域の経済活性化にも寄与するだろう。2005年に仙台を本拠地に発足した楽天がいい例だ。街が一体となって応援し、ホームゲームの際には相手チームのファンが仙台を訪れる。宿泊施設に泊まり、そして飲食店にお金を落とす。毎年ホームゲームが70試合以上あることを考えれば、その経済効果は大きい。また、親会社にとってもその企業名が広く知れ渡る効果も期待できる。

そして、何かと賛否の議論が起こりがちなクライマックスシリーズの“ねじれ”も解消できる。16球団になれば、おそらく2リーグをそれぞれ4球団ずつ2地区に分かれることになるだろう。各地区の1位チームがリーグ優勝を競う形、ないし勝率上位の“ワイルドカード”を加えてもいい。少なくと3位のチームが勝ち上がるという“下克上”はなくなる。

一方のデメリットとして叫ばれることと言えば、球団数増加によるレベルの低下だ。選手数が増えることで、確かに選手全体としての平均レベルは下がるかもしれない。だが、1軍で出場選手登録されるのは29人だ。特に試合に出続けるレギュラークラスの選手のレベルが突然、低下するわけではない。若い力で才能を開花させる選手も出るだろう。球団数が多ければ、そのチャンスも広がる。力のある者だけが生き残っていける世界。力無きものは淘汰されていく。年数を経て新陳代謝が行われていけば、そのレベルの差は縮まっていくのではないだろうか。

デメリットとして球界のレベル低下が叫ばれるが、果たして?

2005年の楽天が参入した時はどうだったか? この時は近鉄とオリックスの合併による分配ドラフトやドラフト、他球団から自由契約となった選手らを集めてチームを作った。当然の如く初年度はレベルの差は歴然としたもので97敗を喫した。だが、リーグのレベルが下がったかというとそんなことはなかった。この時は球団数が増えたわけではないが、選手の数が増えれば、開花する才能も増えるとも期待できる。

実際に楽天は5年目で2位になり、9年目でリーグ優勝、日本一になった。当初は実力差があったとしても、新陳代謝を繰り返しながら、高いレベルで戦っていけば、徐々に力をつけ、同じレベルの高さまで上っていくのではないだろうか。より多くの選手がチャンスを得られれば、例えば、千賀滉大や甲斐拓也に代表されるような“掘り出し物”が開花する可能性もあるのではないだろうか。

あとは高い参入障壁をクリアでき、しっかりと経営していくだけの体力を球団が持てるかどうか、だ。プロ野球球団の経営にはコストがかかる。企業のスポンサードも必要になる。ただ、球団単体経営でも利益を生み出すことは十分に可能だ。旧態依然とした親会社からの資金注入をアテにする球団経営ではなく、健全かつ合理的な球団経営、スポーツビジネスを展開できれば、十分に採算は確保できるはずだ。あとは航空機の直行便など、各本拠地へスムーズに移動できるため交通網の整備も課題として挙げられる。

王貞治会長が球界の未来を案じて提唱している16球団構想。より多くのファンに野球を楽しんでもらえる、多くの子供たちに夢を与えることができる。そう考えるだけでも、この“エクスパンション”には価値がある。(Full-Count編集部)

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