【特集】アフターコロナの地域戦略〜(3)インバウンドはいつどうやって戻ってくるのか?〜

そ-その観点を踏まえた上で、ここからは希望的観測をもとに考えて行きたい。「希望」は人間の原動力のはずだ。1年延期されたオリ・パラが本当に開催できるか、未だ予断を許さないことは重々承知している。ただ開催できたら、これはまさしく「復興」の大きなきっかけになるだろう。
–というのも、このコロナショックからの「復興」という意味と同時に、2021年はあの東日本大震災からちょうど10年の節目にあたるからだ。もともと「大震災からの復興」を掲げて招致した東京大会が、本当の意味で、また二重の意味で「復興」を意味することになる。世界的な観光産業の「復興」も合わせて、3つの復興の起点となると言ってもいい。その意味は、もしかしたら50年前の第1回東京オリンピックと同等かそれ以上の意味があるかもしれない。そう考えると、本当にその開催実現を心の底から願わずにはいられない。–その中で、前述の「日本の観光業が本来目指す価値」とは何かを考えてみたい。私達は海外の方たちに、一体何のために日本に来てもらいたいのだろうか?–これはあくまで私見だが、そこにはやはり「平和」というキーワードは欠かせないと考えている。言葉は重たいし、決して政治的な意味を強調するつもりもない。しかし事実として、私達の文化や歴史は、周囲を思いやり協調して暮らしていくことを大切にしてきた。もちろん日本が一番だというつもりもないし、安易なナショナリズムと紐付けるつもりも毛頭ない。しかし私達はそこにはもっと自信と、純粋な誇りを持っていいのではないだろうか。そして、実は「そのこと」を感じるためにこそ日本に来てほしいと、本当は誰もが心の底で思っているような気がしてならない。–今回、もしも国内のコロナ感染による被害がこれ以上大きく広がることなく収まれば、もしかしたら世界から見てまた一つ日本の(いい意味での)「不思議さ」が加わる可能性もある。そしてそこにもまた、私達の「和を重んずる」価値観が多少なりとも影響していると思ってもらえるかもしれない。もちろん科学的にそれを証明するのは不可能だろうし、ややこじつけかもしれないが、日本のブランド価値を高めるストーリーのひとつとして悪くはない。災害の多い地域で育んできた私達の文化や価値観は、それと決して無縁ではないはずだ。–これからまだ状況は厳しさを増すだろう。しかし、とにかくここで諦めるわけにはいかない。余計なことかもしれないが、NHKには是非、昨年の大河ドラマ「いだてん」を再放送してほしい。あのドラマの主人公が語っていた「本当に見せたい日本」を考える時間を、私達は今まさに与えられているのだ。そう考えずにはいられない。

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