「赤ちゃんのような純粋さを持っている」 日本ハム栗山監督が中田に向ける“愛情表現”

日本ハム・栗山監督【写真:石川加奈子】

「F取材ノート~心に残ったあの言葉」、栗山監督が中田へ送ってきた数々の言葉

プロ野球開幕を心待ちにしながら日本ハムの取材ノートを整理していたら、思い出深い言葉を再発見した。「F取材ノート~心に残ったあの言葉」として改めて紹介したい。今回は、栗山英樹監督の中田翔内野手への愛情について。

「赤ちゃんのような純粋さを持っている」

昨年の開幕戦(3月29日オリックス戦)でサヨナラ満塁本塁打を放った中田について語る栗山監督の心底うれしそうな表情は忘れられない。翌朝の試合前の囲み取材で、次から次へと愛ある言葉があふれた。

「今日も、ふと思ったけど俺が監督になってから翔と一緒に歩いているからさ。本当に自分の家族みたいな感じ。翔が悪かったら、俺もすごい責任を感じて『ごめんなさい、みんな』みたいな。そんな感じの選手なんだ」

12年に監督就任すると同時に、スポーツキャスター時代に取材したことのある甲子園のスターを4番に据え、ともにチームの命運を背負ってきた。冒頭の言葉が飛び出したのは、開幕戦前の中田の様子について明かした時だ。

「(開幕戦ファン入場時の)ハイタッチ行く時に、すごく緊張しているの。そういう翔のかわいさっていうか。責任を感じて、緊張してドキドキしている翔がいて。(故障から復帰した3月9日阪神とのオープン戦の)甲子園でもね、『緊張してる』って言って、すごいバット振っているの。そういう赤ちゃんのような純粋さをあいつは持っていて、一緒にやっているとそういうものに触れるのよ。みんな、そういうものに惹かれるんだろうね、ファンの人たちも。うまくいかないこともあるんだけど。翔ってスタート、下手じゃない。昨日みたいなスタートはちょっとホッとする…って、こんなんでホッとしてもらっちゃ困るんだ。普通だよ!」

今シーズンからキャプテンは西川遥輝「間違いなく何かを自分でも感じ取ってると思う」

最後はツンデレで締めくくって報道陣を笑わせたが、こんなに温かく見守ってもらえる中田は幸せな選手だなと思った。思い返せば、中田の入団1年目に指揮を執っていた梨田昌孝監督も当時「母性本能をくすぐる」と話していたことがあった。放っておけない“やんちゃキャラ”が、周囲の人を惹きつけるのだろう。

取材ノートをめくると、栗山監督と中田の2人の師弟関係は、こんなにほのぼのとしたものばかりではないことが分かる。栗山監督が中田をキャプテンに指名して迎えた一昨年のシーズン。中田が30歳の誕生日を迎えた4月22日のノートには「本当にいろんなことがあって、翔と向き合って、無茶苦茶なことも言った。なんでもいいんだ。あいつが本当に俺のことを殺してやりたいと思うぐらいでもいいんだ。翔が輝く方がいいんだ」と書いてある。物騒な物言いの中に、本物の愛情を感じる。

2014、16年と2度、打点王のタイトルを獲っても「こんなもんじゃない」と言い続けてきた栗山監督が中田に求めるものは高い。能力を最大限引き出すためにあの手この手を使ってきた。17年11月のファンフェスティバルで突然、中田をキャプテンに指名したのもその一つ。あの時は「翔が打たないとチームが勝たないことは証明されている。6年間、中田翔が気になってしょうがない。いろんなものを背負わせるか、逆に楽にするか……」と語っていた。

2年間務めたキャプテンを西川遥輝外野手に譲ることになった今季、中田はオープン戦13試合に出場して32打数11安打9打点3本塁打、打率.344と絶好調だった。「間違いなく何かを自分でも感じ取ってると思う」と、その変化に目を細めていた栗山監督。9年目を迎えた師弟コンビに今年はどんなドラマが待っているのか楽しみだ。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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