【新型コロナ】心和むチョークアート 在宅勤務の18歳新社会人、街角でエール

医療従事者への感謝と「STAY HOME」を伝えるイラストを描いた池澤さん=13日、横浜市泉区中田東

 未曽有のコロナ禍が社会に暗い影を落とす中、地域住民の心を和ませる鮮やかなイラストが横浜の街角にお目見えした。作者はこの春に新社会人となったばかりの18歳。自身も在宅勤務の日々を過ごしながら、「自粛に苦しむ人、医療の現場で支えてくれる人たちを応援したい」と、チョークを走らせた。

 横浜市泉区中田東の閑静な住宅街。空き店舗の窓辺を彩る赤、青、黄の3色のチョークで描いたポップなイラストに、道行く人が足を止める。「コロナウイルスをやっつけろ」とうたう「DEFEAT COVID─19」、外出自粛を呼び掛ける「STAY HOME」、医療従事者へのエールと感謝も添え書きした。

 制作した池澤寧音(ねね)さん(18)は「私にできることはこれしかない」と控えめに語る。4月にクルーズ船を運航する市内の企業に就職。新生活のスタートを飾るつもりが、入社2日後から在宅勤務となった。

 新たな一歩を踏み出した実感も湧かず、不安感に襲われる日々。テレビでは医療従事者の努力が取り上げられ、「自分の無力さを思い知った」。ふさぎ込む次女を思い、母敦子さん(50)はチョークを手渡した。「久しぶりに何か描いてみたら」。池澤さんにとって何よりの息抜きが絵を描く時だった。

 自宅のそばにうってつけのキャンバスがあった。両親がかつて営んでいた写真店の窓に張ってある縦1メートル、横7メートルほどの深緑色の目隠しボードだ。「黒板みたいでチョークが映えそう」。ひとたびスイッチを入れてのめり込むこと約4時間。下絵なしでひらめいたイラストをちりばめた。

 近くに住む70代女性は「発想がすてき。外出自粛で気疲れしていたけど気持ちが和んだ」。区内の小学2年生(7)も「すごくきれい。私も練習して上手な絵を描きたい」と目を輝かせた。

 少しの雨で消えてしまうが、「絵を描くと気分が晴れる。消えたときは新しい絵を描くチャンス」と前向きだ。4月下旬の1作目に続き、今月12日に仕上げた今作は第2弾。「みんなで一つになって困難を乗り越えたい。見てくれる人が一人でもいるなら、いつか克服を祝う絵を描きたい」

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