新型コロナ軽症者施設の選定難航 説明会で意見平行線 長崎県 県「医療崩壊防止へ」 住民「風評被害を懸念」

 長崎県が新型コロナウイルスに感染した軽症者らの受け入れに向け確保を急いでいる宿泊施設の選定が難航している。「内定」した施設周辺では説明会が開かれ、風評被害や感染リスクなどを懸念する住民から反対の声が上がった。県は「医療崩壊防止へ必要」と理解を求めるが、先行きは不透明だ。
 県内では4月18日以降、新型コロナの感染者は確認されていない。ただ県は、感染者が爆発的に増加した場合に備え、借り上げた宿泊施設で軽症者を受け入れる方針を示している。ピーク時に必要と試算される千床分を目標に、県内八つの二次医療圏それぞれで確保したい考え。
 県が4月に宿泊施設を公募した結果、計23施設(2096床)が応募。このうち長崎市内の1施設については部屋数が最も多く、感染症指定医療機関に近い立地などの理由で選定先に「内定」しており、県はこの施設で軽症者を受け入れる方向で調整を進めている。
 県は12日夜、この施設の近隣住民向けの説明会を非公開で開いた。県側は担当者のほか、上田裕司副知事ら幹部が出席し、施設の必要性や患者の搬送方法、医療スタッフらが常駐し安全確保に努めることなどを説明した。出席した住民たちは、施設の必要性に一定の理解を示しつつ、住民への事前説明の不十分さや風評被害への懸念などを理由に反対の声を上げたという。意見は平行線のまま約2時間半で終了した。
 出席した住民の一人は取材に「受け入れ施設は必要だが、このままでは住民に不幸を招くことになる。強引に選定を進めるのではなく、県には住民が納得できるような努力を惜しまないでほしい」と話した。
 県は「住民の気持ちは受け止めたい」とした上で、「設置は緊急を要する」として引き続き住民に理解を求めていく考え。再度、説明会を開くことも検討していくという。

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