マスク 値引き合戦の様相も 異業種参入で一部「飽和状態」 佐世保・商店街ルポ

電子タバコ店で販売されている使い捨てマスク=佐世保市上京町

 新型コロナウイルスの感染拡大で入手困難な状態になっていたマスクが、ようやく市中に出回り始めた。商店街には趣向を凝らした布マスクがあふれ、一見マスクとは無関係の店も独自ルートで仕入れた商品を売り始め、値引き合戦の様相も。佐世保の街でマスク事情の今を探った。

 佐世保市中心部の四ケ町アーケード。衣料品、タピオカ、電子タバコ…。さまざまな業種の店頭でマスクが売られている。現在の相場は一箱(50枚入り)2700~4千円。5千円を超えるものもあった時期に比べると値が下がった。
 異業種の店がどうしてマスクを? ある衣料品の店主が内情を明かす。「服が売れないからマスクを売るしかない。日本のアパレルメーカーがマスク輸入を始めたので仕入れた」。
 早いところは4月中旬から販売を開始。当初、1箱5千円程度でも飛ぶように売れ、多い日は1日200箱以上がはける店も。ところが5月に入り、本業でつながりがある中国メーカーなどを通じ仕入れたマスクを販売する店が急増。市内の雑貨店ではウレタンマスクの「ガチャガチャ」(1回400円)も登場。大型商業施設や100円均一ショップにも徐々に戻ってきている。関係者は「マスクは飽和状態。もう仕入れはしない」と話す。

雑貨店入り口に設置されたウレタンマスクの「ガチャガチャ」

 使い捨てマスクが全国の店頭から消えた後、需要をカバーしたのが布マスク。商店街では、色も形もさまざまなものが売られ“百花繚乱(りょうらん)”だが、こちらも変化を迫られている。
 布マスクの価格は1枚300円から2千円と幅広い。下京町のくっけん広場にあるハンドメイド雑貨屋「SPICE★WORKS」は全国約40人の作家が作った布マスクを販売。4月は1日で300枚を完売することもあった。

 同店の橋口智絵代表(43)は「今はもうマスクなら何でも売れるという状況ではない」と話す。ただ、コロナ禍をきっかけに、マスクは市民の暮らしに根付くはず。ファッションアイテムとして、高品質で、おしゃれなマスクを作って差別化を図るつもりだ。

作家が作った色とりどりの布マスク=くっけん広場前

 布マスクの材料を販売する西沢本店(同市島瀬町)の武正志郎営業統括部長(72)は「最初は必要だから作るという状況だったが、今は楽しみながら作るという状況に変わってきた」と感触を話す。
 一方、マスク販売の“本家”ともいえるドラッグストアではまだ品薄状態も。ある大手ドラッグストアは「今後も商品確保に取り組んでいく。今はそれ以上お答えできない」とコメントした。
 「マスクを巡る混乱はなんだったのか」。ある関係者がぼやく。ただ、新型コロナは第2波、第3波も警戒される。マスクが必須な状況は当分続きそうだ。気を引き締めつつ、行き交う人のマスク姿が「日常」になった街を歩いた。


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