生徒が教師にLINEでSOSも…休校中のハイリスク家庭への対応に苦慮

2020年5月4日、緊急事態宣言の延長が発表されました。それに伴い、特定警戒都道府県を中心に臨時休校を延長する見込みが高まっています。

自治体や学校により対応は異なりますが、2月27日に出された臨時休校要請から、仮に緊急事態宣言の延長期間である5月末日までを休校とすれば、休校期間は実に3ヶ月にも及ぶこととなります。刻一刻と変わる新型コロナ感染拡大の状況に鑑み、その期限ですら不透明です。

前回、休校中の子どもをどう守るかは、各家庭のみならず、学校や地域、社会にとって大きな課題であること。しかしながら虐待やDV、貧困などが懸念されるハイリスク家庭へ、休校中に対応することの難しさについてお伝えしました。

どのような問題点があり対応を困難にさせているのか。学校の9月始業・入学制の導入についても議論されるなか、コロナ禍における子育て家庭の貧困、深刻な虐待やDVなどの現状を、対応へ東奔西走する学校現場の声を交えお伝えします。


ハイリスク家庭には学校開放に参加しない傾向が

ネグレクトを含め虐待などのリスクの高い家庭には、学校開放が行われていても子どもを参加させない傾向が見られるそうです。

九州地方のある公立小学校の教員は、こう嘆きます。

「学校開放へ来てくれれば、私たち教師が子どものケアやフォローをできますし、家庭内のリスクへ早期に気付くこと、対応することが可能になります。なのに親御さんが学校開放へ参加させずにいながら“休校で子どもが一日中家にいてイライラする”と子どもへ暴力を振るったり、ひどい暴言を浴びせたり。ならば学校開放へこさせてくれればよいのに、親御さんにとっても子どもと離れる時間ができるはずなのに、来させてくださらないんですよ」

学校開放へ参加するには、新型コロナウィルス感染拡大の影響を踏まえた上で、学校開放の主旨や条件に同意し参加させる旨を、保護者が書面を以って承諾していなければなりません。

新型コロナウィルスの感染拡大状況から、子どもの健康と安全を守るために学校開放への参加を見送る家庭も、もちろんあります。

ただ先の事例のように、学校開放へ参加させたほうが、親子ともに望ましいのではと考えらえるケースでありながら不参加の家庭には、ひとつは弁当を持参させることへのハードルがあるのではないかとも考えられます。

お弁当を持たせることがハードルに?

しかし3月中には給食が停止となったことで、余ってしまった給食用のパンを無償配給する自治体もありました。

また関東や関西圏でオリジン弁当やキッチンオリジンなどを展開する、イオングループのオリジン東秀株式会社では、一部の店舗で「お子さま応援企画」として中学生以下の子どもの昼食や夕食として弁当を購入する場合、100円引きをするといったサービスが行われています。子どもを必ずしも同伴させる必要はないとし、レジで申し出ることで、一度の会計につき3点までの弁当が100円引きになるといいます。

ほかにも、主に高齢者世帯へ向けて展開されてきた宅食サービスのなかで、貧困家庭を含む子どもへ向けた安価な宅食や、休校中の子どもへ割引きを実施する宅食サービスの企業もあります。

毎日弁当を持たせることが負担ならば、そうしたところで食料を確保し持たせることも可能です。

しかし虐待やDV、モラハラといった暴力を行う人物は、体裁や人目、世間体を気にし、外面だけが非常によいことがままあります。配給のパンや出来合いの弁当を持たせたり、あるいは出来合いの弁当を弁当箱へ詰め替えて持たせたりすることに抵抗があるのかもしれません。あるいはそうした発想に及ばないのかもしれません。

また和歌山県太地町では、給食を弁当に替えて各家庭へ配布するという対応がなされています。休校中の子どもたちへ、栄養バランスのとれた食事を提供すること、また保護者の負担を軽減することが目的です。

家庭への配慮はもちろん、給食が停止になったことによる雇用の喪失や食品ロスの問題をも回避できる施策であると感じます。

教え子からLINEでSOS

新型コロナウィルスの問題が発生する前から、ネグレクト、虐待があったり、貧困家庭であったりという家庭。食べ盛りの子どもが、きょうだい三人でひとつのパンをわけあって食べ、それだけが一日の食事である子どもたちもいます。給食だけが命綱である子どもたちは現実に存在するのです。

中部地方のある小学校の教員は、教え子のなかには、昨年度以前、過去に学校から通告をし、児童相談所で一時保護をしたことのある子どももいるといいます。

休校中、そんな子どもたちから「先生、たすけて」「お父さんからなぐられた」「お母さんからけられた」「いたい」「(コロナ禍の影響で失業や休業に追い込まれ在宅している)お父さんがお母さんをなぐっている」「こわいよ」「お母さんをたすけたい」「もうむりだ」——などと、LINEで送られてくることも決して少なくありません。

彼らにとってSOSを出せる相手、助けを求められる大人が、一時保護へと繋げてくれたその先生しかいないのでしょう。

二転三転する新型コロナ対策への対応会議中で、LINEを確認できないときもあります。

会議後、LINEのメッセージに気付き、すぐに電話をかけても出ない。家へと急いでも、室内は電気がついており明らかに在宅している様子であるにもかかわらず、誰も出てこない。保護者が顔を出すものの、体よく追い返されることもあると唇を噛みます。

あとになって、実は先生へ助けを求めたLINEを、親から見られてしまい怒鳴り散らされ、物を投げつけられたり突き飛ばされたりと暴力を受けた挙句、スマホを取り上げられていたと知るのです。

子どもたちの声をすくい上げることが大人たちの役目

北海道のある小学校の教員は「ひとり親家庭で、お母さんが朝から子どもを家に置いて出かけたまま、夜22時になっても23時になっても、深夜2時を過ぎても帰ってこない。家のなかに食べものはない。お金もない。外出中のお母さんと連絡すら取れず、どこにいるのか、なにをしているのか、いつ帰ってくるのかわからない。お腹を空かせ、夜も更け、たったひとりきり。恐怖やさみしさ、心細さ。お母さんはもう帰ってこないのではないか、自分は見捨てられたのではないかという絶望感。空腹と、言い得ぬほどのつらい気持ち、苦痛を耐えながら、母親の帰りを待ちわびていると、明け方ようやく帰ってくる。やっと帰ってきてくれた! と駆け寄るも、母親は子どもを一瞥することもなく、子どものことを気にかける様子も、ひと言すらもなく、そのまま布団に入って寝てしまう——そんな状況にある子どももいます」と沈痛な面持ちで語ります。

人と人との対面による交流をはかることの難しい状況下。経済不安、健康不安をはじめ、私たちの生活ストレスは、まるで先の見通しを持てないまま増すばかりです。

生きることを諦めそうになる。生きること、空腹を満たすことすら困難である。そんな瀬戸際にある人々も、決して少なくはありません。

子どもたちをどう守るか。今日を、いまを、どう生きていくか。声を上げることのかなわない子どもたち。泣くことすらできない子どもたちの現実、声なき声を取りあげました。コロナ禍で社会から発見されず、救いの手も届かない。そんな子どもたちは、水面下に存在しているのです。

私たち、社会を構成するひとりひとりへ、真摯に向き合うべき課題が突きつけられ、それぞれの責務が問われています。

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