コロナに負けない! テイクアウトで挽回 20種類の『山菜弁当』 一時は店畳む決意も… 孫娘の応援で78歳店主が奮起

新型コロナの影響で飲食店は大きな痛手を被っています。長野県須坂市の料理店も一時、主が店を畳もうとしましたが、孫娘の励ましで奮起。今は、自慢の山菜弁当で挽回しようとしています。

山菜弁当 1000円税込み

次々と揚げられていく山菜の天ぷら。慣れた手つきで揚げているのは、店主の寺沢玲子さんです。

寺沢玲子さん:
「ちょうどうまく(葉が)広がるようにね。コシアブラ、タラノメ、三つ葉…」

作っているのは、天ぷらなどが豪快に盛り付けられた「山菜弁当」です。ここは須坂市の季節料理店「六本木」。春は山菜、秋はキノコと「旬」が味わえる店として知られ、県外からも客が訪れます。しかし、その店を寺沢さんは一時閉じようと考えていました。

結婚を機に長野から東京に出た寺沢さんは調理師となり、長く東京大学の学生食堂で働きました。その後、長野に戻り須坂市に店を開きます。店名は東京時代に住んでいた「六本木」に因みました。19年前、夫に先立たれてからは1人で切り盛りしてきました。そして、開店から48年目の今年、思いも寄らぬ事態が起きました。

寺沢玲子さん:
「去年なんかいっぱいあったのに、(予約)ゼロになっちゃった。全然お金が入ってこないんじゃガス代も払えないし…」

新型コロナウイルスの影響でお花見シーズンの宴席はすべてキャンセル。観光や帰省で賑わうはずの大型連休も、客足は途絶えました。

寺沢玲子さん:
「収入もないし5月も予約が入らないから、もうやめようと思ったんですよ。ちょうど潮時だと思って」

すると、東京で働く孫娘から電話が入りました。

寺沢玲子さん:
「孫が聞きつけて、『おばあちゃん、やめないで、やめないで』って。『私インターネットでやるから、もうちょっと待って』って」

孫の梨菜さんは弁当のテイクアウトを提案。ツイッターで店の宣伝を始めたのです。

ツイッター:
「ツイッター始めました!山菜たっぷり78歳おばあちゃんの愛情こもったダイナミックなお弁当。なんと1000円で販売します!」

孫の梨菜さん(電話):
「祖母に聞いたら大変って聞いて。腰が重かったんですけど何とか説得して、私がテイクアウトの宣伝をSNSでしてくれるならということで」

旬の食材にこだわる寺沢さん。今は自分で採ってきたり他から仕入れたりした、およそ20種類もの山菜で弁当を作っています。

寺沢玲子さん:
「その時期のものを全部入れようと思うから、大盛りになっちゃう」

タケノコの煮つけ、コゴミとキノコの胡麻和え、そしてメインは天ぷら。

寺沢玲子さん:
「はい、出来上がりました」

おかずが「てんこ盛り」の山菜弁当は1000円。ボリュームもさることながら、梨菜さんのツイッターによる応援もあって評判上々です。ふたが閉まらない…。

電話:
「きょうはもう、いっぱいなんですよね…」

今では注文を受けきれない日もあるといいます。

客:
「お弁当をお願いしておいたものです」

昼近くになると、続々と注文した人が受け取りに来ました。

客:
「普通の幕の内とかは結構どこでもあるけど、山菜のこういうのは珍しいから、楽しみにしています」

寺沢玲子さん:
「いっぱい入ってますので」

客:
「すげえ、すげえ。すごい、ボリュームですね」

孫の梨菜さん(電話):
「うれしいことに、結構お客さんが来ていると聞いていて。いつ再開できるか分からないんですけど、サポートしていきたい」

一時は店を畳む事まで考えた寺沢さん。今は梨菜さんに感謝しつつ、再び店に客の笑顔が戻る日まで頑張りたいと話します。

寺沢玲子さん:
「孫が投稿、そして私が78歳のばあちゃんで、そのこと自体に感激したのか分からないですけど。金額は少しでもやりがいがあって、夜になれば皆さんが、おいしかったって電話くださるんです。毎月決まって来てくれる人の顔も見たいしさ、頑張ります、頑張るしかないよね」

(スタジオ)
山菜の仕入れ量は日によって異なるため、事前に問い合わせの上、予約をして欲しいという事です。

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