桂三輝、中川家は中川ケイさんという女性の方かと思った「恥ずかしかったー!」

コロナショックで大編成を強いられるテレビ業界で、さかんに流れるCMがある。ACジャパンだ。金髪の外国人が落語をする様子は、強いインパクトを与えている。カナダ・トロント出身で、50歳。師匠の桂文枝から、「桂三輝」と書いて「カツラ・サンシャイン」と呼ぶよう命名された。14年には、英語落語でワールドツアー13カ国を達成。先月に著書「桂三輝の英語落語」を上梓した。そんな、おもろい外国人に迫った。(interview 伊藤雅奈子)

――新型コロナの感染拡大防止のため、ツアーが中止になるなどして、生活が変わったのではないかと思いますが。

去年から6カ月続いていたブロードウェイのツアーが、今は休演という形になってますね。この仕事にかんしては私のスポンサー、ビジネス的な関係のみんなは日本にいますので、休演の今は日本に戻って、ビジネスを進めています。やらなければいけないことは、いっぱいあるんですよ。公演の再開を広めなければいけない、SNSで知名度を上げなければいけない。本も書きたいし、中国語を使って落語をしたいというのもありますから、この時間を使って中国語を学んで。コロナで落ち込んでいる人も多いと思いますけど、私の場合は、病気にかかってないから、まずは神様に感謝しますし、ビジネスも進めてますから、今の時期が終わってまた公演ができるのを、すごく楽しみにしています。

――昨年から流れているACジャパンのCM。三輝さんの存在をこれで知った方は多いと思いますが、リクションはありますか?

テレビだけじゃなくて、(日本では)駅にポスター、電車のなかでも見られるらしいので、それはすごくうれしい企画でしたよね。私個人的に、落語家としての見せ方としてもすごく良かったですし。日本中で見られてるんだろうなぁとは思うんですけど、今のこういう事情で、(住んでいる米国ニューヨークから帰国後も)人に会ってないので、リアクションはわかんないです。ニューヨークにいたときも1カ月、隔離状態だったんですね。日本の友だちから、「ニューヨークはどんな感じ?」って聞かれたんですけど、「家から出てないから、知らんがな」と(笑)。今もそう。窓から外を見てるだけなんで。

――そんななか、書店では今、「桂三輝の英語落語」が並んでいます。概要を教えていただけますか。

この企画は2016年、「イングリッシュジャーナル」という雑誌に3回連続で出たものがベースで、私がやった落語を録音されて、そこに先生がおもしろい言い回しや、英語の解説をされた。わかりやすくまとめて、再編集して、音声をダウンロードもできてという作業を、半年ぐらい前からしてたんですけど、私の努力はぜんぜんない。4年ぐらい前に、ちょこっと落語をやっただけなんで(笑)。ただ、私が読んでもすごく勉強になって、英語が母国語じゃない人は、こういう英語に興味があるんだなぁとか、疑問なんだなぁとか、すごく学びがありました。

――落語と英語を結ぶパイプ役になっていますが、その自覚はあるものなんでしょうか。

この10年間、基本的には落語と英語が結ばれていますね。弟子修業の3年間が終わってから、海外で落語をやりだしたんですけど、最初は日本の外務省のおかげで、各国の日本大使館、日本総領事館でやってたんです。ほぼボランティアで、プレゼンテーションで終わったけど、お客さんはめっちゃ笑ってたから、これはショービジネスになるはずだと思いましたね。そのベストステップとしてブロードウェイで実績を残せば、劇場に呼ばれることにつながりますから、6年ほど前から始めて、少しずつ近づいていきました。

――やや話は脱線しますが、親しい芸人さんなんているんですか。

お世話になってるのは、宮川大助・花子さん。あと、中川家。礼二さんとは街を歩いて、食べたりするレポートをしたことがあるんですけど、根本的におもしろい人なんで、私は笑ってばかり。怒られました、「おまえ、客とちゃうねんから」って。あと、師匠の修業をしてたころ、師匠のテレビ番組についていったら、ゲストが中川家さんと吉本(興業の)女性のマネージャーで。師匠から「中川家に挨拶せぇ」と言われたんすけど、私は「中川ケイ」さんという女性だと思ったので、マネージャーに「はじめまして……」と(笑)。恥ずかしかったー!

――では最後に。現在は「STAY HOME」が掲げられて、読書をする人も増えています。そんな方に本著は、どのように活用してもらいたいですか。

楽しみながら英語を学べるので一石二鳥。私の落語にも興味を持っていただけたら、YouTubeにも力を入れて、いろんなコンテンツがありますから、観てほしいですね。桂三輝という芸人を知って、お会いできる時期になったら、ぜひ公演にも来ていただきたい。以前は新宿末廣亭(東京都)で独演会をやってたんで、吉本と話し合いながら、それも復活させたいですね。

落語家・桂三輝YouTube

 

【タイトル】桂三輝の英語落語

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【プロフィール】 かつら・さんしゃいん

能と歌舞伎に興味を抱き、1999年に来⽇。2003年からアコーディオン漫談や英語落語の活動を始める。ʼ07年に⼤阪 芸術⼤学⼤学院芸術研究科に⼊学し、落語を研究。ʼ08年、桂三枝(現・六代桂⽂枝)に弟⼦⼊りし桂三輝と命名される。ʼ13年、在⽇本カナダ商⼯会議所⽂化⼤使に就任し、北⽶ツアーを開催。ʼ14年からワールドツアーを開始、13カ国を巡る。アフリカツアーも果たし、世界5⼤陸を制覇。ʼ15年、⽇本スロヴェニア親善⼤使に就任。ʼ19年には ニューヨークの歴史あるオフブロードウェイにある劇場、ニュー・ワールド・ステージにて初めてとなる落語のロングラン公演。さらに、英語、フランス語を使ったワールドツアーを開始し、これまで5⼤陸15カ国で講演を⾏い、⽇本の伝 統⽂化を世界に発信している。

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