中小企業社長が自力でやった「コロナ融資・給付金の資金調達」、まずは「社協」の緊急小口資金

編集プロダクションを経営する社長が実際に行った、コロナ関連の融資・給付金申請の数々。どこでつまづき、どこでとまどったのか? 複数ある支援策、理想的な申し込み順は? 「社協」の緊急小口資金、金融公庫の緊急融資、セーフティネット保証(4号)……。専門知識がなくても試行錯誤し、自力で申請まで行なった体験談。今回は、まず最初に行った「社協」の緊急小口資金についてお話しします。


専門知識がなくてもできる融資や申請

コロナ禍の影響で収入が激減している中小企業やフリーランスの方も多いと思います。旅行の本やweb記事、観光パンフレット制作が中心の編集プロダクションの弊社も例外ではありません。定期連載がなくなったり、取材が中止になったり、刊行が延期になったり。3月上旬から徐々に、新型コロナの影響が出てきました。

弊社は編集プロダクションなので、在庫も抱えず材料の仕入れもありません。人件費や固定費のみですが、それでも月に最低150万円以上は、ランニングコストがかかります。

この1カ月間、本業の業務も行いつつ、コロナ対策関連のさまざまな資金調達を行ってきました。経営者ではありますが、金融は門外漢の私が、専門家の手を借りず、〝ほぼ〟自力で行ってきた内容を、具体的に報告したいと思います。

いろんな失敗や勘違いもありますが包み隠さず。特記ない限り、弊社と同規模の法人(資本金5000万円以下、従業員50人以下)はもちろん、個人事業主でも応用できるはず。全国どこでも申し込めるものばかりです。

現在、相談窓口はどこも異常なほどの混雑ぶりで、税理士や銀行もキャパオーバー。でも、必要最低限の知識があれば、誰でも自力で、ここまでできます。

「実質無利息」「スピード重視」なら「緊急小口資金」がほぼ一択

コロナ対策の緊急融資について初めて知ったのは、3月28日(土)、顧問税理士の月例訪問の際でした。

「売上減の企業向けに、こんなものが出てますよ」と見せてもらったのが、金融公庫の特別貸付と、保証協会を通じたセーフティネット保証(4号)の簡単な資料でした。いずれも実質無利息で借りられる緊急融資。税理士の話だと、「3月頭から始まっていて、1週間で融資が決定した企業もあります」「普段よりは審査のハードルも下がっているようです」とのこと。

ただ、融資額は大きいものの、いずれも必要書類が多岐にわたります。用意するのに時間がかかりますし、申請後に融資が実行されるまで、1カ月はみておく必要がありそう。

売上は3月に続き4月も激減が見込まれていましたし、この時点ではまだ、中小企業に200万円、個人事業主に100万円という、持続化給付金の話も出ていませんでした。

そこで、「個人が対象の融資」でまず、自身の最低限の生活を守ることにしました。

「実質無利息」「金額よりもスピード重視」で調べたところ、社会福祉協議会の緊急小口資金、ほぼ一択。申請から交付まで1週間程度。支給額は20万円。返済は据置期間があり、1年後から24回払い。保証人もいりません。

提出書類もかなりシンプル。本人確認書類(免許証、保険証など)、住民票、印鑑、預金通帳、収入減を確認できる書類。住民票以外は、手元にあるものばかりでした。

緊急小口資金借用書

「新型コロナによる収入減」を証明する書類を揃える

4月8日、自宅現住所のある東京二十三区内の社会福祉協議会へ。特に予約もしていませんでしたが、すぐに職員が対応してくれました。必要書類や入金までの日数など詳細を確認。4月14日までに申し込めば、4月21日に入金される。給付日は月に1~2回、固定で決まっており、その約7~10日前までに申し込めば間に合う、とのこと。

ただし、申込には事前アポイントが必要で、直接窓口での受付のみ(郵送不可)。改めて4月14日に出直すことにし、借入申込書を事前に受け取って、その日は帰りました。(5/14現在、東京都の社協の場合は、郵送での申込みも可能に。借入申込書などの書類も、HPよりダウンロード可能になっています)

新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書

書類不備がない限り、この制度の適用基準は、「新型コロナによる収入減」のみといってもよいようです。ただし「○%減」といった明確な規定はありません。

私の場合、収入は法人代表者としての役員報酬のみです。すでに売上減対策のひとつとして、自身の4月以降の役員報酬を減額し、月額5万円以下にすることに決めていました。8割以上のダウンです。さらに、2020年1~3月と、4月の支払明細を用意しました。4月分はまだ支払われていないため、あくまで予定額です。

ちなみに役員報酬の変更は、決算後3カ月以内、毎年1回のみしか認められていません(簡単に節税対策ができてしまうので)。ただし、見込みでも「業績悪化」が確実であれば可能。弊社では「コロナ蔓延による業績悪化のため、役員報酬を改定」と記した、株主総会議事録も作成しました(A4用紙に1/2程度のシンプルなものです)。

手続き30分。1週間後に20万円が無事入金される

4月14日、申請手続きは30分弱で終了しました。書類はひと通り事前に記入済みだったので、社協の窓口で必要書類をチェックしてもらい、入金日や返済についての説明を受けるだけ。その後の審査については、特に結果報告はありません。入金日に入金されているかどうかが答えです。

緊急小口資金を申し込まれた方へ

4月21日、指定口座に無事入金されていました。最初の相談から13日、申請から1週間。このスピード感はおそらく、あらゆる融資、給付で最速だと思われます(高利のキャッシングやローンを除く)。「融資」なので返済の必要はありますが、無利息です。後日、結果的に不要になったとしても、損はまったくありません。

返済は12カ月先からで、毎月約8000円の24回払いです。口座引き落としが基本ですが、公共料金のように、コンビニや銀行で使用できる振込用紙方式も、応相談とのこと。

この制度には、さらにオプションがあります。状況が好転せず、当座の20万円だけでは生活が厳しいままの場合、さらに3カ月間、連帯保証人不要、無利息での融資が受けられます。必要書類はほぼ同一。金額は月額15万円(二人以上世帯は20万円)。あわせて4カ月間、いわば最低限の「ベーシックインカム」が得られるわけです。

手続きも書類もシンプル、入金までの時間もスピーディー。経営者、個人事業主、派遣や契約社員、正社員でもパートでも。誰でも申請できます。

あらゆる手続きで「想定外の待ち時間」が発生し、それが延びる一方の日々。コロナの収束は、果たしていつになるか不明。そんななか、額は決して大きくありませんが、安心を得られることは精神衛生上も大切です。まず「生活の保証」を得てから、次の策を練るのが賢明。そう思って動いて大正解でした。

今回、筆者が申し込んだ融資・給付金一覧(5/12(火)現在)


次回は、冒頭に挙げた金融公庫の緊急融資、続いて次々回、セーフティネット保証(4号)について、経験談をお伝えします。

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