「緊急事態」解除 39県の休業や自粛要請はどう変わる?

店頭販売する福岡市中央区の飲食店=14日午後5時33分

 新型コロナウイルス特別措置法に基づき全国を対象に出されていた緊急事態宣言が14日、39県で解除された。「コロナの時代の新たな日常を取り戻していく。きょうはその本格的なスタートの日だ」。安倍晋三首相が記者会見で語ったように、解除された地域がすぐに〝コロナ以前〟に戻るわけではなさそうだ。ではいったいどのような「日常」が可能になるのか。政府が示した方針と、受け止めた各県の対応をまとめた。(共同通信=松森好巨)

 政府が14日に改定した「基本的対処方針」は、39県では外出自粛や施設の使用制限などは基本的には解除されるとしつつ、感染拡大を予防する新しい生活様式が前提となるとも付け加えている。以下、対処方針や安倍首相が記者会見で示したおもなポイントを列挙する。

 ・解除後も最初は、人との接触をできる限り減らす努力を続行

 ・5月中は県をまたいだ移動は可能な限り控える

 ・テレワーク、時差通勤の取り組みの継続

 ・「三つの密」のある場への外出自粛

 ・夜の繁華街の接待を伴う飲食店やバー、カラオケ、ナイトクラブ、ライブハウスの出入りを控える

 ・大規模なイベントはリスク対応が整わなければ、中止または延期するよう主催者に求める

 最後のイベント開催について政府は、39県では従来の最大50人までという条件を緩和。屋内で100人以下、屋外は200人以下にすることで可能という目安を示した。また屋内開催時は収容定員の半分以下に絞ること、屋外の場合は人と人との距離を2メートル程度確保することも条件とした。ただ、ライブハウスなど集団感染が懸念される施設は、開催を慎重に検討するよう促すよう引き続き自治体に求めている。

新型コロナウイルス感染症の対策本部会合で緊急事態宣言の一部解除の決定を発表する安倍首相=14日午後、首相官邸

 ▽各県の対応は?

 政府が示した方針に、休業や営業自粛を飲食店などに要請する立場だった39県の知事が示した対応はばらつきがある。

 【九州地方】

 「特定警戒都道府県」の対象から外れた福岡県の小川洋知事は、ナイトクラブやカラオケなど一部業種を除き、15日午前0時で休業要請を原則解除と発表した。居酒屋や屋台を含む飲食店に対する営業時間短縮などの要請も取り下げる。

 鹿児島県の三反園訓知事は、接待を伴う飲食店やカラオケ店など4業種に出していた休業要請を15日から解除と発表した。いずれの業種も感染防止対策の徹底が条件という。

 【東海地方】

 愛知県の大村秀章知事は、ショッピングセンターやデパートなど大型商業施設の休業や飲食店への短縮営業の要請解除を15日に正式決定した。映画館や劇場、大学なども同じく休業要請を解除。接客を伴う飲食店やパチンコ店、スポーツジム、ホテルの宴会場に対しては31日までの休業要請を継続する。

 愛知のお隣三重県はどうか。鈴木英敬知事は、パチンコ店や接客を伴う飲食店を含め、商業施設などへの休業要請を15日から全面解除と明らかにしている。

 【北陸地方】

 石川県は、休業要請の一部を15日から解除。対象は床面積の合計が千平方メートル以下の学習塾や商業施設などで、飲食店など食事を提供する施設に対する時短営業への協力も、要請解除としている。

 富山県の石井隆一知事は、休業要請の大部分を15日に解除すると表明。感染防止策を取った上でパチンコ店の営業再開も認める。一方で、カラオケ店やナイトクラブなどの感染リスクが高いとされる施設への要請は解除しない。夜間の外出についても、引き続き自粛を求める。

 【東北地方】

 比較的感染者の数が少ない東北地方。秋田県は、バーやライブハウスなどに対する休業要請を15日から取りやめる。これで、県内の休業要請は全面解除となった。

緊急事態宣言の解除から一夜明けた名古屋・大須商店街=15日午前9時20分ごろ

 ▽残る8都道府県でも動き

 引き続き緊急事態宣言の対象となった地域でも新たな動きがあった。

 【近畿地方】

 大阪府は、百貨店などの商業施設、映画館、大学、学習塾などを対象に出されていた休業要請を、16日午前0時から部分的に解除すると決定した。府が示した感染防止マニュアルを順守することが条件となる。飲食店は営業時間の終了を2時間延長し、午前5時から午後10時まで、酒類提供は午後9時までとした。インターネットカフェやパチンコ店などは1000平方メートル以下の施設に限って要請を解除する。

 隣接する兵庫県も休業要請を16日午前0時から部分的に解除すると決定した。対象範囲は大阪府とほぼ同じ内容となる。

 【東京】

 全国最多の感染者が確認されている東京都。小池百合子知事は15日の対策本部会議で、感染者数は減少傾向としながらも「国が解除の基準を示したが、東京は5月31日まで現在の措置を続ける」と表明。今後、外出自粛や休業要請の解除や緩和に向けたロードマップを示した上で、6月以降に判断する。

 また、休業要請の緩和を段階的に分類し①博物館や美術館、図書館などの公共的施設②劇場などクラスター歴がなく「3密」が重なりにくい施設③高リスクの施設を除き全て再開―の順で実施する考えを示した。

新型コロナウイルス感染症対策本部会議で発言する東京都の小池百合子知事=15日午後、東京都庁

 政府は、東京や大阪など8都道府県について、21日をめどに専門家の評価を聞き、緊急事態宣言解除の是非を判断する。

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