「限定500台」トヨタ・カローラの特別仕様車、差額の分だけお得?

特別仕様車&限定車など、お買い得度を全面に打ち出したクルマが次々と登場しています。ベース車ではオプション扱いだったパーツをたっぷり装備したり、記念モデルならではの演出があったりと、欲しい人にとってはかなり魅力的です。一方で、注意するポイントはどこでしょうか?


普段は設定のない装備を入手

新型コロナ禍の影響で特別仕様車が登場しても、その注目度が下がってしまうのは致し方ありません。そのため、せっかく欲しいと思ったのにチャンスを逃した、などということがあるかもしれません。

では特別仕様車はどの程度おトクでしょうか。最近登場したばかりのトヨタの主力車種、カローラを参考に見てみましょう。

まず特別仕様車が用意されるのはセダンとワゴンのカローラツーリングで、特別仕様車「G-Xプラス」と「ハイブリッドG-Xプラス」というモデル名で設定されました。

簡単に内容を見てみましょう。ベース車両は「G-X/ハイブリッドG-X」です。これに駐車の際に役立つサポート機能であるインテリジェントクリアランスソナー、バックガイドモニターなどの安全装備に加え、UVカット機能付のプライバシーガラスを装備しています。

さらにインテリアにはメーター周りやステアリングホイールなどにシルバー塗装を施すなど、キラキラ感をプラスして上質に演出しています。ベースになったガソリン車のカローラG-Xが197万2,300円に対して、特別仕様のGXプラスは193万6,000円となり、その差は36,300円です。ちなみにハイブリッドのG-Xのベース車両は240万3,500円、ハイブリッドG-Xプラスは243万9,800円ですから、差額は当然かもしれませんが同じく36,300円となります。

メーターまわりやステアリングホイールなどにシルバー塗装を施すなど、上質感を演出しています

例えば安全装備のインテリジェントクリアランスソナーですが、装備単体では28,600円です。さらにバックガイドモニターは27,500円なので、これだけで56,100円となり、すでに特別仕様車は19,800円のおトク。さらにUVカット機能付きソフトプライバシーガラスは本来、上級クラスには標準ですが、エントリーモデルのG-XにはUVカット機能のみのガラスしか装備されないのです。

つまり本来は設定のない装備が搭載されるため具体的な数字では出せないのですが、お得感は確実にあります。ここにインテリアにも少し飾りっ気がプラスされるわけですから、当然カローラを狙っていた人たちにとってみれば、購入を考えるきっかけになる内容です。

さらにカローラツーリングには特別仕様車「2000リミテッド」を設定しました。こちらはさらに限定500台ということで売り切れも考えられます。何より魅力なのが、エンジンに最高出力170馬力の2.0Lエンジンを与えたことです。

人気のツーリングにはシリーズ初のエンジンを載せるなど限定車として魅力十分。このボディ色も特別設定色の「レッドマイカメタリック」です

これはカローラシリーズとして日本で初搭載となります。おまけにエクステリアは特別なブラック塗装の17インチアルミホイールや、シルバーメタリック塗装のルーフレールなどを特別装備したり、インテリアはシートヒーターが付いたりと、内容はかなりのスペシャルぶりで、価格は262万200円。1.8Lのガソリンエンジンを搭載するW×Bというモデルがあるのですが、これが236万5,000円ですから、その差は25万5,200円、限定車は高くなっています。

しかし、それでも限定車の装備内容を見るとその差を埋めてもあまりある内容となっているのです。何より、シリーズ初の2Lエンジンという強力な武器があります。よりスポーティで走りのいいカローラツーリングの購入を考えている人にとっては、台数限定というポイントも含め、魅力ある内容だと思います。

好きな人にとっては魅力的な限定車

カローラだけでなく、トヨタでは特別仕様車をどんどん用意してきています。

専用ボディカラーを採用した特別限定モデル

例えばスープラRZに最高出力387馬力のエンジン改良モデル、86にはGTブラックリミテッドなどを限定で設定。マツダではマツダ2に国内コンパクト初となる白レザーのインテリアを装備した特別仕様車、ダイハツ・ミラココアは地域限定特別主要車という、ちょっと面白い内容の限定車もあります。こうしてベース車両に魅力的な装備を与えて、割安感、格安感のある値付けで特別仕様車を投入することで市場も活性化されることは当然です。

もちろんこうした限定車の設定では輸入車も負けてはいません。アルファロメオ、ジープ、フィアットのFCAジャパンも特別仕様を多く投入することで知られています。人気ブランドのジープではチェロキーやコンパス、レネゲートに特別仕様車「ナイトイーグル」を設定したり、アルファロメオやフィアットのイタリアンブランドでも特別仕様限定車を投入しています。

そんな中でクルマ好きに注目されているのがアバルト595の限定車「ピスタ」。フィアット500(チンクエチェント)をベースに、フィアットの名門チューナー、アバルトが手掛けた595をベースにパワーアップを施し、充実した装備をトッピングしたのが特別仕様車「Pista(ピスタ)」です。こちらは240台の台数限定で発売されています。

限定車の証、Pistaのエンブレム

このピスタという名前はイタリア語で“レーストラック”の意味です。つまり、これまででも十分に刺激的だった595のパフォーマンスを、さらに磨き上げることによって、サーキットでも通用するほどの実力を与えたことを意味しているのです。エンジンはベース車両と比べて20PS向上し、最高出力は165馬力。1.4Lの直列4気筒エンジンとすれば145馬力でも十分にパワフルですが、それを一気に20馬力も向上させましたから、走りの刺激度の高さは容易に想像できるほど向上しています。

ブレーキキャリパーや専用の17インチホイールにもイエローのカラーが施されます

この出力アップには官能的なサウンドを奏でるハイパフォーマンスエキゾーストシステム「レコードモンツァ」を与え、合わせてシャシも強化。さらにリアサスペンションに有名なKONI製のFSDショックアブソーバーを装着するなど、クルマ好きからしたら、かなり魅力的な内容になっています。それに見た目まで限定車専用となっていますから、こちらもスペシャル感満載ということになるわけです。これで5速MTが価格328万円。ノーマル595は300万円ですから、パワーアップを考えただけでも十分にその価値があります。

自分にとってどんなお得があるの?

他に特別仕様車で目立つのはブランドではルノー・カングー、VWゴルフなどもありますから興味がある方はチェックしてみてください。

6.75エディションbyマリナーはこれまでベントレーのフラッグシップを務めてきたベントレー・ミュルザンヌの特別限定モデル

中にはベントレー・ミュルザンヌのように、スペシャル中のスペシャルの限定モデルがあります。ミュルザンヌはこの春に生産終了のモデルなのですが、フィナーレを飾るため「ミュルザンヌ 6.75 エディション by マリナー」という最終限定モデルを出しました。

これを仕上げるのはベントレーの個人のリクエストに応えながら特別仕様を仕上げるマリナーというセクションです。ハンドメイドにこだわるベントレーの、さらにパーソナルなオーダーに対応するマリナーが手がけるのですから、極上のベントレーということになります。なんとこの特別限定車を1台仕上げるために要する時間は400時間以上ということになっています。

400時間以上と言う時間を掛けながら丁寧に仕上げられていく

ベース車両は最上級モデルのミュルザンヌ・スピードです。価格は4,022万1,000円です。そして世界限定30台という限定車ですが、すべてが特別仕様ですから倍以上、あるいは1値億以上と言われても誰も不思議には感じないと思います。当然、こうしたモデルはあっという間になくなります。

専用カラーの21インチホイールや「EDITION 6.75」のエンブレム

ごく一部ですが、こうして特別仕様車や限定車を見てみると、ベース車両に魅力的な装備を割安に装備して、販売のてこ入れをするというのが基本にあります。つまり、伸び悩む販売台数を特別装備によって、手を出しやすくするわけです。アバルトや、さらにスペシャルなベントレーのように売り切れ必須、歴史的価値ありというものを除き、多くの場合が販売台数を伸ばすための仕様ということになります。中には言葉は悪いですが、在庫処理の一手段と言えるものもあるのです。そこで“この限定車の内容は本当似自分には必要か”と考える冷静さが必要となります。魅力的なコピーだけでなく、よく内容を吟味することが特別仕様車を検討するときに必要というわけです。

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