もうひと声

 「…県民の皆さんが県内の観光地を一定ご訪問いただくのは…」-大事なのはそこから先だ。そこでもうひと声っ-とネット中継の画面に叫びそうになった。中村法道知事の昨日の記者会見▲「県をまたぐ移動」の自粛呼び掛けが続く。「緊急事態宣言の解除」は“安全宣言”を意味するわけではない。自然な結論だろう。いっぺんに緩むわけにはいかない。だが、他県からの来訪が回復しなければ、観光県長崎の苦境はそのままだ。その危機感がいまひとつ伝わってこない▲例えばこんなアイデアは…。〈県民の皆さんが“お客”になってください〉。今こそ県産品の応援を、長崎の魅力をこの時期にまずは県民が再発見しよう、もちろん感染防止の用心は欠かさずに-と▲県民が県内のレジャースポットに出掛けたり、県内旅行を楽しんだり-そんな旗を強く振ってみるのだ。行政がそれを経済的に後押しする仕組みができればなおいい▲県境を皆が強く意識して暮らす事態・時代は、形を変えた地域間競争の始まりのように思う。他県の様子を横目で見ながら、なるべく横並びを崩さず…ではこの危機を乗り切れない▲月曜の本欄に似たことを書いたら共感のお電話を何件かいただいた。皆、中村さんの強いメッセージを待っている。エールも込めてもう一度。(智)

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