【岡山】日の出を拝む神秘の儀式!神道山の「日拝」

神道の神髄を体験できる岡山県の神道山とは?

日本に来たら、お寺や神社を見る機会が多くあると思います。お寺が仏教の施設なのに対し、神社は日本の伝統的宗教である神道の施設になります。

アニミズム的な宗教である神道は、山や海のような自然、祖先など、さまざまなものに神性を見出してきました。中でも重視されているのが、太陽です。

神道では、太陽の神様である「天照大神(あまてらすおおみかみ)」を最高神としています。さらに、富士山頂上付近から新年最初の日の出を見る「ご来光」が人気であるといった点にも、日本人に古くから息づく感性を感じ取れるかもしれません。

神道の伝統にのっとりながら、日の出の美しさを深く味わえる儀式「日拝(にっぱい)」を行っているのが、岡山県にある神道山(しんとうざん)です。

神道山の「日拝」とは?

JR岡山駅から車で20分ほどの距離にある神道山は、神道の1宗派である黒住(くろずみ)教の施設です。

黒住教は、教祖である黒住宗忠(くろずみ・むねただ)氏が19世紀初頭、死の淵にあった時、太陽を拝むことで宗教的な悟りを開いたという体験が基盤になっています。そのため、神道各派の中でも特に日の出を拝む儀式「日拝」を重視しています。

もっとも、黒住教は他宗教の信仰者や、信仰をもたない人とも積極的に交流しており、神道山でも、国籍や信仰に関係なくさまざまな人が「日拝」に参加しています。筆者も2019年9月、体験させてもらいました。

神道山の「日拝」体験レポート

「日拝」が始まるのは、日の出時刻の20分前です。気持ちを整えるため、儀式の10分ほど前に行くのがオススメです。

「日拝」の舞台は、神道山の頂上にあり、山と町が美しく見えます。筆者が到着した時には、他の参加者たちが、朝焼けの中で静かに座っていました。

日の出20分前になると、「日拝」が始まります。はじめに、黒住教の現教主である黒住宗道(むねみち)氏が前へ出て、「禊祓詞(みそぎはらえのことば)」」と「大祓詞(おおはらえのことば)」を唱えます。

私たちは、どれだけ強い決意を持っていても、日々の雑事や仕事に追われる中で、心に迷いや不安が生じることがあります。これらの祈りは、「心の乱れ・迷いを祓い、私たちが本来持っている美しい魂に気付かせてください」という意味だということです。

それから日の出までの間、瞑想を行います。黒住教では、太陽を口から飲み込み下腹に収めるようイメージするそうです。必ずしもこの形式で瞑想をする必要はないとのことですが、詳細に興味がある方は、その場にいるスタッフに尋ねてみてくださいね。

空が徐々に白んでくる中、鳥の声が響き、涼しい風が吹きわたりました。静けさの中で、緊張していた心もだんだんと落ち着いていきます。

いよいよ日の出です。山から太陽が出てくるのを知らせるように、和太鼓が「ドン、ドン」と何度も打ち鳴らされました。広大な空を紅く染めながら上ってくる太陽を見て、筆者は深い感動を覚えました。

山上に輝く朝日に向き合いながら、太陽の恵みに感謝する歌が歌われます。そして、太陽へ向かって何度かお辞儀し、最後は2礼・2拍手をします。儀式を深く味わいたい方は、ぜひ周りの人に合わせて行ってみてくださいね。

儀式は全体で30~40分ほどですが、命の根源に立ち返るような、忘れられない経験となるでしょう。

ユニークな建築の大教殿

「日拝」が終了したら、礼拝所近くの大教殿(だいきょうでん)にも立ち寄るとよいでしょう。

大教殿の建築は、伊勢神宮と同様、古代の米蔵をモチーフとしています。神道の根幹にあるのは、人間を生かしてくれる自然の恵みへの感謝。そして、自然の恵みを象徴的に表すのが主食である米であるため、このような建築様式となっているということです。

設計者の浦辺鎮太郎(うらべ・しずたろう)氏は、倉敷アイビースクエア倉敷国際ホテルなどを手掛けてきた、岡山県を代表する建築家です。

「日拝」終了後、大教殿では、神様へ供えものをする儀式が行われます。こちらは誰でも見学可能です。

大教殿の入り口近くには、岡山の伝統工芸である備前焼が飾られています。これは、大教殿の屋根の装飾に使われている部材の一部。

制作したのは、備前焼の著名作家、藤原建(ふじわら・けん)氏です。大教殿用の焼き物のため、2年間、ほかの仕事をすべて断るほど、強い思いを込めてつくったのだとか。

大教殿の入り口にはお賽銭箱があり、寄付することができます。金額は決まってないので、あなたの感謝の度合いに応じて自由に寄付してください。

備前焼や現代アートが楽しめる宝物館「まることセンター」

大教殿の近くには、宝物館「まることセンター」があります。

こちらには、前出の藤原建氏や、その叔父であり日本最高峰の職人に与えられる「人間国宝」の認定を受けた藤原啓(けい)氏などの備前焼、さらに現代アーティストの横尾忠則氏の作品などが収蔵されています。

記事末尾のメールアドレスから事前に申し込めば、見学可能です。

「当たり前でないこと」への感謝を

黒住教の8代目で、現当主・宗道さんの息子である黒住宗芳(むねよし)さんは、「神道の根幹にあるのは、自分を生かしてくれるすべてのものへの感謝です」と語ります。

私たちが健康で、無事に旅行できること。それは、私たちの努力による部分もあるでしょう。でも、まわりの人の助けや、日々食べるものを作り出してくれる自然など、さまざまなもののおかげでもあります。

「Thank you」に相応する日本語の「ありがとう」は、もともと「有難い=存在するのが難しい」という意味でした。「神道の祈りの1つの意味は、こうした”有難さ”に気付くことにあります」(宗芳さん)。

さらに、神道が重視するのは「けがれ(気枯れ)」を祓うこと。「けがれ」とは、「迷っている状態」「不健康な状態」です。

「祈りや、お日様に意識を向けることを通して、心を祓い清め、元気を取り戻し、自分らしい生き方を見出すこと。1人でも多くの人が、そうしたことをできる場所を提供するのが、私たちの使命だと考えています。神道山は信仰を問わず誰でも歓迎しています。日拝やそれ以外の施設見学にも、気軽にお越しください」(宗芳さん)。

神道山へのアクセスと宿泊

神道山の「日拝」は、日の出の時刻(※)と合わせて行われるため、夏は5時頃、冬は7時頃と早朝になります。特に夏は公共交通機関がまだ動いていないこともあります。

そのため、①神道山に宿泊する②JR岡山駅周辺のホテルに泊まり、ホテルスタッフを通して早朝タクシーを予約する、のどちらかの方法がオススメです。

神道山では、素泊まり3,000円程度で宿泊できます。事前相談で夕食と朝食も付けられます。申し込む際は、「gyouji-ka@kurozumikyo.com」にメールしましょう(英語可)。

JR岡山駅の周辺には、ホテルグランヴィアをはじめ多くホテルがあります。岡山駅から神道山まではおよそタクシーで20分、料金は2,000~3,000円程度となります。「日拝」の場所は、神道山の駐車場から徒歩10分ほどかかるので、その時間も考慮に入れて行動しましょう。

JR岡山駅は、東京から新幹線で3~4時間、大阪からは1時間弱ほどです。訪日観光客は、Japan Rail Passを使えばお得ですよ。

人気スポット、倉敷や吉備津神社も周遊しよう!

神道山は、岡山市の人気スポットの吉備津神社・吉備津彦神社の隣にあります。また、倉敷美観地区や大原美術館で知られる人気スポット、倉敷は、岡山市の隣となります。

神道山と併せて、岡山の魅力もぜひ堪能してくださいね!

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