コロナ明け、オンライン会議が常識となる?新しい取り組みへのルールづくりとは

今や世界中が頭を悩ませ、心を痛めている新型コロナウィルスの脅威。その影響は直接的な新型コロナウィルスへの罹患だけではなく、仕事へ、家庭へ、自分自身の時間へ、他者との関係性にまで大きな影響を及ぼしているでしょう。

一時的な変化もある一方で、ニューノーマル(新たな状態や常識。避けられない変化を意味する)になっていく変化も多くなるであろうことが世界中で注目されています。

今回のコラムではコミュニケーションの変化に着目し、ニューノーマルに適応するためのコミュニケーションのヒントになれば幸いです。


オンラインコミュニケーションのルールとは

コロナ禍において、職場でも、家庭でも、自分のプライベートの時間でも、当たり前だったことが一変しました。特にコミュニケーションは大きく変化しています。

誰かと直接会って対面でのコミュニケーションは少なくなり、ほぼ0となる1日を過ごす人もいるでしょう。職場で交わされていた簡単な挨拶や声かけ、ランチタイムや一息つく休憩タイムが恋しいと感じる方も多いと思います。

私の主な仕事は組織活性化や人財教育、メンタルヘルスケアなどを企業の経営者や人事の方々と共に考え、サービスを提供するコンサルティングと講師活動です。この仕事をしていると企業からリアルな今の悩みの声が届きます。

今とても多い困りごととしては、新型コロナウィルスによる在宅ワークの増加や出社人数を制限してシフトを変更するなど働き方のリズムや環境の変化に適応するための困りごとです。この変化は一時的である業種もあるかと思いますが、在宅ワークやフレックス制度、ITを用いた会議などは今後ニューノーマルになることが予測されます。

今感じている困りごとには、今後のニューノーマルに適応する組織づくりのヒントがたくさん隠されているはずです。困りごとを互いに発信し合うことで、お互いにとって良い解決策を考えていく力が必要になります。

自宅オフィスは条件が様々

ここではオンライン会議をテーマに考えてみましょう。オフィスとオフィスをつなぐオンライン会議と異なり、コロナ禍では各個人が自宅で行うオンライン会議が増えています。

自宅というオフィスは、周囲の環境音や同居している家族の存在(お子さんだけでなく、ペットも時には参加しているでしょう)などの影響も考慮する必要があります。自分だけの個室がある人もいればそうでない人もいますし、小さなお子さんの育児や介護をしながらの在宅ですと、長時間継続した会議が難しい方も多いでしょう。

この時必要なのはお互いの背景を考慮した時間や間隔などをはじめとした会議ルールの設定です。たとえば一人暮らしで整理整頓された静かな環境を整えられて、自分で時間をコントロール出来ている人と、休校中の子どもと赤ちゃんが同居していて、自分でなかなか時間コントロールが出来ていない人とでは会議に向けての準備時間や心構えが大きく異なります。

相手の状況に心を配り、互いに困りごとを共有すること、そしてお互いの納得できそうなルールを設定することが必要です。状況は変化し続けていますので、ルールも常にメンテナンスが必要となります。

これは何も一人暮らしの人がすべて譲るべきということではありません。たとえば、家族と同居している人の希望に合わせすぎて、一人暮らしの人が自分が属するどのグループでもみんなの都合に合わせてばかりでは、結局コントロールができなくなってしまったりすると、その人の負荷が高くなってしまいます。

また、ご家族との同居下でも自分のペースで周囲に気にせず家庭内で時間と場を見つけられる方もいるでしょう。逆に仕事として決められた時間に併せて家族との時間を調整するほうが楽なこともあるかもしれません。

つまりは、参加者次第であること。そして、それは誰かが一方的に決められる仕組みではないということです。職場の整えられた環境で、皆が同じ環境にいない今だからこそ、互いの背景に心を配り、互いが自身の困りごとを打ち明けられる関係性づくりが必要です。

困りごと・問題を伝える4ポイント

この関係性づくりでは、互いにきちんと言葉で発信することが大切になります。たとえば、休校中の子どもの食事づくりや遊び相手として追われる中での会議冒頭で「今、休校中の子どもが家にいるんです。」と伝えることで、相手が大変さを理解してくれると思ってしまうことがあるかもしれません。一方言われた側は「お子さんとの時間が増えてよかったですね」とだけ思ってしまうこともあります。ここで、発信した側の大変さは相手には伝わりません。

人は透明性錯覚という自分の心が相手に伝わっているであろう という錯覚が起こることがあります。自分の想いが相手に見透かされているだろうと考えてしまうことがあるのですが、もちろん人は他人の心をそのまま透明に透かしてみることはできません。

なので、想いが通じてるように感じるという錯覚なのです。だからこそ、言語化が必要です。文脈から察することや言葉と言葉の余白から読み取るということも文化としては大切ですが、時としてすれ違いを生むことがあります。

特に、上記のような新たなルールづくりをする時や新規のプロジェクトを遂行しながら常に変化に適応した仕組みづくりをする際、利用者や参加者が困りごと解決に参画することが必要です。

この時、なんとなく伝わっているだろうなというようなあいまいな言葉を使うのではなく、互いに困り事を明確に伝える枠組があると考えをまとめやすくなります。また、問題を発信する際のルールとしてしまえば、互いにルールの枠組みの中で愚痴でもなく他人を責めることでもないので、発信しやすくなりますし、周囲の協力をうながすのにもスムーズになります。

以下の手順が困りごとを共有する際に効果的なポイントですので、ぜひ試してみませんか。

1.困っていること、問題と思っている事象を書き出す

2.その事象に対して自分の考えをまとめる

3.そのことが仕事の能率やモチベーション、自身の生活にどう悪影響が出ているかを考える

4.1~3を整理したうえで、互いにとって良い解決策を提案する

(もしくは一緒に解決策を考えることを提案する)

ここでの大きなポイントは3と4です。今抱えている問題が仕事やその人の生活に悪影響を及ぼしているということまで伝わると、相手も共に改善したいという気持ちが起きるはずです。

1と2だけでは言葉足らずだと、単なる個人の勝手な主張ととらえられてしまうかもしれません。また4は自分の主張をするだけでなく、改善には互いの協力が必須です。そのために相手にとっても良い改善となるような解決策を模索することが相手の協力を促す大きなポイントとなります。

これはもちろんオンライン会議のルール作りだけに限って使えるポイントではありません。職場での困りごと、問題点を相手に発信する時、上司に相談する時、いつでも使えます。対面のコミュニケーションでももちろん使えます。ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

世界中で生じている大きな変化の中、来るニューノーマルに備える適応力の一つとして、互いの背景を尊重したコミュニケーションのヒントになっていれば嬉しく思います。

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